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[完結]【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第五章 破滅へのカウントダウン

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70/98

いない?

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

「拓海さん、またあそこのパスタが食べたいな」

 花瓶の花を取り替えていたところで、ベッドに横たわる麗子がそう口を開いた。

 とはいえ、彼女はとても外出ができるような状態ではなかった。衰弱は、目に見えて加速していた。

「麗子、無理はしないほうがいいよ。それに、窓際の席を断られたこと、覚えてるだろ? もうあの店には行きたくないな」

「だいじょうぶよ。もう彼女、いないから」

「え!?」

 麗子の言葉に戦慄が走る。——()()()

 拓海はおそるおそる聞き返した。

「……そ、それって、どういう意味?」

 麗子は何でもないという風に首を横に振った。

「ううん。ただ何となく、そんな気がしただけ。深い意味はないわ」

「そう……」

 拓海は気を取り直すと麗子に言った。

「パスタだけど、今度テイクアウトできないか聞いてみるよ」


    *  *  *


「一名様ですか?」

 拓海が店に入ると、小柄で丸みを帯びたウェイトレスが声をかけてきた。とても愛想が良く、ベージュのエプロンがとてもよく似合っている。

 パスタのテイクアウトはできるか聞くと、ウェイトレスは心底申し訳なさそうな表情で答えた。

「お客様、パスタのテイクアウトはやってないんですよぉ。でも、タルトならできますよ」

「じゃあ、タルトをもらおうかな」

 拓海はショーケースに並ぶ色とりどりのタルトに目を向けた。

 実のところ、テイクアウトの可否など電話で確認すれば済む話だ。だが、拓海にはどうしても他に確認したいことがあったのだ。

 拓海は広々とした店内に視線を向けた。くまなく探すが、やはり麗子が言った通り、例の店員は見当たらなかった。ただ、今日は休みか、もしくは休憩中かもしれない。また飲食店は離職率が高いから、すでに辞めた可能性もある。

 だが、麗子の口調は確信に充ちていた。彼女が店にクレームを入れて辞めさせたのだろうか? もしそうなら、いないことを知っていた理由も納得がいく。むしろ、そうであってほしいと願った。その程度なら、金持ちのわがままで済まされるからだ。しかし、麗子のあの言い方は、女の身に深刻な何かが起こったのではないかと予感させた。

 拓海は適当に選んだタルトをテイクアウトした。

「ありがとうございました。またお越しくださいませ」

 愛想のいい小柄なウェイトレスが、明るい声で送り出してくれた。前回のウェイトレスとは大違いだった。


    *  *  *


「麗子、残念だけどパスタはテイクアウトできなかったよ。代わりにタルトを買ってきたんだ」

 拓海はそう言って、タルトの入った箱をかかげた。例のウェイトレスがいなかった件はあえて触れない。

 ベッドに横たわる麗子は弱々しく首を横に振った。

「ごめんなさい、まったく食欲がないの……。悪いけど、メイドさんたちにでもあげてくれる?」

「わかった。そうするよ」

「本当にごめんなさい」

「いや、気にすることないさ」

 拓海はベッドの端に腰掛けると、彼女の髪を優しくなでた。かつては艶やかだった髪が、今ではだいぶ痩せ細ってパサついている。女性としての魅力は以前と比べて半減している。顔を寄せると、彼女の口臭が鼻をつく。それはまるで死臭にも思えた。

「拓海さん……。もうわたし、長くないと思うの……」

 麗子がか細い声を漏らす。

「そんなこと、冗談でも言うもんじゃないよ」

「冗談なものですか……。もうすぐわたし、パパのところに行くんだと思う……」

「麗子、そんな弱気になっちゃダメだ。もっと気をしっかり持って」

「拓海さん……。わたしが死んでも、わたしのこと忘れないでね……」

 涙を流す麗子の手を取り、拓海は力強く言った。

「君は死なない。ぼくが保証する。ぼくが絶対に死なせやしないよ」


       *  *  *


 寝室を出てすぐに、ペルシャ猫のサクラがじゃれついてきた。

 拓海が腰を落としてサクラの頭をなでていると、沢尻が姿を見せた。その瞬間、サクラは怯えたように拓海の背後に隠れた。沢尻が苦笑する。サクラに限らず、彼はどんな動物からも好かれないような気がした。

 沢尻は、自分の主人が病に伏せっているというのに、相変わらず感情の読めない表情をしている。彼らしいといえば彼らしいが、人間味が感じられないだけに不気味でもあった。

「どうですか? お嬢様のご様子は」

 その問いかけに、拓海はわざと落胆した様子を装って答えた。

「相変わらずだよ。まったく改善の兆しもない」

「そうですか……」

 沢尻も落胆したような表情を見せたが、それはどこか人工的な感じがした。

 拓海はサクラを抱きながら、去っていく沢尻の背中を見つめた。

「ほんと、つかみどころのない男だな……」

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