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[完結]【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第五章 破滅へのカウントダウン

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87/98

ついに……

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

 麗子の衰弱ぶりが、さらにひどくなった。食事はまったく取れなくなり、点滴だけが彼女の命をつないでいた。

「覚悟しておいてください」

 数日前に主治医からそう伝えられた。もって一週間だという。

 拓海は医師の前で涙を流して見せた。主治医は肩に手を置いて慰めてくれたが、涙を流しながらも拓海は心の中で歓喜していた。ついに、長きに渡った計画が終わりを迎えるのだ。

 拓海は椅子に腰を下ろし、ベッドに横たわる麗子を見つめた。青白い顔はまったく生気がなく、今夜死んでもおかしくないほどだ。

 麗子は酸素マスクを外すと、弱々しい声を振り絞るように発した。

「拓海さん……。もうわたし……本当にダメかも……」

「麗子、しっかりするんだ。約束しただろ? 元気になって、ぼくの舞台を見に来るって」

「ごめんなさい……。その約束……守れそうにない……」

「あきらめちゃいけない。きっと良くなるから」

「今まで……たくさん迷惑かけて……ごめんなさい……。拓海さん……。わたしが死んだら……サクラのこと……お願いね……」

 麗子は辛そうに言葉を発しながら愛猫の心配を口にした。

「弱気になっちゃダメだ。サクラは君の帰りを待ってる。サクラのためにも、がんばらなきゃ」

「拓海さん……。一つ……お願いがあるの……」

「何だい?」

「前に……わたしが死んだあと……恋人を作ってもいいって言ったけど……。やっぱりわたし……拓海さんが他の人といっしょになるのは許せないの……。だから、誓って……。絶対に、再婚しないって……。お願い……誓って……」

 血走った目で、麗子は喘ぐように訴えてきた。

 拓海は彼女の手を取り、目をそらさずに答えた。

「誓うよ。君にもしものことがあっても、ぼくは絶対に再婚なんてしない」

「ありがとう……。わたし、死んでも天国から……ずっと、見てるから……」

 麗子は弱々しく微笑んだあと、酸素マスクを口に戻して静かに目を閉じた。

 彼女は天国と口にしたが、行き先は別の場所のように思えてならなかった。いずれにせよ、死んだあとまで彼女の視線に怯えるのは御免だ。弱々しい呼吸音を聞きながら、拓海は改めて麗子のやつれ果てた顔を見つめた。この様子では、今夜逝ってもおかしくはない。数日もてば奇跡だろう。気の毒に思わなくもなかったが、胸を支配するのは圧倒的な喜びだ。そしてこの歓喜を誰かと分かち合いたいと強く願った。

「麗子、ちょっと外の空気を吸ってくるよ」


       *  *  *


 病院の外に出たが、今日は病室に戻る気にはなれなかった。このまま麗子のそばにいれば、彼女の死に目に立ち会うことになる。誠実な夫であれば最後まで妻に寄り添うだろうが、自分が死に追いやった女の最期を目にするのは耐えられない。それに、毎日のように見舞い、献身的な夫を演じてきたのだ。たとえ死に目に立ち会えなくても、さほど非難されることはないだろう。

 麗子の死が確実となった今、この喜びを美穂と分かち合いたいという衝動が抑えきれなくなった。本来なら遺産が手に入るまで会うべきではなかったが、一度彼女を欲してしまうと、欲望は簡単に理性を凌駕した。

 気づけばタクシーに乗り、美穂のアパートへと向かっていた。盗聴で得た情報のおかげで尾行の心配はなくなっていた。それでも多少は理性を働かせて、念のため途中でタクシーを乗り換えた。

 突然の訪問に、美穂は目を丸くして驚いた。

「たっくん、来てだいじょうぶなの!?」

「話はあとだ!」

 拓海は玄関に足を踏み入れるなり、美穂の唇を強く吸った。

「ちょ、ちょっ、ちょっと待って!」

 困惑している美穂の制止を振り切って、拓海は彼女の顔や首にキスを浴びせながら奥まで進んでベッドに押し倒した。部屋着を乱暴に脱がすと、美穂にも興奮が移ったのか、急に鼻息を荒くして拓海のベルトに手をかけてきた。

 拓海は熱に浮かされたように、彼女の下腹部にたぎったものを押し込んだ。

「ああ——!」

 美穂が悲鳴にも似た声を上げ、全身を震わせた。すでに絶頂に達したかのように全身をけいれんさせている。それでも構うことなく、拓海は狂ったように何度も腰を打ちつけた。互いの性器を通じてつながった結合が、肉体を超えて魂が溶け合うような感覚をもたらし、しだいに視界が白く霞んで美穂の顔がぼやけていく。まっ白な空間の中、純粋な快楽だけが意識を支配し、夢の中で愛し合っているような高揚感に包まれた。このまま消え去ってもいいとさえ思えるほどに、魂が歓喜していた。


 行為が終わったあと、ほとんど何も覚えていなかった。ただ、幸福感に包まれながら、最高の快楽に酔いしれたという感覚だけが残っていた。初めて味わう圧倒的な体験だった。

 しばらく行為の余韻に浸っていると、外から激しい雨音が聞こえてきた。土砂降(どしゃぶ)りといった感じだ。帰りは傘を借りる必要がありそうだ。

 美穂が頬を紅潮させながら口を開いた。

「……さっきの、すごかったね。壊れちゃうかと思った」

「半年ぶりだったからね。ここ数週間ほど、君が欲しくてたまらなかった」

「一人で、しなかったの?」

「ぼくが自己処理をしないのは知ってるだろ」

「そうだったね」

 雨音は絶え間なく響き、セックスの余韻を少しずつ冷ましていく。

「雨、すごいね」

「ああ……。この大雨は、彼女が流す最後の涙なのかもしれない」

「え……?」

 美穂が少し困惑した表情を浮かべた。

 拓海は、麗子の命があと数日だと告げた。

「……じゃあ、もうすぐいっしょに暮らせるんだね」

「ああ、そうだよ」

「とうとう、終わるんだね……」

 美穂が感慨深げにそうつぶやく。

「でも美穂、前にも話したけど、彼女が死んでもすぐにはいっしょに暮らせない。ある程度は喪に服さなきゃいけないからね。でも、会える時間は今よりずっと増えるよ」

「もう、我慢しなくていいんだね」

「ああ、そうだよ」

 美穂が満面の笑みを見せる。その笑顔に、拓海は明るい未来しか見えなかった。

 拓海は高揚した気分のまま続けた。

「話は変わるけど、彼女が入院してくれて本当によかった。知ってるかい? 自宅で死んだ場合、警察が検視に来るんだ。死因に事件性がないか調べるためにね。家族が保険金目当てに殺害したんじゃないかって疑ってかかるんだ。そういうことだから、警察がぼくの素性を知ったらまっさきに疑われる。貧乏役者が遺産目当てに結婚したんじゃないかってね。だから、彼女にはこのまま入院先の病院で逝ってもらいたいんだ。でも、もし警察が動いたとしても、家のメイドたちとは仲良くやってきたから、彼女たちがぼくに不利な証言をすることはないと思う。きっと、夫婦仲は良かったって答えてくれるはずだ」

 自分が屋敷の使用人たちに良く思われているのは間違いなかった。昔から敵を作らないタイプで、人当たりのよさは自覚していた。

「だったら、あの人がこのまま病院で亡くなってくれればいいね」

「そうだね。まあ、彼女には少し気の毒だけど、これも二人のためだからね」

「うん、二人のためだもんね。あたしも気の毒に思うけど、あの人、ものすごいお金持ちの家に生まれて、ずっと贅沢な生活を送ってきたんだもん。今死んでも、悪い人生じゃなかったと思うよ」

「その通りだ。長生きできなくても、誰よりもいい人生だったはずだ」

 そこで突然、スマホが鳴った。拓海はベッドの下のジーンズに手を伸ばしながら、麗子の容態に変化があったのだと直感した。

 ジーンズのポケットからスマホを取り出して画面を見ると、「沢尻さん」と表示されていた。

 拓海は美穂にスマホの画面を見せてニヤリと笑う。

「噂をすれば、だよ」

 拓海はベッドに腰掛け、居住まいを少し正してから電話に出た。

「……もしもし? うん、だいじょうぶ。今稽古が終わって、劇団の仲間と食事してるところなんだ。……え、何だって!? わかった。すぐに病院に向かうよ」

 通話を切ると、美穂が緊迫した顔で聞いてきた。

「どうしたの!?」

 拓海は自分の顔がにやけてしまうのをどうしても抑えきれなかった。笑うべき場面ではないのに、自然と笑みがこぼれ出てしまう。

「麗子が肺炎にかかって、意識を失って集中治療室に運ばれたらしい。危篤だそうだ」

「じゃあ、早く病院に行かなきゃ!」

 美穂は叫ぶように声を震わせた。

 だが、拓海は不思議と冷静でいられた。

「いや、そう急ぐ必要もないだろう。下手に死に目に会っても寝つきが悪くなるだけだ。いっそ、ぼくが病院に着くころには息を引き取ってくれていたほうがいい」

「そっか……」

 美穂が小さくつぶやくが、だいぶ動揺している様子だ。それも当然だろう。人が一人、この世から消えてなくなるのだから。だが、拓海は違った。これでようやくすべての呪縛から解き放たれるのかと思うと、喜びしか湧かなかった。しかも、ついに麗子が最期を迎えるとあって、異様な興奮が身体の奥底から込み上げてきた。気づけば、美穂の白くて大きな胸を鷲づかみにしていた。

「たっくん、痛い……!」

 美穂が苦痛に顔を歪めるが、拓海は構うことなく強く揉み続けた。

「……た、たっくん、時間はだいじょうぶなの?」

「ああ、焦る必要はない。病院に行くのは、もう一度愛し合ってからでいい」

 拓海はそう答えると、美穂の唇を吸い、それから犯すように彼女の身体をむさぼっていった。いつもの優しさはどこかに消え、全身が獣のような衝動に支配されていた。耳を強く噛み、胸をもぎ取るかのように乱暴に揉みしだく。美穂が痛みに声を上げても容赦しなかった。彼女を後ろ向きにさせて挿入すると、まるで罰を与えるかのように荒々しく腰を打ちつけていった。まるで、自分が野獣にでもなったかのような感覚だ。今は、か弱き獲物を前にした、絶対的な捕食者の気分だった。

 その刹那、佐藤の顔が脳裏をよぎった。

 拓海は、美穂の細い首を背後からつかむと声を上げた。

「次の獲物は、あいつだ!」

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