第19話 見習い冒険者は自身と向き合う
私には生命力はあるが魔力がない。つまり生命器は備えているが魔力器は備えていないということだ。そこで問題になるのが、レベル上がることで器官の蓄積量が増えるということだ。つまり、レベルが上がっても私は魔力が上がらないかもしれない。
マスターは続ける
「残酷なことを言うがお前は魔力が上がらない可能性が高い。それにお前は魔力がないことで魔法は使えないし、身体強化をするための『魔力操作』といった魔力を使うスキルも使えないだろう」
はっきりと断言され、目の前が真っ暗になった気がした。
これはあんまりだ。せっかく異世界転移したのに魔法は使えない。スキルも制限がある。チートをくれとは言わないがせめて普通の人が持ってるくらいの力は持たせてくれよ。凡人どころか完全な落ちこぼれじゃねぇか。
「魔力がないということは武器の1つがないのと同じだ。諦めるのなら早めに諦めろ。だがそれでも諦めないというのなら鍛えるしかない! 魔法が使えないなら、剣を使えばいい。身体強化が使えないなら、体を鍛えればいい。強くなりたいなら方法はひとつではない」
マスターは諦めることも視野にいれつつも私を鼓舞してくれる。しかし私はそんなマスターを心の底から信じることが出来ずに心が折れかかって諦めそうになる。
「諦めなければ強くなれる。それにな、前例もある。初代ギルドマスターだ。彼は勇者たちと一緒に召喚されたそうだが、神からの加護が貰えずにお前と同様に魔力が使えず、役立たず扱いされていたと伝えられている。しかし、後の彼の戦闘力は勇者たちと比べても劣ることはなく、ギルドの設立などの功績では勇者をまさるほどだったらしい」
やはり勇者はいたか、それに召喚に神の加護か、羨ましい限りだな。それにその初代ギルドマスターは巻き込まれじゃないだろうか、でも私にとって先駆者がいるという事実は大いに力を貰った。魔力を持たずに成り上がったという彼のことをもっと知りたいと思った。
私も魔力がなくても強くなる方法があるかもしれない。諦めるのなら足掻いた後でもいいだろう。とりあえずできる限りはやってみよう。そう決意しマスターに目線を戻す。
「よし、目に力が戻ったな。彼を目標にするのはいい、だが先を見すぎず、まずは剣に集中しろ。魔力を用いない戦闘法で知り合いにひとつ心当たりがある。連絡はとってみるからお前は鍛練に励め」
「はい!」
今日の講習はそこで終わりだった。
マスターはギルドに戻っていった。
私は熱の冷めぬうちに訓練場のランニングを始める。体力も精神も鍛えるのだ。御飯代を節約しようとしていたことも考えを改める。身体を鍛えるにはよく食べて、よく運動しなければいけない。1時間ほど走り、筋トレを行う。最後に柔軟をして、筋肉をほぐし、スジを伸ばした。
辺りは薄暗くなってきていた。
今日も本当に色々なことがあった。村での散策にディクトとの契約、そして初心者講習、魔力は使えないかも知れないが前例はあるんだ鍛え続けるしかない、そう思いながら井戸に立て掛けてあるタライに水をくみ、体を拭いて新しい服に着替える。着ていた服を洗い、水をきって腰の革袋に入れ、ギルドへと戻った。
酒場で食事を取り部屋へと戻る。洗濯物をロープに干し、本とベッドの上で一冊の本と向かい合う。
ディクトとは従魔契約を結んでいるし、言われたことをしっかり記録してくれているし、組み手の時も声で危険を教え、援護してくれた。私が異世界人であることを打ち明けて今後について1人と1冊で考えよう。




