もふもふ少女の恋
「じゃあまた明日」
「はい、さよならです」
先輩との関係はあれから元通り、むしろより仲良くなったかも。
その頃から私は先輩といると何だかドキドキしていた。
その前も予兆はあったけどあの時先輩に助けられて以降ハッキリと出ている。
その気持ちが恋心だと気づいたのは少し暑くなってきた、春の終わりの頃だった。
そう、私は先輩に恋をしているのだ。
そんなある日、家に帰るとお母さんが電話で話していた。
「そう……あ、ちょうど帰って来たわ」
受話器を渡されて電話の相手に挨拶、誰だろう?
「はい、もしもし」
『おう、かなみ。 元気にしてるかー?』
「あ、お父さん」
お父さんは今、私達以外の狸と人間のハーフや化け狸などを探しに旅をしている。
お父さんが言うにはまだ分かって無い事が多いらしく、情報交換の相手を作りたいらしいのだ。
「お父さん久しぶり、どうしたの?」
今日は私の誕生日でも無いし……何で?
『かなみよ、聞いて驚け!』
その前フリはハードル高いよ。
『実はな……』
*
「……え?」
お父さんの言葉に素直に驚いた。え? 今なんて?
『とりあえず夏には連れて帰るから。 じゃ、また』
お母さんに受話器を渡して自分の部屋に入る。
カバンを置いてベッドに倒れこむ。
やっと恋心を確信できた所なのに……本当に
「どうしよう」
こんがらがった頭で、私は小さく呟いた。
第一章『もふもふ少女は狸である』終
第二章につづく




