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[完結]【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第五章 破滅へのカウントダウン

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84/98

執事の倫理観 ①

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

「昨日、芝居が好きだっていう看護師の子と少し話をしたよ」

「ああ、ヨシザワさんね……」

 麗子は辛そうに顔をしかめながら答えた。唇は白くかさつき、昨日よりもさらに衰弱しているように見える。もう一か月ももたないのではないだろうか——。

「彼女、ぼくの舞台を見に来たいって言ってたよ」

「そう、わたしが勧めたの……。見に行ってあげてって……」

「そうだったんだ。これ、舞台のパンフレット。ここに置いとくから、来たときに渡してあげて」

「ええ、わかったわ……」

 だいぶ辛そうなため、拓海はそれ以上話しかけるのを控えて文庫本に視線を落とした。

 しばらくして、か細い声が響く。

「……拓海さん、サクラはどうしてる?」

「元気にしてるよ。ちゃんと可愛がってるから心配しないで」

「そう、ならよかった……。でもあの子、寂しがり屋だからちゃんと見ててあげてね」

「わかってるよ。安心して。ちゃんと見とくから」

「お願いね……」

「ああ」

 か細く震える声で麗子は続けた。

「……拓海さん。わたしのこと、まだ愛してる?」

「もちろんさ」

「……本当に?」

「ああ」

「信じて……いいのよね?」

 拓海は麗子の手を取り、真剣な眼差しで言った。

「麗子、あのとき誓ったじゃないか。どんなことがあっても、君を愛し続けるって」

「そうね、そうよね……。ごめんなさい、疑ったりして……。でもわたし、今こんなだから、あなたの気持ちが離れてるんじゃないかって不安で……」

 拓海は彼女の手を強く握りしめた。

「麗子、心配しなくていい。ぼくは今でも君のことばかり考えているんだから。初めて会ったときからずっと、ぼくは君に恋してるんだ。ぼくには君しかいないんだよ」

「拓海さん……」

 麗子の目に涙が浮かんだ。どうやら今の言葉は、狙い通り彼女の胸に響いたようだ。

 彼女が望むのであれば、拓海はいくらでも愛の言葉を投げかけるつもりでいた。せめて最期だけは、穏やかな気持ちで旅立ってほしいと心から願っていた。なぜなら、資産家の家に生まれたというだけで、彼女には何の罪もないからだ。運悪く悪鬼に目をつけられただけなのだから——。

 そろそろ病室に来て一時間が経とうとしていた。拓海は静かに立ち上がると言った。

「麗子、明日また来るよ」


       *  *  *


 病室を出たところで沢尻と出くわした。彼は三、四日に一度のペースで麗子の病室を訪れていた。

「拓海様、ちょうどよかった。このあと、お時間ありますか?」

「少しなら、だいじょうぶだけど」

「では、下の駐車場でお待ちいただけますか? すぐに向いますので」

「うん、わかった」

「ではのちほど」

 沢尻はそう言って、横開きのドアを軽くノックしてから麗子の病室へと消えていった。

 拓海は横開きのドアをじっと見つめた。いったい沢尻は自分に何の用があるのだろうか。また、沢尻は麗子とどんな話をしているのだろうか。

 ふと、麗子が警察にマークされていることを思い出す。彼女が何らかの事件——たとえばウェイトレスの失踪——に関わっているなら、きっと沢尻を使っているに違いない。病室で今二人は、新たな企みを密談しているのではなかろうか。それはもしかすると、自分に関わることかもしれない——。

 拓海は漠然とした不安を胸に抱きながら、重い足取りでその場をあとにした。

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