証明4:倫理を生かして命を燃やせ!
昨日のウエストワールドは、控えめに言っても……完全に狂っていた。
事の始まりは、キャピタルシティの広場に現れた一人のテロリストだった。その男は大量の爆発物を衣服に巻きつけ、何らかの奇声を叫びながら広場を占拠した。
まあ、それだけなら、ただのありふれた凶悪事件である。
だが、問題はただ一つ、そのテロリストが「車椅子に乗っていた」ことだった。
通報を受けた倫理局の監査官たちは、現場を取り囲んだものの、誰一人として武器を抜こうとはしなかった。
いや……抜けなかったのだ。
彼らを縛っていたのは「いかなる理由があろうとも、障害を持つ市民への物理的制裁は、倫理的観点から最後の手段としなければならない」……などという、なんとも馬鹿げた規則だった。
結果として、監査官たちはメガホンを握りしめ、爆撃の準備を進めるテロリストに向かって「どうかおやめください」「倫理的な対話をしましょう」……などと、口頭注意を繰り返すことしかできなかったのだ。
現場に居合わせたシエルは、爆風から市民を庇って腕に深い怪我を負い、マキナは飛んできた瓦礫を間一髪で避けて舌打ちをした。
この悲惨な事態の報告を受け、倫理局の最上階で冷たい笑みを浮かべていたのは、代表のロジク・キルゼオールだった。彼は一切の被害を気にする素振りも見せず、「監査官たちは規則を完璧に遵守した。これは倫理の勝利である」と高らかに宣言したのだ。
そして、事態を収拾したのは結局のところ、ウエストワールド警察だった。駆けつけた武装警官たちは、倫理局の制止を振り切り、問答無用で車椅子のテロリストを取り押さえ、力ずくで武装を解除した。被害の拡大を防いだ見事な制圧劇だった。
だが。
今朝の新聞の朝刊一面を飾った見出しは、信じがたいものだった。
『警察の横暴!障害者の自由を奪う暴力行為!』
『倫理局、最後まで対話を諦めず。その姿勢に市民から称賛の声』
警察署長官室。
広々としたデスクの上で、警察代表代行のルキア・ブラックは、その新聞を丸めて壁に投げつけた。幼く美しい少女の顔立ちが、怒りと呆れで醜く歪んでいる。
「……この街の市民の脳髄は、全員……泥で出来ているのか?」
ルキアの小さな呟きは、誰もいない長官室に虚しく吸い込まれていった。
同じ頃。ボーン探偵事務所の朝は、香ばしいトーストの匂いと、穏やかな朝日に包まれていた。
「おはようございます、アレックさん!見てください、羽の傷、もうほとんど塞がりましたよ!」
キッチンから顔を出したフィレモ・キルゼオールが、背中の白い翼をパタパタと揺らして笑った。まだ少しぎこちない動きだが、痛々しい包帯はすっかり外れている。
「おいおい、あんまり急に動かして、また羽を散らかすなよ。掃除するのは俺なんだからな」
アレック・ボーンは、古びたソファに深く腰掛け、淹れたてのブラックコーヒーを啜った。昨日の狂ったニュースなどどこ吹く風といった様子で、彼は愛用のタバコ「サイレント・スモーク」の十ミリを唇に咥え、カチリとライターで火をつけた。深く吸い込み、紫煙を天井に向けてゆっくりと吐き出す。静かで、完璧な朝だった。
そこへ、すりガラスのドアがノックもなしに開いた。
軍服風のジャケットに白衣を羽織った小さな人影が、とことこ、とことことことこと、短い歩幅で事務所に入ってくる。彼女はアレックとフィレモを一瞥すると、一切の躊躇なく、来客用のパイプ椅子によいしょと腰を下ろした。
ルキア・ブラックだ。
探偵事務所の中に、奇妙な沈黙が落ちた。
アレックはタバコを咥えたまま目を丸くし、フィレモはトーストを持ったまま固まっている。
長い、長い沈黙の後。
ルキアが、まるで自分の部屋にいるかのように堂々とした態度で口を開いた。
「……コーヒーをくれ。ミルクは多めだ」
フィレモが我に返り、慌てて声を上げる。
「ええっ!?……いやいや、ちょっと……警察の偉い人がいったいなんで朝からウチでくつろいでるんですか!それに、注文の仕方が、なんか偉そうですよ!」
「私は客だぞ。客の要望に応えるのが探偵の倫理だろう。それに、私は今、極度の糖分不足とストレスで倒れる寸前なのだ。早くその甘い液体で私の脳細胞を回復させてくれたまえ」
ルキアがむすっとした顔で言い返すと、フィレモは「もう、仕方のない子ですね」とでも言いたげな、完全に年下の子供を扱うような優しい笑顔になった。
「はいはい、わかりましたよ。ルキアちゃんは甘えん坊さんですね。特別にお砂糖三本入れてあげますから、ちょっと待っててくださいね」
「ぜんぜん甘えん坊ではない!これは医学的な要求だ!……砂糖は四本にしてくれ」
頬を膨らませて抗議するルキアと、クスクス笑いながらキッチンへ向かうフィレモ。その微笑ましくも奇妙な光景を眺めていたアレックは、灰皿にタバコを押し付けると、いよいよ口を開いた。
「で、一体何の用だ、代行様。昨日の件で慰めてほしいなら、他を当たってくれ。俺はあの記事を見て、三回は腹を抱えて笑った後だからな」
アレックの言葉に、ルキアの表情がスッと引き締まった。彼は周囲を警戒するように一度ドアの方を振り返り、それからアレックに向き直ると、その大きな瞳にうっすらと涙を浮かべた。
「……助けてくれ、アレック。君にしか頼めないんだ」
その声は、震えていた。警察代表代行としての威厳はそこにはなく、ただの一人の少女としての切実な響きがあった。
「警察が極秘裏に開発していた実験体が、昨夜、研究施設から逃げ出した。名前は『ガルド』。……倫理局の連中が知れば、間違いなく『非倫理的な人体実験』として警察組織そのものを解体しにかかるだろう」
「おいおい……人体実験だと?警察はいつからマッドサイエンティストの集まりになったんだ?」
アレックが顔を顰めると、ルキアは俯き、両手を強く握りしめた。
「違う!決して、非道な目的で作ったわけではないんだ!だが、世論はそうは受け取らない。あの朝刊を見ただろう?今の市民は綺麗事の奴隷だ。もし、ガルドの存在が公になれば、警察は……いよいよ終わりだ。頼む、アレック。ガルドを……見つけ出してくれ」
ルキアの懇願に、アレックは深くため息をついた。面倒なことこの上ない。だが、目の前で今にも泣き出しそうな天才少女を見捨てるほど、アレックは冷酷な男ではなかった。
「……依頼とあらば、仕方がないな。まあ、引き受けてやる」
かくして、アレックとフィレモ、そしてなぜか押し掛けてきたルキアの三人は、逃亡した実験体ガルドを捜索するため、ウエストワールドの街へと足を踏み入れた。
最初の捜索地点は、街の最下層に位置するスラム街だった。
太陽の光すら届かない薄暗い路地には、年中無休で雨漏りのような水滴が落ち続け、錆びついたトタンとネオン管の毒々しい光が、行き交う人々の顔を青白く照らしている。違法な薬物に手を染める浮浪者たちや、鋭い目つきの売人たちがひしめくこの場所は、逃亡者が身を隠すには最適の場所だ。
アレックは馴染みの情報屋たちに声をかけたが、誰も「大柄な実験体」の姿は見ていないという。
次に三人が向かったのは、キャピタルシティ駅前だった。
スラム街とは打って変わって、ここはウエストワールドの「停滞した平和」を象徴する場所だ。天高くそびえるガラス張りの高層ビル群、空中に投影される巨大なホログラム広告、仕立ての良いスーツを着て足早に歩くエリートたち。どこまでも清潔で、どこまでも無機質なこの空間のどこかに、異形の逃亡者が紛れ込んでいるかもしれない。
しかし、監視カメラの死角をいくら探しても、ガルドの痕跡は見当たらなかった。
最後に彼らが戻ってきたのは、ボーン探偵事務所の周辺に広がるダウンタウンだった。
古き良きレンガ造りの建物が並び、路地裏のバーからはジャズの生演奏が漏れ聞こえてくる。スラムほどの危険はなく、キャピタルシティほどの冷たさもない。人々の生活の息遣いと、少しばかりの埃っぽさが混ざり合う、アレックにとって一番落ち着く場所だ。
「……駄目だ。全く手がかりがない」
西日が街を赤く染め始めた頃、アレックはダウンタウンの路地裏で立ち止まり、肩をすくめた。
「あー、もう歩けません!アレックさん、お腹ペコペコですよぉ」
フィレモがその場にしゃがみ込み、お腹をさすって抗議する。ルキアもまた、慣れないフィールドワークで疲労困憊の様子だった。
「仕方ない。腹が減っては捜査もできないからな。この辺りに、とびきりカロリーが高くて美味いラーメン屋があるんだ。そこで腹ごしらえにしよう」
アレックが案内したのは、「飛竜亭」という名の、油で暖簾が黒ずんだ小さなラーメン屋だった。店内に一歩足を踏み入れると、豚骨の匂いとニンニクの香りが鼻腔をぶち抜く。
「おやじ、ラーメン三つ。野菜マシマシのアブラ多めで頼む。こっちの2人には小盛りで」
カウンターに座るなり、アレックが慣れた様子で注文する。しばらくして運ばれてきたのは、濃厚な豚骨スープの海に極太の麺が沈み、その上に茹で野菜と分厚いチャーシューが山のように積まれた、まさに暴力的な一杯だった。
「うわぁ……いやいや、すごいボリュームですね!でも、すっごく美味しそう!」
フィレモが目を輝かせて箸を割る。ルキアは戸惑いながらも、スープを一口飲み、その濃厚な旨味に目を見開いた。歩き疲れた体に、強烈な塩分と脂が染み渡っていく。それは、洗練された高級料理には決して出せない、魂を直接揺さぶるような生命の味だった。
「最高だろう?ここのラーメンは、ウエストワールドで一番だ」
アレックがラーメンを啜りながら上機嫌で言うと、隣の席に座っていた大柄な男が、ずずずっと麺を啜る手を止めて顔を向けた。
「全くだ。ここのヴェリタス系ラーメンを食わずして、人生を語る資格はねえよな、あんた」
ボロボロのコートを着込んだその男は、豪快に笑いながらアレックに同意した。
「わかってるじゃないか、兄弟。この背脂、この刻みニンニク。これが絶妙なバランスで成り立ってるんだ。まさに芸術だよな」
「違いねえ。俺なんて、これ一杯のために生きてるようなもんだ。……あんた、いい奴だな。俺はガルドだ。あんたは?」
「俺はアレック。しがない探偵さ。よろしくな、ガル……?ガル……」
アレックは、口の周りをティッシュで拭いながら、男の顔を見つめた。
傷だらけの屈強な肉体。首筋から覗く、明らかに生身ではない金属のジョイント部分。そして、今彼が自ら名乗ったその名前。
「ああーっ!……ガルドじゃあないか!」
「ん?ああ、そうだが」
その瞬間、隣でラーメンを啜っていたフィレモが激しく咳き込み、ルキアは箸を落として絶句した。
「お前……警察から逃げ出した実験体ってえのは、お前だな!」
アレックが椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がると、ガルドは不思議そうに首を傾げた。
「……なんだあ、ケンカか?ここは俺の大事な店だ。店の中では暴れられねえ。表へ出な」
ガルドはどんぶりを空にして立ち上がると、のっしのっしと店の外へ歩き出した。アレックも慌ててその後を追う。
店の前の裏路地に出た瞬間、空気が張り詰めた。
ガルドの巨体が、圧倒的な速度でアレックに迫る。丸太のような腕から繰り出される拳を、アレックは間一髪で躱し、そのまま懐に潜り込んで強烈なアッパーを顎に叩き込んだ。
だが、アレックの拳が金属の装甲に弾かれるような鈍い音を立て、ガルドは微動だにしなかった。
「いいパンチだ。だが、俺の体はちょいと、特別製でね」
ガルドの反撃の蹴りが、アレックの腹部を捉える。アレックは数メートル吹き飛ばされ、路地裏のゴミ箱に激突した。
「痛ってえ……!なるほどねえ、ただの力自慢のサイボーグってわけじゃなさそうだ」
アレックは口の中を切った血を吐き捨て、トレンチコートの裏から愛用の大型拳銃を抜いた。ガルドが再び突進してくる。アレックはその動きを見切り、ガルドではなく、ガルドの頭上にある古いビルの外壁の結合部に向かって引き金を引いた。
銃声と共に、劣化した結合部が弾け飛び、巨大な鉄骨がガルドの頭上へと落下していく。
「もらったぜ!」
アレックが勝利を確信した、その時だった。
ガルドの視線の先、路地の入り口付近で、一人の小さな少年が落としたボールを拾おうとしゃがみ込んでいた。落下する鉄骨の軌道上だ。
「しまった……!」
アレックの顔から血の気が引く。間に合わない。
だが、次の瞬間、凄まじい轟音が裏路地に響き渡った。
もうもうと立ち込める土煙が晴れた後、アレックが見たのは、信じられない光景だった。
ガルドが、自らの巨大な背中で、落下してきた鉄骨を完璧に受け止めていたのだ。彼の装甲が軋む音が響く。しかし、彼の下に庇われた少年は、傷一つ負っていなかった。
「……坊うず。怪我はないか? 早く、安全な場所へ行きな」
ガルドが優しく微笑みかけると、少年はコクリと頷き、走って逃げていった。
ガルドは鉄骨を脇に投げ捨て、痛む肩を押さえながらアレックに向き直った。
アレックは銃を下ろし、呆然とガルドを見つめていた。
「お前……実験体じゃ……」
「アレック!」
後ろから追いかけてきたルキアが、息を切らしながらアレックの背中を叩いた。
「君は本当に早とちりだな!私がいつ、ガルドが『敵』だと言った!?」
ルキアは呆れ果てたように叫ぶと、ガルドの前に歩み寄り、深く頭を下げた。
「ガルド……研究施設から逃げ出して、こんなところにいたのか。探したぞ」
「ああ、代行のお嬢ちゃんか。すまねえな、勝手に抜け出して。どうしても、あの親父のラーメンが食いたかったんだよ」
ガルドは困ったように頭を掻いた。
状況が飲み込めず混乱するアレックとフィレモに向かって、ルキアが静かに語り始めた。
「……ガルドは、なにも、警察が非道な実験で作った化け物ではない。彼は元々、ウエストワールドの一般市民だった。三年前、第三小学校で大規模な火災が起きたのを、覚えているか?」
「……知っています。あの事件、校長先生が真っ先に逃げ出して、しかも『施設の損壊を防ぐために、倫理局の許可が下りるまで消火剤を使ってはならない』……なんていう狂った規則のせいで、消防が最後まで動けなかった事件ですよね」
フィレモが悲痛な顔で呟く。
「その通りだ。あの時、逃げ遅れた五人の児童を助けるため、炎の中にただ一人飛び込んでいった男がいた。それが、ここにいるガルドだ」
ルキアの言葉に、アレックは息を呑んだ。
「ガルドは、自分の命と引き換えに子供たちを救い出し……全身に重度の火傷を負って、一度死んだんだ。だが、当時の警察上層部と一部の医者たちは、彼を見捨てることはとてもできなかった。倫理局が禁じている『死者の蘇生術』と『魔法による延命措置』を極秘裏に施し、ようやく彼を蘇らせたのだ。それが、彼が『実験体』と呼ばれている理由だ」
「じゃあ……こいつは、ただの英雄じゃないか」
アレックの言葉に、ガルドは寂しそうに笑った。
「英雄なんかじゃねえよ。俺は……あの火事で、たった一人だけ、助けられなかった子供がいたんだ」
ガルドの瞳から、金属の頬を伝って一筋の涙がこぼれ落ちた。
「あの時、崩れ落ちる天井の下敷きになった男の子がいた。俺は手を伸ばしたけど、届かなかった。……その子の実家が、この『飛竜亭』なんだ。親父さんは、奥さんを早くに亡くして、男手一つでその子を育ててた。俺は、あの親父さんから全てを奪っちまったんだ」
ガルドが逃げ出した理由。それは、最終調整が終わって完全に自由を失う前に、ただ一度だけ、自分が救えなかった子供の父親が作るラーメンを食べ、心の中で謝罪するためだったのだ。
その時、路地裏の裏口のドアが開いた。
飛竜亭の店主である初老の男が、不思議そうに顔を出した。
「なんだい、騒々しい。……ん?あんた、さっきの食いっぷりのいいお客さんじゃないか」
ガルドは店主の顔を見るなり、その場に崩れ落ちるように土下座をした。アスファルトに額を擦りつけ、嗚咽を漏らす。
「親父さん……!すまなかった……!俺が、俺がもっと早く助けに行っていれば、あんたの息子さんは……っ!」
ガルドの懺悔の叫びが、夕暮れの路地裏に悲痛に響き渡った。
アレックもフィレモも、かける言葉を見つけられず、ただ黙って立ち尽くすしかなかった。
だが。
店主の男は、ガルドの言葉を聞いて、目を見開いた。そして、手にかけていたタオルを地面に落とし、ガルドの大きな背中にしがみつくようにして、声を上げて泣き崩れたのだ。
「もう……もう何も言わないでくれ……っ!あんたが、あんたが、あの子を……!」
店主の号泣に、ガルドは顔を上げた。
「ありがとう……っ!」
「お、親父さん……?」
「ありがとうな!……あんたが炎の中から、あの子を自分の体で庇って外まで放り投げてくれたおかげで……あの子は…………命を取り留めたんだよ……っ!」
店主の叫び声に、全員の時が止まった。
「え……?」
ガルドの口から、間の抜けた声が漏れる。
その時、路地の奥から、先ほどガルドが落下する鉄骨から助けた少年が、不思議そうにこちらへ歩いてきた。
「お父さん、どうしたの?このおっきいおじちゃん、誰?」
少年が無邪気な声で問いかける。その首元には、火傷の痕を隠すための小さなバンダナが巻かれていた。
ガルドは、目の前の少年と、涙を流して感謝する店主を交互に見つめ、やがて、その強面をぐしゃぐしゃに崩して、子供のように泣きじゃくった。
「生きて……生きてたのか……!よかった……本当によかった……っ!」
巨大な鋼の肉体を持つ男が、路地裏で、声を出して泣いている。その姿は、どんな美しい倫理の言葉よりも、尊く、温かいものだった。
アレックはそっと視線を逸らし、トレンチコートのポケットから新しいタバコを取り出して火をつけた。フィレモは両手で顔を覆って嬉し泣きをしており、ルキアもまた、誇らしげに微笑んでいた。
「一件落着だな、代行様。最高の依頼だったぜ」
「ああ。……だが、彼をどうやって警察の施設に戻すかが問題だな」
「馬鹿言え。また冷たいベッドにまた縛り付ける気か?こいつの最終調整は、俺の事務所で面倒見てやるよ。マキナの奴に頼めば、金属のメンテくらい朝飯前だ」
アレックが笑って言うと、ルキアは少しだけ驚いた後、ふっと肩の力を抜いて笑い返した。
「……仕方ない。探偵の倫理には逆らえないな」




