14 車が欲しいんです、人も一緒に 3
車と人が手に入った事で、ノボルの行動範囲は一気に広がった。
ランドクルーザーで国内各地を巡り、足りないところは役人を派遣する。
更に国内で聞きたいことは各省庁から引き抜いた官僚に聞く。
おかげでノボルのもとに集まる情報は一気に増えた。
「どうしたもんかな」
あちこち出向いて、話を聞いて。
それで出てきたのがこの声になる。
分かってはいたが終わっていた、色々と。
まず国土のほぼ全てが砂漠に飲み込まれている。
海岸の砂浜との境目がない。
いつ砂に飲み込まれるのか心配してる段階ではない。
とっくに砂に国土が飲み込まれている。
おまけに資源もないときた。
探せばあるのだろうが、見つける技術がない。
調査を頼もうにも、頼むだけの金がない。
あるのは海だけ。
ここで魚と塩をとって生計を立てている。
さいわい、長大な湾となってる海岸は結構豊かな漁場になってくれている。
海の幸には困らない。
この海の幸を日干しにしたり、塩漬けにしたりして内陸部の国に売りさばく。
魚で作った醤油というのもある。
これが貴重な外貨獲得手段となっている。
そんなわけで、食い物にはありつける。
しかし、それ以上は難しい。
あらためて知った国の内情は実に厳しいものがあった。
「これで国民から税金奪ってんだからなあ……」
当然ながら民衆は独裁者に憤りを抱いてる。
だからテロリストが横行する。
表の経済とは別に裏の経済を作って、税金などに奪われないようにする。
この裏の経済を握る犯罪組織が成長するというもの。
だが、まだこのあたりはマシなほうだ。
なんだかんだで国に残ってるのだから。
やる気のある奴はこんな国を見限って外国に出向いてしまう。
そして二度と帰ってこない。
それを悪いとは言えない。
ノボルだって同じ立場だったら逃げ出す。
無理してこの国を良くしようなどと頑張るのもバカバカしい。
自分が生き残れる場所に逃げるのが一番だ。
とはいえ、そうも言ってられない。
ノボルは独裁者の息子である。
この国の外に逃げ出すのも難しい。
受け入れる国があるのかどうかあやしい。
仮に逃げ出せたとしても、今度は生活費の心配が出てくる。
逃亡先での生活も、本国からの仕送りがなければ続けられない。
逃げ出した先が生活の保障をしてくれるわけではないのだから。
結局、自分の国をどうにかするしかないのだ。
財布に出来るのは自分の国の人間だけ。
ここから収奪するしかない。
だから国を立て直さねばならない。
魚と塩だけの国をどうにかする必要がある。
その方法が分からないから困ってしまうけど。
しかし、やらねばノボルの生活が成り立たない。
「絶対にクーラーは手放さない」
赤道直下といってよい場所の国。
暑さはすさまじい。
さすが砂漠の国といったところ。
そんな国で冷房を年がら年中使える特権を失うわけにはいかない。
その為にも、逃げ出す人間を無くしていく。
ここにいたいと思わせる。
監視体制を強化するのも手段の一つだが、それだけでは限界がある。
ここに残りたいと思うだけの何かが必要だ。
「無理だよなあ」
出来たら苦労はしない。
だが、やるしかない。
国内を走り回って状況を確かめ、何か出来ないか考える。
もちろんアイデアなんぞ出るわけがない。
思いつく事はいくつかあるが。
上手くいくかどうかは分からない。
それでもとにかく国中をランドクルーザーで走り回った。
それを見ていた者達が、ノボルが無理して買ってもらった車に注目する。
あれは何なのだと。




