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[完結]【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第五章 破滅へのカウントダウン

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本性 ②

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

 拓海は新調した服に身を包んだ麗子とともにレストランに入った。コーヒーで汚れた服はショップで引き取ってもらった。

 白を基調としたカフェ風のレストランは、天井がとても高く、大きな窓ガラスからは自然光がたっぷりと降り注いでいた。広い店内は各テーブルがゆったりと配置され、窓ガラスの向こう側には緑が見える。

 圧倒的に女性客が多かった。みな落ち着いた装いで、リラックスした表情でランチを楽しんでいる。店内はまるで、セレブの社交場のような雰囲気が漂っていた。それも当然だろう。一人分のランチが四、五千円もするのだから、おのずと経済的に余裕のある者しか集まらない。

 入店してすぐに、背の高い女性店員がやって来た。タイトな黒いニットを着ていて胸の形が強調されている。拓海たちは彼女に中央の席に案内された。しかし、麗子は窓際の席を好むため、拓海は窓際に一つだけ空いている席を見つけて店員に言った。

「あそこがいいんだけど」

「いえ、ここでお願いします」

 店員の有無を言わさぬ口調に、拓海は怒りで顔がこわばった。ふと麗子に顔を向けると、彼女の目に火花のような光が一瞬だけ散ったのを見て震え上がった。コーヒーの一件もあった今、これ以上彼女の機嫌を損ねたくなかった。拓海は引き下がることなく店員に食い下がった。

「でも、窓際の席、空いてるよね?」

「そうですけど、この席でお願いします」

 目の前の女性店員は、自分の決定を覆されるのが我慢ならないタイプのようだ。引くことを知らず、客と対立してでも自分の意思を通そうとする。こういうタイプの人間は珍しくないが接客業には向いていない。それでも、こちらは何も理不尽な要求をしているわけではない。なぜ、空いている窓際の席に座れないのか、納得のいく説明がなければ素直に従いたくなかった。

 ところが、驚いたことに、麗子が案内された席に素直に腰を下ろしたのだ。

「麗子……」

「拓海さん、この席でいいじゃない。わがまま言っちゃ悪いわ」

「だけど……」

 納得しかねていると、麗子はニコッと笑い、店員から受け取ったメニューに視線を落とした。

 店員が去ると、拓海は愚痴をこぼした。

「何なんだよ、あの子。窓際の席が空いてるっていうのにおかしいじゃないか。やっぱり店長にでも言って変えてもらおうよ」

「いいわよ、この席で。彼女、きっと少し機嫌が悪かったのよ」

 さも気にしていない風に言うが、麗子の目に怒りの火花が散ったのは間違いなかった。女性店員への苛立ちは残っていたが、正直これ以上麗子と議論するのも怖かったので、拓海はこの話題から離れることにした。もし、さっきのような目をされたらと思うと背筋が凍りそうになる。きっと、あの女性店員も、麗子の眼光をとらえていたなら素直に窓際の席へ案内したに違いない。

 しばらくして、注文した二人分のパスタが運ばれてきた。

 食事中、会話はほとんどなかった。何度か話しかけたが会話は続かず、麗子は曖昧な笑みを返すだけですぐに表情をなくした。整った顔立ちゆえに、無表情になると、よりいっそう怖さが際立つ。おかげで、おいしいはずのパスタも味気なく感じられた。

 ここ最近、拓海は麗子に対して得体の知れない恐怖を感じていた。衰弱していくにつれ、彼女の本性が露わになっていくような気がしてならなかった。

 とはいえ、この緊張もあと少しで終わりを告げる。あと数か月もすれば、麗子はこの世を去る。今が正念場だった。

 麗子はパスタを半分ほど残して食べるのをやめ、デザートを注文した。用意されたタルトが目の前に置かれ、彼女はフォークを使って少しずつ口に運んでいく。

「拓海さん?」

 食後のコーヒーを飲んでいたところで突然声がかかった。気を抜いていたため、拓海はびくりとした。自然と身構えてしまう。

「……な、何?」

「ちょっと言っておきたいことがあって」

 その低い声のトーンに、拓海の胸に不安が広がる。

「……何、言っておきたいことって?」

「あのね、拓海さん。わたしがこんなだから、拓海さんもいろいろフラストレーションが溜まってると思うの」

「そんなことないよ」

 拓海は強い口調で否定した。

「いいのよ。全部わかってるんだから」

 わかってる? 何をわかってるというのだ? 一瞬、計画がばれているのではないかと不安がよぎる。

「わたし、そんな嫉妬深いほうじゃないと思うの。だから、拓海さんに親しい女友だちがいても構わないと思ってる。わたし以外の女性と仲良くしちゃだめなんて言うつもりはないわ。でもね、拓海さん。わたしが生きてる間だけは、わたしのことだけを見ててほしいの。お願いだから、わたしが生きてる間だけは絶対に浮気なんてしないで」

 予期せぬ言葉に、拓海は声を失った。麗子の瞳は疑念に充ちている。この瞬間、確信した。彼女は女の影を察しているのだ。

 直感が答えを告げる。リョウが告げ口をしたのだ!

 先日、リョウが劇団を辞めた。そのタイミングで麗子がこんなことを言い出すのは偶然とは思えない。おそらく、リョウが金と引き換えに情報を売ったのだ。女の影を疑っていなければ、わざわざ面と向かって浮気をするなとは言わないはず。だが、まだ逃げ道はある。ホテルに入るところを見られたといった、決定的証拠は何一つないのだから。

 拓海は動揺を抑え込むと、声が震えぬよう注意しながら口を開いた。

「約束する。絶対に浮気なんてしないよ」

「よかった。約束よ」

 麗子は微笑むと、何事もなかったかのように再びタルトを口に運び始めた。いつもの彼女に戻っていた。拓海はほっと胸をなで下ろした。

 だが、心の奥では別の計画を練っていた。麗子の件が一段落したら、次はリョウに制裁を下すつもりだった。

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