第55話 下積み冒険者は勇者の子孫の噂を聞く
クレイドルでは魔物という目の前の脅威があり、人種の間では争いがなく、人族、獣人族、ドワーフ族、エルフ族など各種族が協力態勢にあるため貴族や平民、奴隷といった身分格差は存在せず、多少の意識の違いや職業で役割に違いがあるぐらいのものである。しかし、例外がある。それが勇者の血縁である。
別に勇者の血縁であるから権力があるというわけではないが勇者の血筋はやはり生まれもった能力が高いことが多く、スキルも有用なものが発現しやすい。また初代勇者が子孫に残した、数々の武防具があるために冒険者として成功したり、その血縁を頼りに各分野で成功したりと力を持つことが多いのである。その人格は勇者としてまっとうなものもいるが力があることで傲慢になるものも多いという。
岩川君達が開拓村で活動するようになり冒険者や店の店員、マスターなどから噂を聞くようになった。
彼はロックリバー家のしきたりで親元から送り出され冒険者になったらしく実家に戻るためにはある程度の功績をたてなければいけないらしい。どの程度の功績かはわからなかったがCランク相当のオーガではまだ不足らしく討伐を繰り返しているようだ。
来て間もないのに順調に討伐を重ねているらしい。師匠が言うにはあんなのは装備がよくて、そのおがげでレベルを上げただけよと言っていたが。
順調な討伐とは逆に住民や他の冒険者の彼らに対する評判はすごぶる悪いものであった。例えば先に目をつけていた魔物を奪われたとか客としての態度が限りなく偉そうだとか、商品に難癖をつけるだとか本当にテンプレの貴族のようなことをしているのである。
本来冒険者というのは危険度が高いため職業選択としての人気は低いが自分たちの安全を守ってくれ、有益な魔石やドロップアイテムをもたらすため歓迎されるものである。しかし彼らは例外のようであり、迷惑なので早く出ていって欲しいというのが開拓村大半の意見であった。
師匠がパーティー入りを断った件で逆恨みしているかもしれないためギルドに行く時間をずらしており、私たちは彼らには遭遇していない。
このまま平穏に過ぎてくれればいいと思わずにはいられない。
その希望が打ち砕かれるのは岩川君達が開拓村に来て1ヶ月を過ぎる頃であった。




