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[完結]【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第五章 破滅へのカウントダウン

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尾行

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

 拓海は稽古場に向かって歩いていた。夕方の喧騒の中、商店街は買い物客でごった返している。

 今日もタクシーを利用したが、いつも稽古場から少し離れた大通りで降りるようにしていた。経済的に苦しむ仲間たちへの配慮だ。稽古場にタクシーで乗りつければ、彼らが複雑な思いをするのは目に見えている。

 拓海は軽やかな気分で商店街を進んでいく。麗子が入院したことで自由な時間が増え、心は解放的になっていた。リョウの件で多少ごたついたが、計画はおおむね順調だ。美穂のおかげで佐藤が懇意にする弁護士も判明し、見通しはだいぶ明るい。あとは麗子の遺産が入りしだい、佐藤の件は対処すればいい。ゴールが近づきつつあることに自然と気持ちは高揚してしまう。

 稽古場に近づいたところで、ふと、通り過ぎた洋菓子店が気になり(きびす)を返した。団員たちへの差し入れでも買おうと思ったのだ。

「え……!?」

 振り返った瞬間、拓海は目を見開いた。十数メートルほど離れた場所にいた男と目が合ったからだ。男は一瞬立ち止まりかけたが、すぐに視線を外し、何事もなかったかのように歩き出す。男は三十代半ばくらいで、薄手のブルゾンにジーンズという平凡な出で立ちだ。

 拓海は洋菓子店へ向かいながらも男から目を離さなかった。直視しているというのに、男は不自然なほど目を合わせようとしない。すれ違ったあとも視線を外さずに男の背中を追う。男は少し先の小さな交差点を左に曲がり、姿は見えなくなった。

「尾行……されてたのか?」

 今の男の反応は明らかに不自然だった。

「でも尾行だとしたら、いったい誰が……」

 考えられるのは、麗子か佐藤の二人しかいない。この二人以外は考えられない。リョウには探偵を雇う金はないだろう。

「やはり、麗子か……」

 可能性が高いのは麗子のほうか。彼女が浮気を疑い、探偵を雇ったと考えるのが自然だ。

 拓海は少し呆然としながら稽古場へ向かう。すでに差し入れを買う気分は失せていた。自分の思い過ごしであってほしいと願ったが、尾行されていたという確信は強まるばかりだ。もし本当に尾行されていたなら、最大の問題は()()()()()()()()()のかだ。結婚後の不貞の数々が脳裏をよぎり、背筋が凍った。

「ぼくは、なんてバカだったんだ……」

 これまでの軽率な行動を悔やんだ。考えてみれば、計画が完了するまで美穂に会うべきではなかったのだ。仮に、美穂との関係がばれて離婚という結果に終われば、これまでの苦労は水の泡となる。それで麗子が死んだとあっては、まったくもって無駄な殺人になってしまう。それを避けるためにも、今さらではあったが、今後は美穂との連絡を完全に断つなどして、これまで以上に慎重な行動を取るしかない。

「善は急げだ」

 稽古場の入ったビルに身を寄せ、拓海はスマホでLINEを開く。余計な心配はさせたくなかったが、美穂には尾行の事実を正直に伝えることにした。それを理由に連絡を制限する旨を伝え、佐藤のことは彼女の裁量に任せることにした。美穂はバカではない。あまり無茶はしないはずだ。

 完成したメッセージを送信すると、すぐに「既読」がついた。それから送信したメッセージを削除し、美穂をLINE上でブロックした。続いて電話帳を開き、彼女の番号を着信拒否にした。

「あとは佐藤か……」

 彼にも連絡する必要があった。尾行の事実を伝え、今後は会うのを控えるよう提案しなければならない。毎月の三十万をどうやって渡すかも考え直す必要がある。銀行振り込みでは記録が残るため賢明ではない。後日まとめて支払う案では、きっと彼は納得しないだろう。

「何か、うまい方法を考えなければ……」

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