閑話 冒険者ギルドマスター クローム 上
私の名前はクローム、アインス第三開拓村のしがないギルドマスターである。
元はBランクの魔法でギルドからスカウトされギルド職員に魔法を教える教官をやっていた。
ギルドマスターとはいっても書類仕事が多い。そのため冒険者自体学がないものも多いし、高位冒険者などは自分で稼げることもありあまりギルドマスターになりたがるものはいない。またアインスでならともかく開拓村など生活の利便性もよくないため不人気でそこに私があてがわれたのである。
魔物の勢力圏に面する開拓村ではあるが村の周辺は魔力が薄いこともあって想定以上に強い魔物が現れることもなく特に問題のない日が続いていた。
しかし、ある日勇者の子孫であるとかいう馬鹿な冒険者が下位種の指揮能力をもったキラーアントクイーンに手を出したことで事態が一変した。
奴等は増援が現れて敵わないとみるとクイーンを傷つけた武器や体についた匂いが蟻をおびき寄せるとも知らず逃げ出したらしい。
ギルドマスターとしては問題ではあるが奴等がそこで殺されててくれればと思わずにはいられなかった。
報告がもたらされて迅速会議を行い第三開拓村の放棄を決定した。
直ちにAランク冒険者のツバキどのが出向きクイーンを討伐できたとしても既に蟻たちに出された命令を止めることはできないうえ、いくらツバキ殿が強いといっても1人で蟻の大群を相手取ることはできないという判断からである。
ツバキ殿には冒険者を率いて開拓村に残り足止めをしてもらい、足止めが限界に達して防衛線が突破されたおりにはその時にこれ以上に増援が来ないようにクイーンの討伐を依頼した。
もし無事に避難がすみ、その後冒険者たちの手によって蟻たちが討伐されたとしても甚大な被害を受けるであろう開拓村を再建できるか、住民は戻ってくれるかなど問題は山のようにある。
しかしまずは被害を最小限に抑えてアインスへと避難しなければならない。
私も足止めに入り時間を稼ぎたかったがどうしても住民の避難には責任者が必要で私がなるしか他なかった。
せめて職員にサブマスターや戦闘教官がまだいれば違っていたのだろうが。
アインス冒険者ギルド本部が人件費をけちるせいである。
いざ決定を周知し、直ぐに避難を開始したのだが問題は多かった。
アインスへと向けた避難移動であるが通常よりも時間がかかることが想定された。
魔物と戦うことのできない住民が馬車にも乗れず慣れない道を歩くのだそれだけでも時間がかかる。
さらには普段ならあまり魔物が出て来ない街道であってもスタンピードの影響か頻度は多いし、複数体で現れることも多く、度重なる魔物の襲撃は避難の足を止めさせ、私は頭を悩ませるのであった。




