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第一話 15


メビルは、ブランコの支柱にもたれながら、軽く笑った。


「単刀直入に言うとな――」


その視線が、悠馬へ向く。


「兄ちゃんの“鍵”が欲しいんや」


「……鍵?」


悠馬が眉をひそめる。


「また、それか……」


「せや」


メビルは、まるで世間話みたいな調子で続けた。


「まあ、正確に言うと、“兄ちゃんの中にある情報”なんやけどな!」


「情報……?」


「そっ」


メビルは指を一本立てる。


「で、それをもろた代わりに――」


「兄ちゃんの願いを叶えたる。どや?」


「…………は?」


悠馬が固まる。


香久夜が、呆れたように目を細めた。


「……胡散臭っ」


「いやいや、そこまで言わんでもええやん?」


メビルは少し傷ついたふりをしたあと、悠馬へ向き直る。


「もちろん、なんでもかんでもってわけやない」


「けどな、物理的な願いなら、だいたいは何とかなるで?」


「例えば――」


「お金、物、場所、情報、人探し、環境の調整……そういうのんや」


「……えっ」


一瞬、悠馬の思考が止まった。


メビルは、その反応を見逃さなかった。


「なんや、ちょっとは興味出てきたか?」


「……いや、別に……」


そう言いながらも、その否定は少しだけ弱かった。


メビルは、くくっと笑う。


「それに、誤解しとるかもしれへんけどな」


「兄ちゃんから“何かを引き剥がす”わけやないんや」


「鍵っちゅうのはな、一種の情報なんや」

「しかも、ワイが欲しいのは“コピー”や」


「つまり――」


「痛くも痒くもないし、兄ちゃんが損するようなもんでもない」


「……ほんとかよ?」


「少なくとも、ワイはそう聞いとる」


「全然信用できないわね」


香久夜が即座に切り捨てた。


「やっぱり、ここで始末した方が早いんじゃない?」


「物騒やなぁ、お嬢はん……」


「だって、どう考えても、あなた敵でしょ?」


「まあ、そら、立場的にはそうやけどな?」


「ほら、みなさいよっ……」


香久夜の周囲の空気が、わずかに張り詰める。


けれど悠馬は、その前に口を開いた。


「……ちょっと待って」


「えっ?」


香久夜が振り返る。


悠馬は、メビルを見た。


「正直、まだよくわからないんだ」


「鍵って何なのかも、自分がなんなのかも」


「だから――」


「……しばらく、考えさせてほしい」


メビルは、一瞬だけ目を細めた。


そのあと、ふっと笑う。


「……まあ、それでもええけどなぁ?」


「せやろ?」


つくちゃんが後押しする。


(こんなん、即決できる話ちゃうやろ……)


メビルは、少し考えるように顎へ手を当てたあと――


ぱんっと軽く手を叩いた。


「ほな、こうしよか?」




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