閑話 酒場のマスター グスタフ
俺の名はグスタフ 42才のドワーフだ。
俺には家族が1人いる娘のリンだ。
3年前に娘が開拓村に派遣されることになり馴染みのギルドマスターに頼みギルド酒場のマスター件教官として一緒に派遣してもらえるように根回しをしてもらった。
夫婦で冒険者をしていてBランクまでかけ上がったが魔物との戦いで妻を失った。その時に誓った。何があっても娘を守ると。
娘1人を残すわけにはいかず現役を退いた。
娘の子育てはそれまでのどんな戦いよりも難しいものだった。慣れない手つきで家事をこなし、ギルドで教官として金を稼ぎ、娘に振り回されながらも充実した日々を送っていた。
娘が12の時に冒険者になりたいと言い出した。細工が好きだったので職人になるものだとばかり思って油断した。
危険だと反対したが俺と妻の頑固さを引き継いだ娘は強引に押しきり冒険者となった。
4年でDランクまで上がり、そこで受付になってくれて心底安心した。初心者講習を尋常じゃなく厳しくしたり、ギルドマスターに受付としてスカウトするようにけしかけたのはいい思い出である。
今は開拓村で昼間に教官、夜に酒場のマスターをしている。
最近の冒険者は初心者講習を終わらせると訓練場に寄り付かなくなる軟弱者ばかりだ。確かに魔物を倒せばレベルが上がるし、魔物との戦闘で経験も得られるだろう。しかし、鍛練とともにしていくことで身体を作り変え、より高みを目指して行けるのだ。
第一今の若い奴らは鍛練が必要ないと言えるほど日々戦いに明け暮れているわけではないし、筋肉が足りない。鍛練が足りない。だからこの開拓村ではCランクまで行くのが精一杯なのだろう。
つまり登録したばかりの新人以外講習は受けに来ないため昼間は暇をもてあましていた。
最近面白い新人が入ってきた。全く才能のない、身体の細い、商人のような男だ。冒険者とは思えぬほど礼儀正しいし、よく読み書きをしている。
始めは一切戦闘スキルを得られなかった不憫なやつだと思いながら教えてやっていたのだが、不思議な男で戦ったことはないというのに普通の奴らとは違う剣技を使う。不馴れなことは丸分かりだったが振ることはできていた。実際、見習い冒険者など子供の頃から我流で滅茶苦茶な振りをしてきたために変な癖が付いている。それをまずなくさせることから始めるのだが、この男には必要なかった。
それに、魔力が一切ないと言う。そんな奴を実際に見たことがなかったが、冒険者ギルドの創設者がそうであったと聞いたことがあった。慰めは逆効果と、魔力が伸びない可能性が高いことを教えて、強さがそれだけではないことを教えた。あと今後のためにと頭の上がらない先輩冒険者に手紙を出した。彼女ならこの男を助けてくれるだろう。
それからというものその男は貪欲に情報を集め、身体を鍛え、技を磨いた。そして先日ようやく念願の戦闘スキルを手に入れてFランクに昇格した。
この男がここまで来るだけでも大変な道のりだっただろう、今後どうなっていくか楽しみだ。それにこの男はおそらく……。
今の悩みはこの男も講習が終わって訓練場に来なくなるのかどうか少し不安である。気になるのが少し前から左腰に剣を差し、右腰に本を差している。本当に意味がわからない。今度聞いてみるとしよう。
あと、娘と仲がいいようだが娘はやらん!




