第84話 下積み冒険者は蟻の襲撃を受ける
それは皆がこの避難移動やときおりある魔物の襲撃に慣れ始め、ギルドがアインスに向けて先触れでだし要請をだしていた応援ともうそろそろ合流できるのではないかと心に緩みが出始めた4日目の朝にやって来た。
その時私は移動を続けながら使っていた【気配探知】に魔物が引っ掛かったのを感じた。魔物の方向は後方、つまり開拓のあった方からである。
始めは探知範囲に入ったのは1体だと思った。しかしどんどんその数が増えてくる。
慌ててドワ子に確認する。
「これはとうとう来たかもしれませんね」
ドワ子も普段あまり見られない深刻そうな顔で頷いて、集まった冒険者に指示を出す。
「もうすぐ応援と合流できそうだから最低限の護衛をつけて住民を先に行かせて私たち冒険者でここに留まって足止め。後ろには一歩も通さない」
今回の魔物の群れがもし蟻の本隊なら魔物が途絶えるのはかなりの時間を要するにだろうし、冒険者だけで止められるかさえわからない。住民を先に逃がすという判断は当然であろう。
ドワ子が住民の中で足の早い男に先頭のメガネへと伝令に行かせる。魔物と交戦している内に最低限の護衛を残し応援を寄越してくれるだろう。
「皆は足を止めずに早く行って!」
ドワ子は住民たちを急かして先に行かせる。
住民たちの姿が見えれば私たちが追い込まれたとしても逃げることができない。アインスからの応援と合流し、一刻も早く逃げ切ってもらいたい。
そうしている間に魔物が姿を表す。
やはり蟻だ。
足止め班の冒険者たち、師匠やマスターは大丈夫だろうか、そう思うが今はそれどころではない。
頭を切り替え戦闘に備える。
冒険者で横に並び、蟻を通さないように隊列を組む。
ドワ子が真ん中で指示を出し、私もその横に並ぶ。
ドワ子を横目で見ながらマスターとの最後の会話を思い出し、最悪ドワ子をかばってでも逃がさねばと思ってるとドワ子が感づいたのか私の脛を蹴ってくる。
「人の心配より自分の心配、私はレジーよりも強いし、ランクも上」
「痛いですよ。はぁ、わかりました。じゃあマスターたちに心配かけないように頑張りましょう」
ドワ子が満足そうに頷き、互いに蟻に目を向ける。
・ジャイアントアント
レベル4
・ジャイアントアント
レベル4
・ジャイアントアント……
レベル5……
始めはFランク相当のジャイアントアントからだ。
今は蟻の隊列もポツポツしたもので途切れがあるからいいが、もしこれが軍隊のように行列になったらと思うと怖くなってくる。
少しでも数を減らして時間を稼ぐ。
アインスへの移動4日目はまだ始まったばかりだ。




