15 車が欲しいんです、人も一緒に 4
自分が、そして役人が使って走り回るのだ。
当然ランドクルーザーの姿は目につく。
それを見た者達が気にするのは当然。
一般人も、政府関係者も。
それを見た者達は自分も欲しいと思うようになる。
特に政府関係者は。
実際に使ってる者達の話を聞くからだ。
そして、整備状況なども伝わるからだ。
「よく動く」
まず、これが大きい。
走行性能の良さが伝わる。
それもは、速いとか加速が良いという事ではない。
「それも良いけど、どんな所も走っていける。
これがありがたい」
走破性や踏破性をまずあげる。
砂漠にのまれた国である。
そして貧しい国である。
道などまともに整備されてない。
あっても補修もされずに放置されている。
それ以外の大半の場所は道など無い。
砂にまみれた地面が続く。
だからこそ、野外を走り回れる車をノボルは求めた。
豪華は高級車などでは、荒れた道を走れるわけがないのだから。
もちろん、野外仕様のオフロード車と呼ばれる車はこの国にもある。
しかし、そのほとんどは古いもの。
走るは走るが、性能は決して高くはない。
壊れかけをだましだまし使ってるのもあって、乗り心地は最悪だ。
そこにいきなりランドクルーザーである。
新型である。
走行性能は今までの車より確実に良い。
しかもだ。
使っていくうちにもう一つの性能も明らかになっていく。
頑丈性。
そして、整備性だ。
「とにかく壊れない。
乱暴に使わないのは当然だけど、ちょっとやそっとの事で止まる事が無い」
過酷な環境で使う事になるが、それで車が止まる事は無い。
新車だから当然かもしれないが、それでもすぐに壊れる事もなく過酷な環境で走り続ける。
最高気温が50度になろうかという猛暑の中でだ。
砂嵐が吹き付ける中でだ。
砂漠のこの国では、この頑丈さが最高速度などよりも重要だ。
それでも毎日走らせるには手入れが必要だ。
使い終わったら整備が必要。
なのだが、それも大して必要がない。
吹きつける砂に対処するためのフィルター。
これらを綺麗にするくらい。
それ以外は特に問題なく動く。
整備いらずと言えるほど。
「これだけ楽だとこっちも助かる」
整備担当者達の言葉だ。
今までは壊れかけの車をなんとか使うために毎日に必死になっていた。
しかし、その必要がなくなった。
これは大きな変化になる。
何せ、毎日整備をするために時間をかけていた。
交換部品を探すために金も時間も使っていた。
古い物を大事に使う精神は大切だ。
だが、限界を迎え、とっくに超えたものを長持ちさせ続けるには多大な労力がかかる。
下手すれば、年間の整備費用で新車を買えるほどに。
この手間がほとんどなくなった。
せいぜい砂を吸い込まないようにするフィルターの予備を多めに用意しておけばいいくらい。
それだって難しい事は無い。
ランドクルーザーはこの世界でも世界的なベストセラー。
大量の交換部品が用意されている。
注文すれば届けてくれる。
当たり前かもしれない。
だが、砂漠の国にとっては違う。
今まではもう存在しない部品を新たに作ってもらうところから始めていた。
なのでどうしても値段が高くなる。
ネジ1つだけでもだ。
これが全て無くなった。
注文すれば確実に届く。
海外からの取り寄せになるので、どうしても時間はかかるが。
それだって、今までの部品生産からとは比べものにならない早さになる。
そもそも、取り寄せるくらいなら、先に消耗品はそろえておけばよい。
在庫として整備場に置いておけばよい。
事前に注文をしておけば、たいていの問題は解決できる。
おかげでランドクルーザーは毎日走らせる事が出来る。
そして、毎日使うから重要になる事もある。
乗り心地だ。
「とにかく静かなんだ。
エンジン音がほとんどしない」
「走っていても揺れたりしない。
大きな段差はしょうがないけど、普通に走っていて振動が伝わってくる事はほとんどない」
「クーラーも効いてくれるから助かる。
暑さなんて全然気にならない、車に入ってればな」
実際使ってる者達がもっとも気に入ってるのはここだ。
騒音がしない。
座り心地が良い。
冷房が効いている。
言ってしまえばこれだけだ。
だが、これらが中にいる者達の体力を保ってくれる。
乗り心地というのは、連続して使っていられる時間だ。
これが悪いと1時間ともたない。
乗ってるだけで疲れてしまう。
車を降りた時にすぐに動けないほどに。
今までの古い車ではこれらが最悪だった。
確かに1時間で何十キロも移動できる。
だが、目的地に着く前に体は疲れで動かなくなってる。
エンジンのうるささで耳をやられ。
地面から伝わる振動で体が突き上げられ。
熱射による暑さで体力が奪われる。
移動してる最中も休みが必要になる。
目的地に到着した時点で、もう動けなくなってしまう。
それが今までのあたり間だった。
だが、これが無くなる。
何時間走っても疲れない。
多少は体がこわばるが、今までのように疲労で動けなくなる事はない。
休憩もなく走り続け、目的地に到着してもすぐに動ける。
この乗り心地という性能が特に注目を集めた。
ならば是非我々にもと。
要望があちこちから上がり始める。
これについてはすぐにノボルも動いた。
「父上!
みんなに車を与えたいのです!」
「うん、いいよ」
親馬鹿の独裁者は何も考える事無く承諾した。
かくて予算の範囲で少しずつランドクルーザーが増える事になる。
砂漠の貧乏国の公用車として。
これらが役所や警察、果ては軍にまで使われるようになっていく。
これがさらなる好循環を生んでいった。




