バースデー・ソング
【悪魔も聖書を引用できる——】
衝撃のラスト!
あなたはきっと騙される!!
麗子が二十八歳の誕生日を迎えた。拓海は彼女の寝室でそれを祝った。
ベッド脇のナイトテーブルにホールケーキを置き、ろうそくはキリよく十本立てた。
拓海はマッチで一本ずつていねいに火を灯すと、「ハッピーバースデートゥーユー」を歌った。白々しくならないように心を込めて歌うのは思った以上にむずかしかった。
歌い終えると、拓海は麗子に優しく問いかけた。
「願いごとは?」
「決まってるわ」
麗子はそう答えると、ろうそくに息を吹きかけた。だが、彼女の口から放たれる細くて弱々しい息ではすべての炎は消えてくれず、見かねた拓海が残りの炎を吹き消した。
恥じらうような弱々しい笑みを見せる麗子に、拓海は気まずさを振り払うように明るく自然な声で言った。
「どんな願いごとをしたの?」
「決まってるじゃない。次の舞台も成功しますようにって」
「ありがとう。次の舞台には、絶対に元気な姿で見に来てほしい」
「ええ、そうね……。がんばるわ……」
麗子はそう答えると、寂しげにうつむいた。
拓海はケーキを切り分けて皿に盛りつけた。二人して無言でケーキを食べ始めるが、麗子はほんの少し口に運んだだけでフォークを置いた。
「ごめんなさい……。どうしても食欲が湧かなくて……」
「いいよ、無理しなくて。残りはメイドさんたちにあげるよ」
「そうしてあげて……」
麗子は自嘲気味に笑ったあと、ナイトテーブルに腕を伸ばす。そこには医師から処方された薬やサプリメントが無数に並び、今ではかなり高価な漢方薬も加わっていた。
その漢方薬には高いデトックス効果があるらしく、体内に溜まった重金属などの毒素を排出してくれるらしい。いまだ目に見えた効果は出ていなかったが、『漢方』という言葉には、なぜか強い効能を期待させる響きがある。拓海はそのため、麗子に与えている毒薬の量をこっそり倍にした。それで漢方薬の効果を打ち消してくれることを願った。
「……拓海さん」
「ん? 何?」
「……わたし、民間療法を試してみようと思うの」
「民間療法か……。でも、ちょっと胡散くさいイメージあるよね」
拓海は軽く笑ってごまかすが、内心では動揺していた。
「そうかもだけど、このままじゃ、悪くなるばかりですもの……」
今言ったように、拓海は民間療法には懐疑的だ。だが、効果がまったくないとは言い切れない。もし、彼女が劇的な回復を見せれば、これまでの計画は水の泡になってしまう。そんな事態は絶対に避けたい。とはいえ、ここで反対するのも不自然だ。それで仕方なく協力するふりをした。
「そうだね。少しでも良くなるなら何でも試してみよう。ぼくも調べてみるよ。劇団の仲間に東洋医学に詳しいやつがいるから、次会ったときにでも聞いてみるよ」
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