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[完結]【猟奇的サイコスリラー】イミテーション  作者: てっぺーさま
第五章 破滅へのカウントダウン

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62/98

沢尻の実力 ①

【悪魔も聖書を引用できる——】


衝撃のラスト!

あなたはきっと騙される!!

 数日ほど前から、拓海は麗子と寝室を別にしていた。彼女からの提案だった。弱っている姿を見られたくないという理由からだ。

 正直、拓海にとっては好都合だった。好きでもない相手といっしょに過ごすことほど苦痛な時間はない。その証拠に、寝室を別にしてからは眠りが深くなり、悪夢に悩まされることもなくなった。

 拓海は花を携え、麗子の寝室に顔を出した。

「麗子」

 呼びかけると、ベッドに横たわる麗子が弱々しい笑みを向けてきた。

 衰弱は着実に進行していた。頬はこけ、病的な青白さが目立つ。左腕につながれた点滴が、悲壮感をよりいっそう際立たせている。

 拓海は取り繕った笑みを浮かべながら寝室の花を替えた。今日はピンクのガーベラだ。良き夫を演出するために、毎朝近所の花屋に足を運んでいた。

 麗子はピンクのガーベラを見て笑顔を見せた。

「毎日ありがとう。今日のお花もとっても素敵ね」

 彼女の胸元では、ペルシャ猫のサクラが気持ちよさげに喉を鳴らしていた。

 拓海はベッド脇の椅子に腰を下ろして軽い雑談を交わす。やがて、彼女が突然押し黙ったかと思うと、表情を曇らせて悲痛な声を漏らした。

「……拓海さん。わたし、もうダメかも」

 拓海は彼女の手を両手で優しく包み込んだ。

「麗子、弱気になっちゃだめだ。(やまい)は気からって言うだろ」

「でも、先生も原因がわからないって言うし、それにママも若くして亡くなってる。前にも言ったけど、わたしの母方は短命の家系なの……」

「遺伝的な要因はわからないけど、今は医療も進歩してるし、前向きに考えるべきだよ」

「わたしだってそうしたい。でも全然よくなる気配もないし、あなたの前で弱気な態度は見せたくないけど、もうわたし、泣くことしかできない……」

「いいよ。気が済むまで泣けばいい。辛いときは無理に笑わなくていい。ぼくの前で強がる必要なんてない。泣きたければ思いっきり泣けばいい」

「……拓海さん、本当に優しいのね。わたしが死んだら、すぐにいい人を見つけてね」

「何をバカなことを言ってるんだ。だいじょうぶ、絶対に良くなるから」

「だといいけど……」

 ここで麗子が激しく咳き込んだ。驚いたサクラがベッドから飛び降りる。

 拓海は苦しむ彼女の背中を優しくさすった。辛そうな咳はしばらく続き、そんな姿を間近で見て、拓海は本気で同情した。死んでほしいと願ってはいたが、決して苦しんでほしいわけではなかった。

 拓海はグラスに水を注いだ。

「ほら、少し飲んで」

 麗子はグラスを受け取り、水を少し喉に流し込んだ。

「……ありがとう。少し落ち着いたわ」

「よかった」

 拓海が床に目をやると、退避していたサクラが足元にまとわりついてきていた。顎下を撫でてやると、サクラは嬉しそうに喉を鳴らし始めた。

「ほんと、サクラは拓海さんによく懐いてるわね。人見知りで、パパや沢尻さんにも懐かなかったのに」

 拓海は優雅な毛並みのペルシャ猫を抱き上げると麗子の胸元に戻した。

「ところで拓海さん、舞台のほうはどう?」

「今はそれどころじゃないだろ。君が回復するまでは、ずっとそばにいるよ」

 拓海がそう答えると、麗子は悲しげな表情を浮かべた。

「そんなこと言わないで。わたしはあなたの重荷になりたくないの」

「でも……」

「お願い、舞台に打ち込んで。わたしは舞台に情熱を注ぐあなたが好きなんだから」

「わかったよ。君がそう言うなら」

 麗子が弱々しい笑みを浮かべ、疲れ果てたように目を閉じた。

 拓海は残り少なくなっていたガラス製の水差しを手にして立ち上がる。

「新しい水、入れてくるよ」

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