第53話 下積み冒険者は半年間を振り返る 魔物討伐編 下
半年間に討伐してきた魔物の中で特に今後の課題を感じたのはジャイアントスパイダーとポイズンフロッグの2種であった。
ジャイアントスパイダーは名前の通り大きな蜘蛛魔物だがFランクということで弱い部類に入る。しかし蜘蛛型の魔物というのは頑丈で粘着性のある糸を使った罠を仕掛けるため冒険者に嫌われることが多い。上位種や変異種も多く注意が必要だがジャイアントスパイダーの糸は白く目立つためまだ楽な部類に入るそうだ。
森を探索していた際に森の木々の間に張られた巨大な巣を発見した。巣にはいつからかかっているのかわからないが衰弱したゴブリンが引っ掛かっていた。
ゴブリンは無視し、辺りを索敵する。
見つけた。
木の枝葉に隠してはいるでかい蜘蛛を発見する。
(でかいな、1メートル以上あるぞ)
(普通サイズだと思うよ)
流石は異世界と思ってしまう。
・ジャイアントスパイダー
『鑑定眼』をかけると8つの複眼でこちらを確認し、木から糸を垂らしながらすーっと地面まで降りてきた。
よかった、遠距離攻撃のない私では木の上とか巣に居座られたら戦えないしな。自分のホームグランドから離れてくれるとはあまり知能は高くないのだろうと思う。
いつも通り刀を構えながら相手を待つ。
もちろん注意するのは糸だろう、しかし糸は腹部の尻先から出るはずだ。降りてきてどう攻撃してくるのだろうと思った瞬間、蜘蛛の巨体が高く跳躍し、器用に尻を向けて糸を放ち、そのままこちら飛びかかってきた。
予想していなかったので慌てて後ろに下がりながら蜘蛛の着地に合わせて刀を真横に振るう。態勢が安定してないただ振っただけの斬撃だったがジャイアントスパイダーの体は柔らかいらしく一本前足の先端をはねることができた。
ラッキーと思ったところで真横から衝撃を受けてぶっ飛ぶ。
倒れることはなかったが地面を擦って着地する。
右腕のガードの上からだったため思ったよりダメージはないが警戒を強くする。
足が長くて間合いが読みづらいな。
相手の方が間合いが長いのなら……
今回はこちらから仕掛ける。
ジャイアントスパイダーの間合いに入ると前足で攻撃してきたので屈んでかわして、さらに近付く。これでこちらの間合いだ。
しかし、そう思っていたのは私だけではなかった。複眼が私を捉え、牙で噛み付いてくる。私の予想と異なりジャイアントスパイダーは近・中・遠距離で攻撃できるオールラウンダーだったらしい。それでもFランクということは強さ事態はそこまでないのだろう。
ここでいくしかない!南無三!
蜘蛛の攻撃を真正面から反撃する。突き出してきた顔を切り上げる。
【一閃】
蜘蛛の8つの複眼が4つずつに別れていった。
そのあと安堵の息をついていると蜘蛛の巣が崩壊し、ゴブリンが襲ってきたことに驚いた。
ディクト魔物図鑑
No.6
ジャイアントスパイダー Fランク
特徴
体長1.5m、体高0.5m
体色は茶色の巨大な蜘蛛型の魔物、糸に粘着性があり、巣や罠をつくる知能はあるが狡猾さは低い模様、近距離では牙、中距離で長い足、遠距離で糸で攻撃してくるが能力事態は低めである。
レベル 不明
タイプ テクニックタイプ
特殊技
『糸』……ゴブリン程度なら身動きをとれなくする粘着性のある糸を放つ、放出口は臀部にあるため射線に注意が必要
『噛みつき』……近距離にて牙を浸かって攻撃してくる。毒を持つかは今のところ不明
耐性・弱点
体は柔く、物理に弱い
出現エリア
第3開拓村北方森表層、草原
ポイズンフロッグは森のなかにあった水場、濁り具合から水深はわからないが沼としておこう、沼に生息していた。 沼を発見し、近づいてみると蛙の鳴き声が聞こえ、確認すると何匹かの蛙が沼から頭を出しているのを確認することができた。
ポイズンフロッグは前情報でFランク相当であることはわかっていたので近くにいた蛙に『鑑定眼』をかける。
・ポイズンフロッグ
(見た目は大きな蛙だが毒を持ってるだろうな。近づきたくはないが私には遠距離攻撃がない)
(無い袖は触れないね)
ディクトは難しい言葉を知っているな。
でかい蛙が沼から出て来て、ぴょんぴょん近づいてくるが途中で止まる。この動きはもしかしてと思うと、蛙が口を開いて毒液を飛ばしてくる。
ポイズンスライムの時の同様だとジグザグに横移動をしながらポイズンフロッグとの距離を詰める。
間合いに入る手前で一旦止まり、ポイズンフロッグの攻撃を待ち構える。
来た!
ポイズンフロッグの毒液に合わせ回避、近づいて斬る。
袈裟からの横薙の連撃が決まり、良しと満足していたら真横から毒液を浴びる。
気が付かなかったが近くの泥に潜り込んで隠れていたらしい。
早く解毒させなくてはとは思いつつも伏兵との距離は近かったため攻撃を優先する。
【一閃】 左薙
【一閃】 切り上げ
【一閃】 袈裟斬り
アーツを連発することで手早く伏兵も倒し、慌てて魔石を回収してその場を離れる。
辺りを確認して腰を降ろし、解毒薬をあおる。初めて毒を受けたが思ったより痛みはなかった。これで生命力を削られると思えば逆に怖いかなとも思う。
師匠に焦りすぎだと言われ、うなだれるしかなかった。聞いてみるとFランク相当の魔物の毒は痛みも特にはないが強い毒は激痛が走るらしい、受けたくない。
ディクト魔物図鑑
No.7
ポイズンフロッグ Fランク
特徴
体長0.8m、体高0.3m
緑色の体色をした蛙型の魔物、毒を持ち、遠距離攻撃を繰り返す
レベル 不明
タイプ テクニックタイプ
特殊技
『毒液』……中距離から口に含んだ毒液を放ってくる。
耐性・弱点
不明
出現エリア
第3開拓村北方森表層、草原
今後の課題として浮き彫りとなったのは攻撃手段の乏しさだ。今の私では近づいて斬ることしかできない。今後遠距離攻撃もできるようにならなくては。
『刀術』と『操気術』の外剄を鍛えれば斬撃を飛ばすことなどできるようになるらしいが正直私は外剄の習得が上手くいっていない。適正が部類に入るのかもしれない。
もしかしたら外剄の習得ができたらいいし、いずれどうにかしないとなとその時は先送りにした。
私は今後もこういう毎日が続くのだろうとその時は思っていた。
この世界が人種が劣勢だということを知りながらも甘くみていたのだろう。それを身をもって知ることになる。




