もふもふ少女に会ってない
特別教室への移動中、隣で歩いている伸二につぶやくような声で話しかける。
「なあ、俺はどうしたらいいんだろうな」
「……しらん」
一瞬だけこっちを見てそう言い放った後、伸二は俺に教科書を渡してトイレに入っていく。
落としそうになった教科書を持ち直して階段の方向を見る。体育から帰ってきた二年生が騒ぎながら上がってきている。
その列の中に彼女はいない。
「待ち人は来ない……か」
「なんだその口調は。最近ヘンだぞ、お前」
いつの間にか戻ってきていた伸二に突っ込まれる。
「どうせ野代さんの事だろうけど……結局告白してないんだろ?」
「まあ……してないけど」
明里さんの策略によって擬似告白のような形になったあの事件は結局うやむやのままで終わっている。
それどころか….…
「かなみさんに会ってない……」
「は?」
あの事件の後、かなみさんはえぞきちさんの親族として色々あるという理由で数日休むと言っていた。まあ、それは普通だ。
しかし、あれからもう二週間程過ぎている。それなのに……俺は一度もかなみさんと会っていない。
会っていないどころか見てもいないのだ。
そんな旨を伸二に言った。
「俺、避けられてるのかなぁ……」
「は?」
数分ぶり、本日二度目の威圧的な呆れ言葉を投げられた俺は混乱する。
今の会話におかしいところなんてあったか?
「まさかお前が知らないとは思わなかった……」
「な、なんなんだよ」
かなみさんの姿がない理由……考えるが心当たりはない。
「由美から聞いたんだがな……野代さん、あれから風邪をひいて休んでるらしい」
「えっ……」
それは……大変な事じゃないか。




