もふもふ少女の薬を求めて
「財布よし、定期よし、水分食料よし……」
なんだか遠足の準備みたいだ。財布や定期はともかく水分とか食料が……
普通出かけるのにこんなものはいらないのだけれど……今回は違う。
「出かけるっつうか旅だよな」
つぶやいてみやさんから貰った地図を見る。
目的地はすこし遠い森の奥。えぞきちさんの葬式が行われた場所の近く、つまりは化狸が住むところらしい。
詳しい場所はみやさんも行ったことがないらしいからわからないが……近くの狸に聞けばいいだろう。
「さ、出発だ」
リュックを背負って立ち上がる……と同時に机に足をぶつける。
思わずしゃがむと机から落ちたミカンが目に入った。かなみさんから貰ったものだ。
「……よし」
俺はそのミカンをリュックに入れ、改めて立ち上がる。
「……ってえ」
今度はリュックがドアノブに引っかかってこけそうになる。
大丈夫か、俺……
*
「に、人間だぁ!」
森の奥に入った瞬間、視界が煙で埋まり狸たちが人間の姿になる。何人かは見覚えがあるな……
「俺ですよ! かなみさんの先輩!」
「ああ、えぞきちの葬式に来てた人間か」
理解されると同時にまた視界が煙で埋まる。
「で、一人でなにをしにきたのさ」
「その、かなみさんが……」
事情を説明すると、何匹かの狸たちが森のさらに奥を指差す。
「それならあっちだな、大きい人間風の家だからわかりやすいと思うぞ」
「なるほど……そこにいけばいいんですね」
「おう、表札があってな、確か……」
「……は?」
狸が口にしたのは……俺の知っている、できれば聞きたくない苗字だった……




