第66話 下積み冒険者は投擲を練習する
投擲の練習を始めた私を遠巻きに見ていたマスターだが一段落したところで近づいてきて投げナイフについて教えてくれた。
本来刃物の投擲には3種類投げ方があるらしい。
回転をかけることなく真っ直ぐなげる直投法、腕を振りかぶり刃が後ろを向いた状態から半回転だけさせ刃を突き立てる半回転投法、半回転投法よりも回転数をあげてなげる回転投法、前者ほど刃を当てやすく、後者ほど威力が高くなるらしい。
難易度をとるか威力をとるかといったところであろう。
私はマスターから話を聞いたあと再び的と向き合い説明を受けた3種の投げ方を練習する。
結果、私は半回転投法を選択することにした。直投では威力が乗らず、回転投では上手く刺さらないのだ。今後はこれで練習していこうと決意する。
5メートル先の丸太に向き合い腰のベルトに手を伸ばす。ナイフを手に取り、振りかぶって投げる。結果を確かめることなく木刀に手をかけ重心を落としながら丸太との距離を詰める。
カン
ナイフは無事丸太に刺さり、丸太は目の前だ。立ち止まることがないよう、できるだけ自然に移動から攻撃に移る。
抜刀からの抜き胴、そこからさらに上段へ、袈裟切りに続ける。
これが今の私の精一杯といったところだろう。息を漏らしながら残心を解き、木刀を納め後ろに下がる。
まだまだだなと振り返っていると後方から気のない拍手が聞こえた。
いつの間にか師匠が見ていたらしい。
師匠やマスターにくらべたらつたない自身の技に拍手されたことが恥ずかしい。
「そんなに恥ずかしがることはないわよ、レジュメは持っている技術でできることをしっかり見据えられているわよ。レジュメは自分の長所と短所をわかっている。強くなってきたというより巧くなってきたわね」
「ありがとうございます」
最近よく師匠に褒められる。素直にうれしいのだがこうも増えると何らかの原因があるのではないかと思ってしまう。
「それに比べてあの連中は戦い方もだだゴリ押しで装備と人数を揃えているだけよ」
あちゃー、岩川君たちが原因か、まぁ、師匠も思ってないことは褒めないだろうから私も成長しているのだろうと納得する。
「そうだ。レジュメ、森の奥でキラーアントの巣が見つかったわ。規模はまだ不明で離れてはいるけど気を付けておきなさい」
キラーアントはジャイアントアントにそっくりだが強さが違う。ジャイアントアントはFランク相当だがキラーアントはDランク相当、しかしその生態は似かよっており間違えることなどがあるらしい。単体であれば危険度は低いが巣となると明らかにルークキラーアントやナイトキラーアントなどの上位種がいるだろうし、最悪女王種クイーンキラーアントがいる可能性がある。
クイーンキラーアントは統率個体として他のキラーアントを指揮できる他、同族全体を強化する能力すらもっているらしい。
「いや、もし見かけても手を出すわけ無いじゃないですか、まだ私はEランク冒険者ですし、死にたくないですよ」
「それはそうね、まぁ、気を付けなさい」
「わかりました」
(物騒な世の中だね)
それはなんか違うんじゃないか?




