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[完結]【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
最終章 悪魔の遊戯

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赤いカーテン

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

 すると、麗子が手をパチンと叩いて言った。

「はい、前置きはここまで。拓海さん、今日はもっともっと、あなたを驚かせるつもりなんだから」

 拓海が緊張しながら見ていると、麗子が背後の赤いカーテンに歩み寄っていった。やはり、あのカーテンの裏には何かが隠されているようだ。

 麗子がカーテンの端をつかむと、こちらを見てニヤリと笑う。

「いい? 見てて。いくわよ」

 次の瞬間、赤いカーテンが勢いよく開かれた。

「なっ——!?」

 拓海は絶句した。全裸の男が吊るされていたからだ。

 佐藤だった——。彼は足先がかろうじて地面に触れる高さで吊るされていて、意識を失っているのか、首はだらんと力なく胸元に下がっている。どうやらかなりの暴行を受けたらしく、身体は無惨なあざに覆われ、とくに両足首の状態がひどかった。骨折しているかのように不自然な形でねじ曲がり、足の甲から()()()()にかけての部分がテニスボール大に赤黒く腫れ上がっていた。

 完全に一線を超えていた。拓海は恐怖で震え上がった。

「どう? 驚いた?」

 麗子が得意げに笑う。

 拓海は今だけ佐藤に同情した。殺す気でいた相手とはいえ、あんな姿を見せられては哀れみの感情しか湧いてこない。

 すると、麗子が冷ややかな目を向けてきた。

「拓海さん、まさか佐藤さんに同情してる? でも、人の心配してる場合かしら? あなたも同罪だってこと、忘れてないわよね?」

 その言葉に、拓海はぞわっと全身が(あわ)立った。自分の顔が、みるみる青ざめていくのがわかる。足もガタガタと震えている。もう少しで泣き出してしまいそうだ。

「……え!?」

 拓海はあることに気づき、心臓が跳ね上がった。これまで麗子が語る言葉に驚きの連続だったが、それらをはるかに超える衝撃が襲った。

 吊るされる佐藤の横に、腰ほどの高さのステンレス製の台座があった。その上に、円筒形のガラス瓶がぽつんと置かれていた。瓶の中には黄色い液体が入っていて、その中に、ふやけたソーセージのようなものが浮かんでいた。物体の正体は一目でわかった。男性器だ——。この状況下では、佐藤のものに違いない。ガラス瓶の中で彼の男性器がホルマリン漬けにされていたのだ。

 拓海はあまりの恐怖で全身が硬直していた。まるで、大蛇(だいじゃ)に丸呑みされるのを待つ、哀れな小動物のような気分だ。

 それでも拓海は確認せずにはいられなかった。おそるおそる佐藤の股間に目をやった。予想通り、陰茎が根元から切り取られていた。生い茂った陰毛のせいでわかりずらかったが、どうやら根元で縫合されているようだ。

 あんな姿にはなりたくないと拓海は強く願った。陰茎を切られるくらいなら、足首を折られるほうがまだましだ。

 麗子がガラス瓶を見て卑猥な笑みを浮かべた。

「ああ、これね。佐藤さんが、もう()()()ができないようにチョン切ってあげたの」

 その平然とした口調に、拓海は背筋を凍らせた。そして、この状況下でできることは命乞いしかなかった。

「麗子、すまなかった! 許してくれ! ぼくはそいつにだまされただけなんだ! 君を殺すつもりなんてなかったんだ! 全部そいつのせいなんだ! だから、頼むから許してくれ!」

「もっと言って! もっと言って! 気の済むまで言ったらいいわ!」

 麗子が瞳を爛々(らんらん)と輝かせながら叫んでみせる。

 拓海は思わず口をつぐんだ。命乞いは通用しないと悟ったからだ。

 全身から冷や汗が噴き出ていた。振り向けばすぐ後ろが切り立った崖になっているかのような、切迫した身の危険を感じた。彼女に少しでも押されたら、まっ逆さまに奈落の底へと落ちていく。自分の命運は、完全に彼女の手に握られてしまったようだ。

 麗子は一転して落ち着いた口調に戻って言った。

「拓海さん、わたしがだまされたふりをしてたことは、佐藤さんには伝えてあるわ。それも、恋人役だった女の人の前でネタバレしてあげたの。あなたにも見せたかったわ、この人の驚いた顔を。信じてた人から裏切られたときの顔って、けっこう見ものよ。でもね、だまされてたとはいえ、佐藤さんはいい思いをしたはずよ。だって、その恋人役の人、学生時代にモデルをやってたくらいの美人さんだったんだから。それに、あなたが毎月渡してたお金で綺麗なお姉さんがいるところで豪遊もできたわけだし。あとそうそう、あなたの彼女さんともエッチできたんだものね。きっと、人生最大のモテ期がきたって勘違いしてたんじゃないかしら」

 その言葉に、拓海は再び佐藤に同情した。

 するとそこへ、白衣を着た男が現れた。

「え!?」

 拓海は驚く。麗子の主治医だったからだ。どうやら彼もグルだったようだ。医師は佐藤の前に立つと、聴診器を彼の胸に当て始めた。

「どう、先生?」

「命に別状はないね。これならまだ、たいていのことには耐えられると思うよ」

「よかった」

「足に打った麻酔は、そろそろ切れるころだよ」

「わかったわ」

 もう用は済んだとばかりに、医師は暗闇へとすっと消えていった。

「ねえ、起きて。佐藤さん、起きてよ」

 麗子が佐藤の頬を軽く叩きながら言う。

 やがて、佐藤が意識を取り戻したようだ。

 彼は寝起きのようなぼんやりした顔をしていたが、目の焦点が麗子に合ったとたん、ギョッとした顔をして大きく身をよじった。

 いつも強気だった男が、今は別人のように怯えている。赤黒く腫れ上がった顔は涙で濡れ、麗子を見る目はまるで怯える仔犬のように弱々しい。口にはSMプレーで使われる穴の空いた樹脂製の黒い球が押し込まれていて、そこから大量の涎が糸を引いて滴り落ちていた。

「あ、そうだ。拓海さん、面白いもの見せてあげる」

 麗子はそう言うと、佐藤の腫れ上がった足首をパンプスの先で軽く小突いた。

「はうっ!」

 佐藤が声を上げて白目を剥いた。視線が宙をさまよい、強烈な痛みで意識が遠のいているようだ。その痛みが伝わってくるようで、拓海は強い吐き気を覚えた。

「どう? 笑っちゃうでしょ、この痛がりよう」

 狂ってる、狂ってる! あの女、心底狂っている! 拓海は心の中で叫んだ。

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