第37話 駆け出し冒険者は気持ちに区切りをつける
一夜開けて大分頭がすっきりした。
振り返ってみて私が悩んだのは2つだ。
ゴブリンが人に似ているからと殺すことに忌避感を覚えたこと、それと身近な知人の死により冒険者の命の軽さを実感したことだ。
しかし、前者は生存競争で殺されないためには殺さなくてはならないし、後者に関しては前からわかっていて実感していなかっただけだ。これは通過儀礼だった。一度経験しておかねばならなかっただろう。一晩寝たおかげで気分はすっきりした。
これでまた戦えるだろう。正直まだゴブリンを殺したら気分が悪くなるだろうが慣れていくしかないし、あんなに簡単に冒険者は死ぬのかもしれない、それなら今までも以上に鍛え続けるしかない。
(悪いな、心配かけた。もう大丈夫だ)
(無理はしないほうがいいよ)
(いや、昨日は鍛錬もサボってしまったしな。これ以上足踏みするわけにはいかないさ)
ディクトとそんなやり取りをして部屋の扉を開く。
森に向かって北上していると草原に緑の人影を発見する。本当に草原でも出現するらしい。周りに他の魔物がいないか見渡して単独であることを確認する。
今回のゴブリンは棍棒を持っておらず腰布と履いているだけだ。もしかしたら前回のゴブリンが持っていた棍棒は森にちょうどいい木の枝が落ちていたか、木の枝を加工したものかもしれない。
草原には武器になるものがないのだろう。どういった攻撃をしてくるかはわからないが攻撃力は下がったと思っていいかもしれない。
(よし、仕掛けるぞ)
上位種の可能性を考慮して『鑑定眼』をかける。
・ゴブリン
鑑定をかけられたのに気づき辺りを見回して私を発見、声をあげこちらに向かって走ってくる。
(やらなきゃ、やられるんだから気をつけて)
(わかってる)
ゴブリンは私に近づき右腕を振り上げる。その手は握られておらず指を曲げ爪を立てた状態だ。
(素手ゴブリンの攻撃方法は『引っ掻き』だ。相変わらず振り下ろしみたいだがな)
ギャッと声をあげ、 ゴブリンが腕を振り下ろし、爪で攻撃してくる。
タイミングはやはり読みやすいので一歩前に出て左の革籠手でゴブリンの爪を避け、腕の部分を受け止める。
ゴッと鈍い音がして左腕に衝撃を受けるが思ったほどではない。ゴブリンは攻撃後で隙だらけだ。
よし、攻撃だ。そう思った瞬間、昨日のことが頭をよぎる。
痛がるゴブリン、飛び散る返り血、手に残る感触。
鬱な空気に囚われそうになるが奥歯を噛みしめ耐える。
思い出せ! ギルは魔物に殺されたんだ。
魔物は殺す!
目を見開き、隙だらけのゴブリンの腹部を斬る。
ゴブリンが腹を斬られ悲鳴をあげてうつむいたところをサイドに回り込みながら両手で剣を握りしめ、振り下ろす。
ゴブリンの首を切断し、頭部が地面に転がり、血しぶきが辺りに舞った。




