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第一話 10



電柱の影から、ぬるりと何かが現れた。


黒い、歩くトカゲのような異形。


二足で立ち、細長い顔を歪めるように笑っている。


その姿だけで、普通じゃないとわかるのに――


口調だけが妙に人懐っこい。


「はじめましてと、言うとこか?」


異形は、ひょいと手を上げた。


「ワイ、メビル言います」


その瞬間――


「……ん?」


ポケットの中で、つくちゃんがぴくりと反応した。


「なんや、あんさん……関西弁やないけ……」


「ワイと、キャラかぶりやん……」


「……はっ?」


悠馬が思わず変な声を漏らす。


だが、その直後。


香久夜が地を蹴った。


「そんな挨拶、いらないわよっ!!」


一直線の斬撃。


だが――


「おっと」


メビルの姿が、ふっと消えた。


「……なっ!?」


香久夜の斬撃は空を切る。


次の瞬間。


「こっちやで?」


声は背後から聞こえた。


「っ!!」


振り返った時には遅かった。


メビルの爪のような腕が、香久夜の肩口をかすめる。


「くっ……!」


「へぇ、今の避けるんや」


軽い。


だが、その軽さの奥にある気配は明らかに危険だった。


「転移……?」


「ふっ、まあ、そんなとこやな」


また消える。


次は横。


次は後ろ。


そこに“移動した”というより、

最初からそこに“いた”みたいに現れる。


香久夜が確実に対応しているにもかかわらず、じわじわと押され始めていた。


「やばい……!」


悠馬の喉が鳴る。


助けなきゃ――そう思うのに、体が動かない。


……いや、違う。


動かないんじゃない。


何をすればいいのか、わからないんだ……。


そして、その時だった。


「……なんや、大変そうやな?」


聞き慣れた声が、ポケットのあたりから響いた。


「……? つくちゃん……?」


「黙って見とる場合ちゃうんやないか? あんさん?」


赤いダルマが、淡く光り始める。


その表面に刻まれた『七ころび、八起き』の文字が、不気味に揺れた。


「えっ……何っ?」


言い終わるより早く、つくちゃんのダルマの姿が崩れ赤い光の玉になった……


「……えっ」


悠馬の喉が、ひゅっと鳴る。


赤い光の玉は、そのまま細長く伸び、冷たい銀色の刃へと変わっていった。


「……カタナ……!?」


そして……それが、自然と悠馬の手の中へ収まる。


同時に、頭の奥がひやりとした。


景色が変わる。


呼吸の仕方が変わる。


立ち方が変わる。


指先の感覚まで、別のものへ塗り替えられていく。


(……違う)


これは、自分の感覚じゃない。


なのに――


なぜか、わかる。


足の運びも、間合いも、刃の重みも。


まるでずっと前から、この刀を振ってきたかのように。


(……なんなんだ、これ……)


思わず浮かんだ思考ですら、どこか自分のものではないように思えた。


そして、頭の中に言葉が響いた。


「……これは、妖刀――月読や……」


おそらく、つくちゃんの声……なのだろう……。


その瞬間、悠馬は無意識に地を蹴っていた……。




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