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第一話 16



メビルは、少し考えるように顎へ手を当てたあと、ぱんっと軽く手を叩いた。


「ほな、こうしよか?」


「兄ちゃんの願いを、五つ叶えたる」


「……えっ?」


「五つや」


メビルは、指を五本立てる。


「その五つを叶え終わった時に、鍵を渡してもらおう」


「それなら、少しは考える材料になるやろ?」


「何よ、それ……」


香久夜が露骨に嫌そうな顔をする。


「ますます胡散臭いじゃない」


「いやいや、これはワイなりの誠意やで?」


「いらないわよ、そんなの」


「でも兄ちゃんには、ちょっと悪くない話やと思うんやけどなぁ?」


その言葉に、悠馬は少しだけ黙る。


五つの願い。


願いを叶える。


そんな話、普通なら冗談みたいなものだ。


でも、今日までに起きたことを考えると、もう「ありえない」と言い切れない自分がいた。


「……じゃあ」


悠馬は、慎重に言葉を選ぶ。


「その前に、教えてほしい」


「なんや?」


「俺の中にあるっていう“鍵”について――」


「お前が知ってること、全部」


その瞬間、メビルの笑みが少しだけ深くなった。


「ええ質問やなぁ」


「でしょ?」


香久夜が割って入る。


「だから、そいつの手足を切り飛ばしてから、ゆっくり聞けばいいのよ」


「物騒すぎひん?」


「むしろ優しい方よ」


「いや、全然やで?」


悠馬は二人の会話に軽く頭を抱えながら、再びメビルを見る。


「……で、話してくれるの?」


「もちろん。せやけど、全部は無理や」


「えっ?」


「でもな――」


メビルは、懐から何かを取り出した。


それは、十枚ほどの薄い紙だった。


封筒にも、手紙にも見える。


少し古びたような、不思議な質感をしている。


夜の街灯の光を受けても、どこか紙とは思えない鈍い光を返していた。


「……なに、それ?」


「これが、ワイから兄ちゃんへの“材料”や」


メビルは、それを悠馬へ差し出した。


悠馬が受け取ると、紙はひんやりと冷たかった。


それぞれの表には、短い一文が書かれている。


けれど、そのどれもが妙に意味深で、内容をはっきりとは示していない。


「……何これ?」


「その中にはな」


メビルが、少しだけ声を落とした。


「兄ちゃんにとって、かなり重要な情報がいくつか入っとる」


「その五つの願いは、この紙の中身でもええ」


「どれか一つ選んで、“中身を見せろ”って言えば、ワイが開示したる」


「……中身を見せろ?」


「せや!」


メビルは、にいっと笑う。


「ただし、勝手に中を見ようとしたら――」


「その時点で、文章は消える」


「しかも、その一枚は“使用済み”扱いや」


「……ええっ!?」


「つまり、慎重に選べってことやな」


香久夜が、露骨に嫌そうな顔をする。


「ほんと、気に入らないやり方ね……」


「でも、その中に……かなり大事なものがあるんでしょ?」


悠馬がそう聞くと、メビルは軽く肩をすくめた。


「せや」


「兄ちゃんが、これから何を知るべきか」

「どこへ行くべきか」


「そのヒントになるようなもんも、混ざっとる」


「…………」


悠馬は、手の中の紙束を見つめた。


意味のわからない言葉ばかり並んでいるのに、不思議と目を離しにくい。


どれか一枚を開けば、自分が知らない何かへ……繋がる気がする……


「それと」


メビルが続ける。


「兄ちゃんが五つの願いを言い終わるまでは――」


「ワイは、兄ちゃんの近くで待機するわっ」


「えっ?」


「もちろん、その間はワイから戦闘を仕掛けたりは、せぇへん!」


「……ほんとに?」


「ほんまや」


メビルは、少しだけ真面目な顔で言った。


「少なくとも、“契約”の間はな」


その言葉だけが、夜の空気の中で妙に重く響いた。




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