10 銃が駄目なら、もっと強い散弾銃を持たせればいいじゃない
煙幕と催涙ガス。
これらが使えるようになって、逮捕は楽になった。
だが、これが相手にするのは、あくまで人。
相手が壁に隠れていたり、車で突進してきたらどうにもならない。
そこで散弾銃である。
拳銃より威力が大きいこの銃を装備して、事にあたる。
これなら使う弾丸によっては壁も車も打ち抜ける。
使い方の訓練が必要になるが、これは仕方ない。
拳銃ともども、月一回は訓練する時間をもうけ、練習させるしかない。
大きな利点は散弾銃が持つ破壊力だけではない。
たしかに散弾銃は、名前の通りに散弾をばらまくものだ。
細かな粒を広範囲に飛ばすのが主な目的である。
しかし、それだけがこの銃の強みではない。
散弾銃の利点。
それは、様々な種類の弾丸を使えることにある。
その一つが、スラッグ弾。
日本語だと一粒弾や単弾と呼ばれるものだ。
文字通り複数の粒ではなく通常の銃弾のように一つの弾頭となっている。
大口径の散弾銃から放たれる大きな弾丸は、近距離ならライフル弾の威力を上回る。
もう一つが、ゴム弾。
当たると十字型に展開し、貫通することなく衝撃を相手に与えるもの。
少なくとも銃弾の貫通による殺傷はなく、殺さずに捕まえたい場合には効果がある。
もっとも、それでも威力が大きいから、当たれば骨折や内臓破裂の可能性もある。
だが、銃弾の貫通よりはマシだ。
これらを使う事で、車で突進してくる者にも対処できる。
逃げる犯人の背中にゴム弾をぶつけて止める事もできる。
拳銃を使うよりは生け捕りに出来る確率があがる。
とはいえ持ち歩くわけにもいかない。
なのでパトカーに装備しておいて、状況次第で持ち出す事になる。
交番や警察署にも当然配備しておく。
これで物理的な破壊力を更に上げておく。
これらが配備されていくごとに、国内の犯罪は目に見えて減っていった。
何かをしても即座に鎮圧させられるからだ。
そして問題を起こした者は二度と生きて出てくる事は無い。
全員テロリスト認定されるのだから。
中には本物のテロリストもいる。
面白い事に、生け捕りにする可能性が高まった事で、独裁国家の寿命が延びていく。
今までは犯罪者やテロリストを殺してしまい、情報を吐き出させる事も出来なかった。
だが、ノボルが提案をしてからは違う。
潜伏しているテロリストの拠点、中心人物などに近づく事が出来るようになった。
これらへの協力者達にもだ。
これらを一網打尽にする事で、独裁国家の内部崩壊になる原因を取り除くことが出来た。
人を殺さない武器が、独裁体制の破壊を目指す者達を根絶やしにしていくのだ。
犯罪組織も同じだ。
捕まえた犯罪者から裏にいる者達を探り、これらの拠点を襲撃する。
主要人物を生け捕りにして情報を吐かせる。
こうして犯罪組織も次々に崩壊していった。
残念ながら中枢の破壊にまでは至らない。
そんなテロリストも犯罪組織も、末端と中枢の間には大きな壁がある。
あるいは、大きな断絶が。
どうしてもそれ以上は探れないという部分が出てくる。
だが、問題はなかった。
組織の末端を潰せば、中枢が残っていても動きようがない。
目や耳となり、手足となる人がいないのだから。
これらが無くなる事でテロリストも犯罪組織も身動きがとれなくなった。
また、得られた情報をもとに資金源を警察が潰していく。
全ては無理だが、活動資金を減らされて、組織としての活動が縮小する。
それだけでも今は十分だった。
直接的な危険が減って、独裁国家をゆるがす不穏は減った。
それでノボルは満足だった。
自分の贅沢な暮らしが守れるのだから。
テロリストも犯罪組織も、独裁者に入る実入りを減らす。
つまり、ノボルの取り分を減らす。
そんな事断じて許す事は出来なかった。
民主主義の為にテロリストを。
人権のために犯罪組織を。
これら野放しにするわけにはいかない。
放置していたら余計に民衆が苦しむだけだ。
民主主義とは暴君を人の数だけ作る事。
そんな暴君と付き合う気は毛頭無い。
衆愚政治に陥るだけだ。
人権もいらない。
人権は悪人を救うもの。
悪人を弱者とするからだろう。
だから弱者救済は悪人救済になる
そんな馬鹿な事してられない。
「まだ独裁者だけの方がいいだろ」
独裁者に虐げられ、テロリストに破壊され殺され、犯罪者に奪われる。
これが民衆だ。
ならば、問題のうち二つをとののぞき、一つにしぼった方がましである。
国民はこれから独裁者にだけ労力も活力も吸い取られるだけで済むのだから。
悲しいことに、これが独裁国家の活力を復活させていく事にもあった。
国民を蝕む三つの問題が一つになった事で。




