接触
【悪魔も聖書を引用できる——】
衝撃のラスト!
あなたはきっと騙される!!
「佐藤良彦さん、ですよね?」
突然声をかけられ、佐藤はぎくりとした。背広姿の二人組の男たちだった。ともに三十代後半くらいか、どことなく顔立ちの似た二人は作り物の笑みを浮かべている。
「少しお時間いただけませんか? いくつかお伺いしたいことがありまして」
男の一人が警察手帳をさりげなく見せながら言った。
「急に何だよ。今忙しいんだけど」
警察手帳を見たせいで動揺し、佐藤はつい語気が荒くなってしまった。
「新庄麗子さんを、ご存知ですよね?」
「え!?」
刑事の言葉に、佐藤の心臓がどくんと跳ねた。とっさに否定しかけたが、何とか思いとどまる。下手に否定すれば、かえって怪しまれるだろう。
「……あいつが、どうかしたのか?」
「まあ、立ち話も何ですから、近くでコーヒーでも飲みながら話しませんか?」
断れるような雰囲気ではなく、佐藤はしぶしぶながら了承した。
* * *
「冷めないうちにどうぞ」
刑事がペーパーカップに入ったコーヒーを目の前に置き、佐藤は黙ってそれを手に取った。
熱いコーヒーを飲みながら刑事たちが口を開くのを待つ。四人掛けのテーブル席で、佐藤は壁を背にして座っていた。対面に座る刑事二人は通路側だ。
先ほど渡された名刺には、「警視庁公安部」と記載されていて、佐藤の目の前に座る男が警部補で、斜め前に座る男が巡査部長だった。
映画やドラマの影響だろうが、「公安」という言葉にはどこか不穏な響きがある。それに、桜井拓海と進めている計画の件もあり、佐藤はなおさら落ち着かない気分にさせられた。
目の前に座る警部補の男が軽く笑みを浮かべて口を開いた。
「プライベートな話で恐縮ですが、佐藤さんは以前、新庄麗子と交際されていたそうですね?」
「まあ、ずいぶん前の話だよ」
佐藤が素っ気なく答えると、斜め前に座る巡査部長が手帳に何やら書き込む。どうやら、彼は記録係らしい。
「別れてからは、いっさい連絡をとってない。で、あの女がどうかしたの?」
刑事は少しためらった様子を見せてから答える。
「ここだけの話にしていただきたいのですが、新庄麗子はある犯罪に関与してる疑いがありまして」
「犯罪!?」
佐藤は驚くが、同時に安心もした。少なくとも、自分が捜査対象ではないことがわかったからだ。
「で、あの女、何をしたの?」
「すみませんが、それはちょっと……」
刑事は言葉を濁したが、佐藤はどうしても知らずにはいられなかった。内容いかんによっては、今進行中の計画を見直す必要があるかもしれない。
その後、しばらく他愛のない質問が続いた。交際中に通っていた店、会っていた頻度、彼女の趣味嗜好や性格などを聞かれた。佐藤は記憶を掘り起こしながら、できる限り正直に答えた。
「もう一つお聞きしますが、佐藤さんが交際されていたころ、彼女のまわりで何か変わったことはありませんでしたか?」
「変わったこと?」
「ええ。例えば、彼女の知人が突然姿を消したとか」
刑事の言葉に、佐藤は動揺した。
「あの女が、誰かを消したっていうのか!?」
「いえ、そういうわけでは……」
刑事は困ったような顔をして再び言葉を濁すが、今の発言から判断すると、彼女は身近な人物の失踪に関与している可能性があるようだ。金に物を言わせて、無茶なことでもしたのだろうか。
仮に彼女が逮捕された場合、遺産はどうなるのか。そこがいちばん気になった。
「刑事さん、今の言い方だと、あの女のまわりで誰かが消えたってことだよな?」
「いえ、ですからそういうわけでは……」
答えに窮している刑事を見て佐藤は苦笑した。これ以上追求しても本当のことは話さないだろう。
「悪いが刑事さん、変わったことって言われても、おれには何も思い当たることはない。付き合ってたのも、半年かそこらだったしな」
「そうですか……」
「役に立てなくて悪かったな」
「いえ、そんなことは……」
しばしの沈黙ののち、刑事がやや媚びるような口調で言った。
「佐藤さん、今日の話は、どうかご内密にお願いします。相手に気づかれないよう慎重に動いてますので」
「ああ、わかったよ」
佐藤は気のない返事をし、冷めたコーヒーを口に運んだ。
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