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第一話 17


メビルは、少しだけ真面目な顔で言った。


「少なくとも、“契約”の間はな」


その言葉に、つくちゃんが頭の中で小さく舌打ちする。


(うわっ……こういう時だけ、やたらそれっぽいこと言いよる……)


(えっ、信用しちゃダメなやつ?)


(当たり前やっ!)

(でも……嘘だけ言うタイプでもないんが、余計タチ悪いんや……)


香久夜は、しばらくメビルを睨みつけていた。


そのまま斬りかかってしまいそうな空気すらある。


だが――


「……待って」


悠馬が、静かに言った。


香久夜がそちらを見る。


「俺、まだ何も知らないんだ」


「だから……もう少しだけ、様子を見たい」


「悠馬……」


香久夜の声が、少しだけ揺れる。


納得していない顔だった。


それでも、彼女はしばらく黙ったあと――


「……わかったわよ」


不機嫌そうに、そう言った。


「でも、何かあったら――」


「すぐに、私が叩き潰すから」


「そら、おおきに」


メビルが、軽く笑う。


「ほんま、おっかないお嬢はんやなぁ」


「あなたにだけは言われたくないわね」


しばらくの沈黙。


街灯の明かりが、三人の影を長く伸ばしていた。


やがてメビルは、ひらひらと手を振る。


「ほな、今日のところはこれで終わりや」


「また近いうちに顔出すわ」


「もう、来なくていいわよ」


「いやや、兄ちゃんの近くで待機する約束やしな?」


「ほんと、うっとおしい……」


「褒め言葉として受け取っとくわ」


そう言って、メビルはふっと笑った。


次の瞬間、その姿は夜の空気へ溶けるように消えていく。


残されたのは、薄暗い公園と、十枚の紙だけだった。


「……なんか、すごいことになってきたな……」


悠馬が小さく呟く。


その手の中には、まだ紙束の冷たさが残っている。


香久夜は、その横顔をちらりと見たあと、ふいにそっぽを向いた。


「……だから言ったでしょ」


「あなた、かなり面倒なことに巻き込まれてるのよ」


「うん……なんか、今ごろ実感してきたよ!」


「遅いのよっ!」


「ええっ……」


いつもの調子に少しだけ戻ったその声に、悠馬は小さく肩をすくめる。


けれど、その胸の奥には、さっきまでとは違う重みがあった。


“鍵”。

五つの願い。

そして――


十枚の、意味ありげな手紙。


その中には――


ガーディアンや、メビルのような存在と繋がる何かが、確かに混ざっている。


断片的で、まだ形にならないそれらは、

まるでひとつの大きな流れの一部のように、どこかで繋がっている気がした。


何もわからないままなのに、もう後戻りはできないところまで来ている。


そんな感覚だけが、静かに胸の奥へ沈んでいく。


そして、その少し離れた暗がりの中で――


誰にも気づかれないまま、ひとつの気配が静かに笑っていた。


それはまるで――


すべてを知っているかのように。




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