看護師
【悪魔も聖書を引用できる——】
衝撃のラスト!
あなたはきっと騙される!!
「桜井さん!」
病院を出たところで、背後から声がかかった。振り返ると、二十代半ばほどの女性が立っていた。一瞬誰かと思ったが、すぐに麗子の担当看護師だと気づく。私服姿は白衣とは違い、ずいぶん印象が柔らかかった。
「奥様のお見舞い、終わられたんですか?」
「うん。ああいう状態だから、あまり長居してもね」
「奥様、早く良くなるといいですね」
看護師はそばかすの目立つ顔で神妙そうに言った。
「仕事は終わったの?」
「はい。ちょっと残業になっちゃいましたけど、やっと帰れます」
「それはお疲れさま」
「ありがとうございます。そういえば、桜井さんのお宅って猫ちゃんを飼ってらっしゃるんですよね?」
「そう、ペルシャ猫をね。妻がもともと飼っていた猫なんだ」
「サクラちゃん……でしたっけ? 奥様に写真を見せてもらったんですけど、とても可愛い猫ちゃんですよね。奥様、いつもサクラちゃんのこと心配されてるんですよ」
「そうなんだ」
拓海はふと気になることを思い出し、看護師にたずねた。
「あのさ、一つ聞きたいんだけど、最近妻の様子で変わったことってないかな?」
「変わったこと……ですか?」
「うん」
「……そういえば、匂いにかなり敏感になってるみたいです」
拓海は少し身をこわばらせる。
「……匂い?」
「ええ。お水とかお食事の匂いがだいぶ気になるようで、わたしどもが匂いを嗅いで問題がないことを確認してからでないと、口をつけようとされないんです」
「そうか……。なんか、迷惑かけちゃってごめんね」
看護師は目を見開き、大きく手を横に振った。
「いえいえ、とんでもない。奥様は看護師みんなに優しいですし、お身体が大変だというのに不機嫌な顔一つされませんし、本当に素敵な方でいらっしゃいますよ」
麗子への賛辞を聞き、拓海は複雑な気持ちになった。自分はそんな立派な人間を金のために殺そうとしているのだ。彼女が忌み嫌われるような人間だったら、どんなに楽だったか——。
「それに、匂いが気になるといっても、作り直せなんて絶対言いませんし、看護師が問題ないと言えば、ちゃんと食べてくださるんです。ここだけの話、特別個室を利用される方には、わがままな方もいらっしゃいますから」
拓海は同意するようにうなずく。確かに、金持ちの患者に横柄な者が多いだろうことは容易に想像がつく。
すると、看護師が上目遣いに聞いてきた。
「あのう?」
「ん?」
「奥様からお聞きしたんですけど、お芝居をされてるとか」
「ああ、まあ」
「わたし、舞台とか大好きでよく見に行くんです。今度、見に行ってもいいですか?」
「もちろん。ぜひ来てよ」
「はい! 必ず行きます!」
「次来たとき、妻にパンフレット渡しておくよ」
「うわ、うれしい! ありがとうございます!」
「いや、こちらこそよろしくね」
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