第82話 下積み冒険者は本気を出す
前からホブゴブリンが向かってくる。今度は槍を持っているランサータイプのようだ。
日本には剣道三倍段という考え方がある。
素手で太刀を持つものには3倍上の段が勝つには必要というものだ。その中に薙刀に勝つには2倍の剣道の段が必要という考え方もある。
しかし、その考えが常に正しいわけではない。武器には状況によって得手不得手があり、その実力が常に出せるわけではないからだ。
私がしなければいけないことは自分が有利で相手が不利な状況を作ることである。
間合いの広い槍でどっしりと待ち構えられるとやりづらいが今回は私が待ち受ける側だ。刀を左手だけで持ち、腰を落としてホブゴブリンを待つ。
槍の間合いである中距離を潰して、刀の間合いに詰める。それが私の勝利条件だ。
槍は突撃、突くことに特化している。薙刀やハルバードなど刃があるものなら切り払うことも可能だが、今回はオーソドックスな突槍、払われたとしても穂先以外なら棒で叩かれるのと同じだ。気を付けるのは突くことにつきるだろう。
ゴブリンランサーが穂先を下に向け走ってきた。
直前で腕を引き槍で突くつもりだろうがそうはいかない。
体の後ろに隠した右手でナイフを持ち狙いもそこそこにホブゴブリンに向けて投げる。
ダメージにならなくてもいい、牽制になればいいのだ。
ゴブリンランサーは前進途中に急に目の前にナイフが飛んできて慌てて槍でそれを弾く。
私はもちろんその槍で払った隙を逃すはずもなくランサーゴブリンの目の前まで間合いを詰めていた。
「ギャギャ!」
「悪いけど隙をつかせてもらうよ」
【躯体活性】からの【一閃】でランサーゴブリンがナイフを防ぐために払いあげていた無防備な両腕を斬る。
「ギャー!」
ランサーゴブリンは片腕を切り落とされ、もう片腕も深い傷を負い、槍を落とし悲鳴をあげる。
もう決まったようなものだが、こいつらの執念は甘く見てはいけない。前にも痛い目をみている。
返す刀でランサーゴブリンのふくらはぎを斬って距離をとる。
もうランサーゴブリンは死に体だ。
さらに万全を期するため背後から切りかかり止めをさした。




