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3 アサヒの武器

 いつも通りルーグが食事を届けに向かうと、すでにアサヒは来ていてナナシとあーだこーだと会話をしていた。


 ルーグが来たことで話し合いは中断することになり、ナナシは開いていた本を閉じた。


「えらいねぇ、ルーグ君は。おじさん、いい子にはご褒美あげちゃおう」


 そう言ってアサヒは巾着から小さなカラフルな包みをいくつか取り出すとルーグの手のひらをとってその上に置いた。


「え、あ、ありがとうございます」


 美味しいと勧められルーグは1つだけ包みを開けた。飴に見えたがチョコレートらしい。


 美味しそうに食べるルーグを見てアサヒはニコニコとして巾着に手を伸ばし一瞬困ったように笑ってルーグの方を見て言った。ルーグにあげたもので終わりだったらしい。


「気に入ったならこんど買ってくるよ」

「でも……」

「俺のもよろしく〜」


 ちょっと躊躇うルーグの発言に被せるようにナナシが喋る。こっち(ナナシ)は遠慮がなさすぎるがアサヒは気にしてないどころか元気な子供を見る目をしている。


「頑張る子にはさ、ご褒美も必要だよね」

「だから子供扱いすんなっての」

「それはほら、おじさん歳上だから。おじさんの特権ってね」


 ため息を吐いたナナシはそれ以上言うのをやめた。どうやら言っても聞かないのでナナシの方が折れたらしい。


「さてと、俺は1度作ってみるとすっか。しばらく工房は立ち入り禁止な。ちょいと危険物使うから」

「分かった」

「はーい。じゃ、よろしくね」


 立ち上がったナナシはその場で屈伸をしてから机上に置いた走り書きのメモを数枚持って工房に入って行った。


 ルーグはもうと言いながら、ナナシが散らかしたままにしている机の上を片付け始める。

 放っておいてもいいのだがルーグの性格上、放置したままもできず結果としていつも片付けをやっている。


「ルーグ君がお世話してるみたいだね」

「なんか、そのままにしてられなくて……」


 そう言ってルーグは困ったように笑った。

 ナナシも別に全く片付けないわけじゃなく、最低限生活に困らない人に見せられる程度はやるのだが、ついついルーグは手を出してしまうらしい。


「まー、その方がいいのかもしれないね」


 楽しげに笑うアサヒに訳が分からないとルーグは首を傾げ、やはりアサヒは楽しそうにわらった。

 アサヒもナナシと親しい人たちと同じで、ナナシに対し危うさを感じているのでそばに誰かがいた方が安心だと思っている。


「さてと、ヒマになっちゃったし、おじさんの話し相手でもしれくれないかな?」


 ルーグもやることがないので了承した。

 家に帰るつもりもなく、今日も夕方頃までいるつもりだったから。


「アサヒさん、は……どんな武器使ってるんですか?」

「ん、おじさんの武器?」


 こくりとルーグは頷いた。

 アサヒが剣を使っているのは分かるのだが、それ以外は全く分からない。防具らしい防具も身につけていないし、ルーグの知る冒険者とはあまりにも出で立ちが違う。


職人街(ここ)でも珍しいからねぇ。ナナシ君もよく知ってるものだと思うよ」


 遠い異国の地のものだけに職人街でも知識はあれどあまり扱える職人はいなかった。ナナシは昔知り合いに教わったとかで出来るようだったが。


 アサヒは剣を手に持つと鞘から抜いて刀身をルーグに見せる。


「カタナって言うんだよ。おじさんの故郷じゃ剣っていうとみんなこれ」

「カタナ……」


 一目でフィリーたちの扱うものとは違うものだと分かった。

 剣は直線ではなく曲線を描いていて、まるで濡れているかのような刀身は波のようの模様が浮かんでいた。


「手入れしてるところが少ないから困るんだけど、やっぱり馴染んでるからね。手放せないのよ」

「ずっとこのカタナなんですか」

「いーや、こいつは2代目。賜ったものだからさ、しっかり手入れはしときたいんだけどね」


 鞘に戻した刀を大事に抱えたアサヒは何かを懐かしむように目を細めた。

 それだけで、ルーグには賜ったと言う意味は分からずとも大切なものなのだとは感じ取れた。なんとなく、立場のある人物から贈られというのも。


「ま、でも困るのは(こっち)よりこれなんだけど」

「これ、たまにナナシが作ってるやつだ。確か、クナイ?」


 アサヒが取り出したものを見てルーグが反応する。こっちは暇だと言うナナシがたまに作っているので見たことがある。


 正解と言いながらアサヒはルーグに使い方を説明する。

 投げることもあれば掘るのに使ったり、岩場を登るのに使ったりと融通のきく道具のようだ。ナナシからは聞いたことのない話が多い。


「色々使えて便利なんだけど、ここに来ないと補充が難しくてね」

「これも珍しいから」


 異国の地のものは余程の物好きでもなければ知識はあっても作ることもない。需要がないのに作っても仕方がない。


「そう、だからナナシ君のおかげで助かってるよ。武器以外のことも」


 とアサヒが視線を向けた先、机の上にはどこから引っ張り出して来たのか分からない見慣れないティーポットと、取っ手がない背の高いコップが置かれている。


 ルーグが店に来てからずっと気にはなっていたものだ。

 それを感じ取ったアサヒは自分の故郷のお茶を淹れる道具だと説明してくれる。


「お茶もそうなんだよ。おじさん、故郷に戻れないから嬉しいものだよ」


 しみじみと言ったアサヒは魔法でお湯を沸かすとルーグ用の新しい湯のみと自分の湯のみに交互にお茶を注いでいく。その手つきは手馴れている。


 それからナナシが工房から出てくるまでの間、ルーグはアサヒの故郷の話を聞いていたのだが、文化の違いにルーグは驚いていた。

アサヒの装備


防具は装備しておらず、刀が攻守一体の武器。


腰につけた巾着袋はマジックバックになっていて、刀以外の必要なものは全てその中に入っている。

かなり容量は大きいのだがナナシと違いなんでもかんでも入れてあるわけではないようだ。

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