第21話 見習い冒険者はこの世界について調べる
ディクトとともに強くなると誓った日から、まずはギルドの資料室でディクトに閲覧許可が必要ない資料を調べ、コピーもとっておいて貰った。その他、開拓村の村人や商人、先輩冒険者などから話を聞き、歴史、常識、スキル、魔物についての知識を手にすることができた。
神により作られた世界クレイドル、それがこの世界の名前らしい。
この世界で神は大地や海を創り、生命を創りだした。かつて人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族などの人種が独自の言語や文化を持ち種族別に集い、干渉することこそなかったが、争うこともなく平和に生活をしていた。しかし、神と敵対していた邪神が自身の魔力から魔物を産み出してしまい事態は一変する。
魔物は高い身体能力を持ち様々な特性を持つうえに、邪神の魔力から自然に発現し数を増やしていく。各種族が武器を作り、各々立ち向かったが魔物の発生量に討伐が間に合うことはなく、一気に魔物は大地に広がってしまった。
神は人種に魔物に対抗するためレベル、スキル、ジョブそして魔法に与えた。こうして人種は魔物に対抗できるようになった。
すると邪神は魔物にもレベルやスキル、魔法を与え、さらには進化することさえ出来るようになってしまい、またもや劣勢に追い込まれる。
しかし、およそ300年前に神が召喚した勇者たちが現れ、滅亡寸前であった各種族を集結して魔物を押し返し、人種勢力の基礎を築いたとされる。現在は人種勢力圏はまだまだ劣勢で、街や村の外には魔物が出現する状態である。魔物の勢力圏では邪神の魔力が濃くなり、より強い魔物ほど魔力の濃い奥地にいるらしい。
人種全体共通の魔物という敵がいるため、現在でも種族間での争いや戦争はなく、力を合わせ対抗している状況だ。
これがこの世界の歴史である。
正直、胡散臭い。クレイドルという名前も揺り籠など何かの実験的な意図を感じるし、神と邪神が同一存在でマッチポンプをしているように感じてならない。折角種族を創ったのに干渉しないから面白くない、敵にと魔物を創り、パワーバランスが崩れる度にテコ入れしているように思える。
まぁ、どう感じたとしても私は神と関わるようなことはあるはずがないので関係はない。
歴史の中で勇者たちの功績が凄まじい。
勇者たちは各種族ごとで点在していた村落を4ヶ所に集結させて堅牢な防壁を作成して都市を築いたらしい。
こうして人族の集落を中心としてアインス、獣人族を中心としてツヴァイ、エルフ族を中心としてドライ、ドワーフ族を中心としてフィーアを築く。これが始まりの4都市と呼ばれる現在もある城塞都市である。そして現在では都市の周りに多数の開拓村が作られ、いくつかの開拓村は人口を増やして町へと発展を遂げたものもあるらしい。ちなみにアインスでは既に第1、第2開拓村がそれぞれの特色から農業の町アグリス、迷宮の町ラビリスとして発展し、他にいくつかの開拓村が作られている。
始まりの4都市がつくられる際、意志疎通をとり、文化を共有させるために共通の言語、貨幣、暦や度量衡の単位に統一した。
言語が日本語、通貨をダラとし大体日本円と同じ程度の相場にしたらしい。前からそうじゃないかとが勇者が日本人であったことが証明された。開拓村で日本語が通じて神様に感謝したが感謝する相手は神ではなく勇者だったらしい。
1年が365日、1週間が7日(火、水、風、土、光、闇、無)、長さの単位がメートル、重さがグラム、体積がリットル、また、1000倍がキロ、1/1000がミリなどである。
また魔物から取れる魔石を用いた魔道具の作成など勇者たちの活躍は多岐に渡っているようである。
勇者たちのチートっぷりに嫉妬を覚えるが召喚された勇者たちが下地を作ってくれたおかげで今があるし、冒険者ギルドを非営利団体として真っ当に作ってくれたのは感謝の念が尽きない。
功績に関する勇者の情報はいろいろと出てくるものの、人物像や何のスキルを持っていたかなどはあまり載っていなかった。
勇者たちがどうやって強くなったのかなどの情報は手に入らなかった。初代ギルドマスターが魔力器を持たず不遇であったと記述があった程度である。今後はアインスや他の都市などでも情報を集めていこう。
新たに知った常識として生物にレベルがあるように武器やアイテムにはレア度があるらしい。基本的にレア度の高い物ほど良質な物が多いらしい。ちなみにレア度は七段階評価で下の方からコモン(並)、アンコモン(並より上)。レア(珍品)、アーティファクト(遺物)、エンシャントアーティファクト(古代遺物)、レジェンダリーアーティファクト(伝説級遺物)、ミソロジーアーティファクト(神話級遺物)となるらしいが上3つはまず見かけることなどないらしい。
スキルについての資料は思ったよりも詳しく書かれていなかった。確認されているスキルの一覧や大まかな説明はあったがレベル毎の詳細な解説、取得条件などは載っていない。しかし、これについては導入部の前書きに理由が書かれており、先程あげたのようなことが記載されたら冒険者のスキルの取得に偏りが出来やすくなり、スキルの多様性が失われていく可能性があるからだと書かれていた。確かに言っていることは理解できる。しかし、この世界は魔物優勢な世界なのだから少しでも有用なスキルを多くの冒険者が持つべきじゃないかと私は思った。閲覧許可が必要な資料には書かれているのかもしれないが私では見ることが出来ない。
ちなみに気になったスキルはいくつかあったが、一覧のなかに『刀術』があるのが目に入り、もしかしたらと思ってしまう。その他にも目を引くスキルがあった『操気術』というスキルである。地球で魔力がなかったために私は魔力を持たないが気は地球でも確認されていたはずだ、インチキじみたものも多かったがあれだけ浸透していたものが全て嘘だとは思えない。
それからは丹田を意識して、色々な呼吸法や、瞑想を試しているが未だに結果は出ていない。
あと冒険者に教えてもらったこととして戦闘スキルはレベルがあがることによってアーツと呼ばれる技を覚え、魔法もアーツに含まれることがわかった。またスキルのレベルの上限は5らしく、スキルによっては上位スキルやユニークスキルへと進化するものもあるらしい。教えてくれた冒険者にもなんで知らないんだって顔をされたので子供でも知っていることでだからこそドワ子もマスターも教えてくれなかったのだと思う。
魔物の資料に関してはこちらも残念なものだった。挿し絵は描写力が足りていないし、名前と大まかな特徴、推奨ランクなどは書いてあるが、その魔物のレベル帯や、所持スキルや耐性、弱点などは書かれていない。つまり圧倒的情報不足である。
これには私もディクトも落胆した。私やディクトの中のモンスターデータベースが美化されていたらしく、納得ができず。私たちでいずれ書き換えてやると夢物語のような目標をたてることにした。




