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[完結]【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
最終章 悪魔の遊戯

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スペシャルゲスト

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

 恐怖を振り払うように、拓海は再度すがる思いで懇願した。

「麗子、頼むから許してくれ! 君のためなら何だってする! だから命だけは!」

「本当に何でもしてくれるの?」

「ああ、本当だ。何だってする。だから、頼むから許してほしい!」

「うーん、どうしようかなぁ」

 含みのある言い方に、不安がかき立てられた。拓海の胸に悪い予感が広がる。

 そんな不安をよそに、麗子は意味深な笑みを浮かべて言葉を続けた。

「実はね。今日は佐藤さんの他にもう一人、スペシャルゲストを呼んでるの。何となく察しがつくんじゃない? もう一人いるわよね、今回のメインキャストが」

「……まさか!」

 拓海は言葉に詰まる。心拍数が否応なく上がっていく。

 そして、麗子が芝居がかった調子で声を上げた。

「はい! 新たなゲストの登場よ!」

 ドアが開くような金属音が聞こえ、すぐに聞き覚えのある声が聞こえてきた。どうやら、悪い予感は的中してしまったようだ。

「やだ、放して! あたしをどこに連れてくの! 放してよ、放してってばぁ!」

 黒服の男たちに引きずられるようにして美穂が姿を現した。最後にアパートで会ったときと同じ部屋着姿だ。そんな彼女の細い首には、ステンレス製らしき太い首輪が冷たく光っていた。

「美穂!」

 拓海が呼びかけると、美穂が驚愕した表情を向けてきた。

「たっくん!?」

 拓海は彼女に駆け寄ろうと試みるが、椅子が軋んだだけに終わる。今は美穂を助けることはおろか、自分の身さえも自由にできない。何もできない無力感が胸をえぐり、激しい悔しさが込み上げてくる。

「はじめまして、山口美穂さん」

 麗子の声に、美穂の顔が凍りつく。この場の支配者が誰なのかを理解したのだろう。彼女が絶望に染まった視線をこちらに向けてくるが、拓海はその視線をまともに受け止められなかった。

「これでメインキャストがそろったわね。山口美穂さん、あなたがここにいる理由は当然わかってるわよね? ええ、そうよ。あなたも有罪ってこと」

「ああ……!」

 両脇を男たちに抱えられていた美穂が、へなへなと膝から崩れ落ちていく。

 麗子は勝ち誇った笑みを浮かべてさらに続けた。

「山口美穂さん、あなたもすごいことしたわよね。薬の効果を確かめるために会社の上司を殺しちゃうなんて。でもわたし、そういう人、嫌いじゃないわ。なりふり構わずっていうか、目的のためには手段を選ばないっていうか、そういうのって、なんか人間味があっていいと思うの。でも今回は相手を間違えたわね」

 美穂が放心したように首を垂れる。顔は死人のように青ざめている。それも当然だろう。目の前で吊るされている佐藤の姿を見れば、絶望的な状況は一目瞭然だ。

「ねえ、山口美穂さん。わたしたちって、ちょっとした共通点があるの。複数の同じ男性に抱かれたっていうね。沢尻さん、こういうの何て言うんだっけ?」

 沢尻は一瞬考える素振りを見せてから答えた。

竿姉妹(さおしまい)……ですかね?」

「そう、それ! 竿姉妹! 何だかすごく卑猥な響きよね、竿姉妹って。ねえ沢尻さん、こういう場合、どっちがお姉さんになるのかしら。やっぱり年齢に関係なく、先に抱かれたほうがお姉さんかしら?」

「さあ、どうでしょう」

 沢尻は肩をすくめて見せる。

「佐藤さんと先にしたのはわたしだけど、拓海さんとしたのは彼女のほうが先だから、何だかややこしいわね。まあいいわ。ちょっと沢尻さん、佐藤さんの口のやつ、外してくれる?」

 指示を受けて、沢尻が佐藤の口を塞いでいたボールギャグを外す。口元が解放された佐藤は、ぜえぜえと苦しげに喘ぎながら怯えた様子で麗子を見ている。

 麗子が佐藤に向かって口を開く。

「ねえ、佐藤さん。山口美穂さんと拓海さんが知り合いだって知らなかったでしょ? そう、あなたはこの二人に、まんまとだまされてたのよ」

 とたんに佐藤の顔がまっ赤に染まった。男性器を切り取られた上に、さらに屈辱的な事実を突きつけられたのだ。精神的なショックは計り知れないだろう。

 佐藤が怒りの形相で美穂に罵声を浴びせ始めた。

「美穂! この野郎! ずっとおれをだましてやがったんだな! 絶対に許さねえ! 桜井、お前もだ! てめえら二人とも、ぶっ殺してやる!」

 美穂はガタガタと震えていたが、それは佐藤の罵声のせいではない。鎖につながれた佐藤など、取るに足らない存在なのだから。美穂の恐れは明らかに麗子に対してだ。

「覚えてろ! てめえら二人とも、いたぶりながら殺してやるからな!」

 佐藤の罵声はなかなか止まらない。

 すると、麗子がうんざりした様子で割って入った。

「佐藤さん、いい加減うるさい。ちょっと黙ってて。じゃなきゃ、こうしちゃうわよ」

 再び麗子のパンプスの先が、佐藤の腫れ上がった足首を襲った。

 佐藤が悲鳴を上げ、全身を震わせて痛みに悶絶している。拓海はそれを見て、胃の中のものがせり上がってくるのを感じた。

 場が静かになったところで、麗子が口を開いた。

「拓海さん、あとであなたのスマホから、適当な理由を作って劇団の人たちに退団のメッセージを送っておくわ。あとそれと、好きな人ができたから別れようみたいなメッセージも、わたしのスマホに送らせてもらうわ。もし、あなたの家族かお友だちがわたしを訪ねてきても、それを見せれば納得してもらえると思うの。でもあなたって、ご両親とは疎遠だものね。しばらく訪ねてくることはないかもね。それにお友だちにしたって、本気であなたのことを探そうとする人が出てくるかは疑問よね。人って、驚くほど他人には無関心な生き物だから」

 その言葉に、拓海はさらに絶望的な気持ちになっていく。劇団の仲間たちとは、べつだん強い絆で結ばれているわけではなかった。美穂以外の人間とは距離を置く傾向があったから、彼らが自分を探してくれる可能性はほぼない。今さらだが、浅い人間関係しか築いてこなかったことを後悔した。

 ここで麗子が少し悲しげな表情を浮かべた。

「拓海さん、悪く思わないでね。先に仕掛けてきたのは、あなたたちのほうなんだから。でも、本当にひどいわよね。お金のためにわたしを殺そうとするなんて。ベッドの上での優しさも、全部演技だったかと思うと少し悲しくなるわ。実はね、あなたに何度も抱かれるうちに、わたし、少しだけ(じょう)みたいなのが湧き始めていたの。これ本当よ。だから、もしあなたがちょっとでもわたしになびいてくれて、計画をやめてくれてたら、わたしも考え直したかもしれない。でも、あなたはわたしに対して情が移るなんてことはなかった。毎日せっせと、わたしの飲み物に毒を入れてた。それに傑作なのは、わたしが危篤だって連絡を受けたあとも、あなた、彼女さんとエッチなこと始めちゃったらしいじゃない? それ聞いて、ほんとにわたしって、ただのお金のための道具に過ぎなかったんだなって実感して、妙に悲しくなっちゃったもん……」

 麗子の言葉に、拓海は返す言葉がなかった。危篤の連絡を受けたあとの行動も筒抜けとあっては、もうどんな言い訳も通用しないだろう。

 するとそこで、コンクリートの床を叩く、小気味いい足音が聞こえてきた。

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