第32話 駆け出し冒険者はリア充を騙る
ジャイアントラットの討伐で痛い目をみて、軽めの鍛錬を終えてギルドの宿泊所に戻ったので討伐の成果である魔石をディクトに与えようと思う。
午前中の討伐で手に入った魔石はジャイアントラットの魔石が5つだ。前回と同じようにベッドの上で魔石を1つずつ吸収させていく。
5つ目の魔石を吸収させた時だった。
ディクトの魔石がわずかに光を放った。
(ディクトどうした?もしかしてレベルが上がったのか?)
(レベルが上がったみたいだよ。アナウンスが入った。ちょっと見ててね)
膝の上に乗せていたディクトがゆっくり浮上していく。
(おー! やったじゃないか、『浮遊』スキルが手に入ったんだな)
(ありがとう、レジュメのおかげで動けるようになったよ)
ディクトがぱたぱたとベッドの周回を繰り返す。
これでディクトもブックホルダー卒業か、右腰に差しているのが当たり前になっていたため少し寂しく思った。
しかし、そこで相棒から反対の声がかかる。
(ホルダーは外さないでよ。そこが僕の居場所なんだから。それにまだゆっくりしか移動できないしね)
ディクトがもし人型だったら恋人とのやりとりのようにみえるのではないか。私もリア充か、などと冗談めいたことを考えた後今回の結果について考える。
今回ディクトがレベルが上がりスキルを覚えた。聞くと魔物はそういうものらしい。では覚えるスキルは種族で同じなのかといえばそうでもないらしい。同じようなスキルを獲得する傾向にあ るが、経験、性格、思考など様々な条件により取得スキルは変化するらしく、同様に同じスキルであっても習得するアーツが変化したりするものらしい。
主人のわがままではあるが私としては援護系のスキルを得て欲しいものである。
それとディクトのレベルが上がるのが思ったより早かった。私はまだレベルが上がってないので、もともとディクトに経験値のようなものがたまっていたか、人が魔物を倒すより魔物が魔石を吸収する方が経験値効率がいいのかどちらかだろうか、もし後者ならやはり人種より魔物の方が有利だと思わざろうえない。
魔物の優位性は考えても仕方ないがディクトにレベルを置いていかれたくはないと真剣に悩んでしまった。
そろそろ寝ようと思い、寝る前にトイレに行こうと部屋を出る。部屋を出ると廊下で初めて会う冒険者と鉢合わせする。
若そうだ。年の頃は十代中頃くらいだろう。まだ冒険者になって間もないのか真新しい槍と革鎧を装備している。ちなみに金髪イケメン君だ。
「こんばんわ、私はFランクのレジュメといいます」
私が自己紹介をすると返してくれる。
「俺はギル。俺もFランクだ。今日この村に来たばっかりなんだ。よろしくな」
聞くと金髪イケメン君は幼なじみ(女)とアインスで冒険者登録をしてすぐにFランクに昇格することが出来たらしいのだがアインス周辺は人の勢力圏のため魔物は発生が少なく、その為に開拓村まで出てきたらしい。私とは違い本物のリア充だ。
お互い頑張ろうといって別れたがすぐに強くなっていき私なんか忘れていくだろうなと思いながら部屋に戻った。




