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[完結]【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第五章 破滅へのカウントダウン

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カラオケボックス

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

 盗んだ宝飾品を換金した結果、五百万円もの大金が手に入った。低く見積もっていた分、その金額に胸は躍った。金は記録が残らないよう現金のまま隠し持つことにした。今後もどんな出費があるかわからないため、まとまった金があるのは心強かった。

 佐藤への金の受け渡しは、彼の強い希望で直接渡すことになった。拓海が提案したコインロッカーや宅配便などを利用した方法は却下され、受け渡し場所は新宿のカラオケボックスに決まった。 

 稽古が終わると、拓海は約束のカラオケ店へ急いだ。先に佐藤が部屋を確保して待っている。

 カラオケ店に到着すると、拓海はさりげなく周囲を見渡した。とくに怪しい人影は見当たらない。尾行はされていないと思うが、不安は拭えない。用心のため一人カラオケを装い、受付で一時間の利用で部屋を借りた。ワンドリンク制のためジンジャーエールを注文する。

 二階の指定された部屋に入ってドリンクが来るのを待つ。室内はとても狭く、四人も入ればいっぱいになるほどだ。すぐに店員がドリンクを持って現れた。拓海はジンジャーエールを半分ほど飲み干すと、佐藤が待つ部屋へ向かった。

 エレベーターを利用して三階に上がり、312号室に向かう。部屋の前に立つと、ドア越しに歌声が聞こえてきた。ドアのガラス越しに中を覗くと、佐藤が部屋の奥に座って米津玄師の曲を熱唱していた。 ドアを開けて室内に入ると、佐藤は歌唱を止めた。

「よう、早かったな」

 この部屋も二階の部屋と同様にこじんまりとしていた。拓海は少し苦労しながら佐藤の斜め前に腰を下ろした。

「金は?」

「もちろん、ちゃんと持ってきましたよ」

 だが、拓海はすぐには渡さず、用意していた言葉を口にした。

「今日なんですけど、薬代の他に三か月分を渡すって言ってたじゃないですか」

「ああ」

 とたんに佐藤の表情が険しくなる。不利な条件を切り出されるのではと警戒の色をにじませている。

 拓海は動じることなく続けた。

「でも思ったんですが、会う機会はなるべく少ないほうが安全だと思うので、今日は四か月分用意してきました」

「ほう。そりゃ、ずいぶん気前がいいこったな」

 打って変わって、佐藤の目が喜びに輝く。予想通りの反応だ。

 ひと月分を余分に払うのは一見損に見えるが、払うべき金を先払いするだけでいっさいの損はない。結局払う金なのだから、早いか遅いかの違いでしかない。それに、百二十万よりも百五十万のほうがキリがいい。こんな大胆になれたのも、五百万円もの臨時収入のおかげだ。

 拓海は百五十万円分もの札が入った厚い封筒を佐藤に手渡した。封筒の厚みで申告通りの金額があると確信したのか、佐藤は封筒を覗いただけで数えはしなかった。代わりに、封筒の重みを確認するかのように、手のひらに乗せた封筒を上下させて上機嫌に笑った。またその金でキャバクラにでも向かうのかもしれない。

「ほらよ」

 佐藤に小瓶を渡され、拓海はそれを顔の前にかざした。小瓶を光に透かし、軽く振って中身を確認する。問題はなさそうだ。

 佐藤がビールを一口飲んでから口を開いた。

「しばらく会わないとなると、どう連絡し合うかだな。お前としては、電話もなるべく避けたいんだろ?」

「ええ、そうですね。尾行されてたのは間違いないと思うんで、念には念を入れたほうがいいと思うんです。記録が残るんで、電話もメールも極力控えたほうがいいかと」

「確かに慎重になることはいいことだ。それでな、いい方法を思いついたんだ」

 佐藤が提案してきたのは、Gメールの「下書き」を利用する方法だった。互いに同じアカウントでGメールにログインし、下書きだけで連絡を取り合うのだ。この方法だと実際に送信する必要がないため、送受信の記録もいっさい残らない。とてもいいアイデアに思え、反対する理由はなかった。

「いいですね。その方法でいきましょう」

「でな。すでにアカウントを用意してきたんだ」

 佐藤はそう言って、小さなメモ用紙を手渡してきた。


 satoutosakurai@gmail.com

 PW:4170imuya


 メールアドレスは、「佐藤と桜井」をローマ字にしたものだった。かなり安易なアドレスだったが、とくに問題はないだろう。パスワードもすぐにピンときた。反対にすると、「ayumi0714」。「アユミ」という女に会っているときにでも作ったのかもしれない。こちらも安易すぎて苦笑してしまう。「アユミ」という女は、調査会社の報告にあった女かもしれない。

 再びビールを一口飲んでから佐藤が続ける。

「おれらはこれまで月一回しか会ってこなかったんだから、毎日ログインする必要はないだろう。週一で確認するってことでどうだ?」

「わかりました。それでいきましょう」

「一応、曜日と時間も決めておくか。……そうだな、日曜の夜九時でどうだ? 連絡したいことがあれば、それまでに下書きに書いておくってことで」

「了解です。日曜の九時ですね」

「ああ、そうだ」

「じゃあ、次会うのは四か月後ってことで」

 ここで、佐藤が意味ありげな笑みを浮かべて言った。

「次会うころには、あの女の遺産はお前のものになってるかもな」

「ええ、そうなることをぼくも祈ってます」

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