閑話 冒険者ギルドマスター クローム 下
開拓村からアインスへの避難、この中で冒険者は住民たちを護衛しながら移動していくわけであるがそこで浮き彫りになったのが冒険者の教育の不足だ。
護衛の冒険者の中に住民の安全を確保することなく魔物に向かうものや、護衛対象の住民に向かって傲慢な態度をとるものなどが出始めたのである。
本来護衛依頼というのは都市や村の間を移動する商人などが依頼するためそれを受ける冒険者というのはそれなりに実力があり、信頼がおけるものなのが基本だ。
商人たちも素人に毛がはえたぐらいの者や粗暴な物を雇いたくはないだろう。
つまり今回住民の護衛にあたっているDランク以下の冒険者には護衛依頼の経験をしたことがないものが大半であり、その手順さえ弁えていないものが多かった。
これに関しては護衛依頼も増え始めるCランクへの昇格試験で学ばさせるため今までは低位冒険者たちに指導してこなかったのが大きいだろう。
現在冒険者になるには登録を行い、教官との戦闘試験で実力を示せば直ぐに冒険者として活動ができてしまう。
この登録の方法や昇格も見直さなくてはならないかもしれない。そう考えながら涎を溢しながらこちらに走ってくるゴブリンに火球を飛ばし燃やす。
とりあえずは問題行動をとったものについては厳罰も考慮に入れておこうと頭の中でリストアップしていく。
移動を開始して4日、とうとう最後尾に蟻が追いついてきた。
それから最低限の護衛以外の冒険者を残し住民を急かせる。
住民の疲労はピークに達しているがもう休ませる余裕はない。
私ももしものために先頭での指揮を他のギルド職員に任せて最後尾へとまわる。蟻たちがここまでくるのも時間の問題であろう。せめてアインスからの応援が間に合えばいいのだが……
事前に連絡に行かせたものをほぼ不眠不休で行かせたはずなのでそろそろ応援と合流できていてもおかしくないはずである。
連絡が伝わっていればアインスギルド本部やアインス都市防衛隊が動くはずだ。
アインスギルド本部には高位冒険者も多くいるであろうし、防衛隊は都市に迫る危機に対応する常備軍である。
何か政治的な判断で遅れていなければよいがと嫌な想像が膨らむ。
それから少し、数人の冒険者が合流してきた。
彼らが言うには今までとは全然違う規模の蟻がやって来たらしい。
まるで黒波のようであったと。
それを聞く私や他の冒険者の顔はこわばっていたに違いない。
私も命を懸けて住民を守らねばならないと覚悟を決める。
その後人数を減らしたギルド職員のリン、冒険者のレジュメたちが住民たちへと合流してくるのであった。




