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2 助けて欲しいであります

 案内された部屋にナナシが入るなり飛びついて来たのはウサギの獣人で、ナナシはリジーと呼んだ。


 陽だまりのようなオレンジの毛色の、まだ幼く感じる1人の獣人。


 初めて見る獣人にルーグは大層驚きまじまじとリジーを見ていて、アサヒも物珍しげにしていた。


 職人街にそのまま入られると騒ぎになってしまうと判断され、衛兵が領主の家に送ったらしい。

 今までは姿を隠して歩いていたのだが、何かがあって荷物をなくし職人街(ここ)までやってきたという。


「やっぱり知り合いだったか」


 獣人に泣きつかれたナナシを見てウォルバーグがそう言った。


 とりあえずナナシの知り合いなのではと呼んでみたらしい。リジーはアワアワとしていて会話も難しそうだったのこともある。


 ナナシはよく分からないパイプを持っているので知り合いでもおかしくはない、1番可能性があると思ったと。


「そーかよ」


 ナナシは素っ気ない返事をしながら、ひとまずリジーに離れるように声をかける。

 泣きつかれるのはいいのだが、このままだと話が進まない。


「色々聞きたいことはあるが置くとして。助けて欲しいってのは?」

「そうであります!レオンさんが捕まったのであります!」


 ワタワタとしながらリジーが口にした言葉に、ナナシは驚いて目を見開いた。どうやらレオンも知り合いのようだ。


「レオンが?お前が捕まるのなら分かっけど」

「うぅ、レオンさんが逃がしてくれたので何も言えないであります」


 言い返すことができないリジーはしゅんとする。

 自分でも分かっているのだ。足手まといにしかなっていないことは。


「で、その場所はどこだよ?」

「……場所でありますか?」


 キョトンとしたリジーはしばらく無言を貫き、血の気が引いた顔をする。人間なら真っ青になっていることだろう。


 つまり、肝心な場所がどこか分からない。助けに行く以前の問題である。


 額に手を当てたナナシはどうにか場所の特定が出来ないかとリジーの移動した場所を聞くのだが、職人街に辿りつくのに必死でろくに覚えていないらしい。


「肝心なこと覚えてねぇじゃねぇかよ」

「ごめんなさいであります。レオンさんについてくばかりでありましたのでさっぱりであります」


 ナナシは頭を抱えたくなるのを堪え、代わりに出されて茶を一気に飲み干した。


 捕まった獣人の扱いのことも考えればしらみ潰しに調べるような時間はないはずだ。おそらくオークションにかけられる。


 ウォルバーグや領主もどうしたものかと考えていると、静かになった空気をぶち壊すようにアサヒが口を開いた。


「お嬢さん、覚えてる景色とかってない?おじさん、色んな場所に行ったことあるから力になれるかも」

「そうでありますね。……青い家が多かったであります」


 他にはとリジーは記憶を手繰り思い出したことを伝えていく。

 レオンが捕まった時のことが余程頭に焼き付いているのかかなりの情報量だった。


「なるほど。それならアズライトかな?」


 用意された王国の地図の職人街を指さしたアサヒはアズライトまで指を移動させ、リジーからレオンが捕まる前の話を聞いていく。


 無理のない行程で行くならアサヒの予測で概ねおかしくはないだろう。


「アズライトまで行くとしてだ。なーんでお前がこの国にいるんだ?」

「お使いを頼まれたのであります。重要なものだから国王様に直接お渡しするようにと」


 リジーは服の内ポケットから封筒を取り出し胸を張ってナナシに問いに答えた。


 この場で言っていいのかと言う問題もあるのだが、リジーはちょっと頭が弱いので仕方がない。たぶん、足が速いのと真っ直ぐな性格で任されたのだろう。


「……レオン救出が先だな」

「その方がいいかもねぇ。おじさんもお嬢さん1人は心配よ」


 ナナシがボソリと呟いた。

 リジー1人を先に城に連れて行ってもいいのだが色々と不安が残る。いや、不安しかないのでやめておく。


 勝手に話が進んでいくのはいいのだが、初めて見る獣人がリジーだけに領主やウォルバーグには少々の不安と疑問が残る。

 王に会いに行くと言うのであればなおさらの。


「鍛冶師よ、レオンというのはしっかりしている者なのか」

「元は王の護衛やってたって話だかんな。礼節は弁えてっぞ」


 ナナシがレオンに評価を領主に伝えるとリジーもそうでありますと元気よく言って、いかに頼りになるかとレオンの自慢話を始める。

 その大抵がリジーの失敗談になっているのだが、本人は気がついていないらしい。


「ならばいい。それと彼女がここにいる間は我が家の客人として扱おう」

「サンキュー。あと、諸々の連絡も頼んだわ」

「そのつもりだ」


 色々と話がまとまり、ひとまず解散となりナナシが店に戻るというのでアサヒも装備のメンテナンスのために一緒に店に戻った。


 領主の家に残されることになったリジーは、人間で唯一の顔見知りで安心出来るナナシについて行きたいと目が訴えていたが却下された。


 普段されない高貴な家の客人扱いにアタフタとしていたが、食事に出された新鮮なキャベツとにんじんと大層ご満悦だったとか。

獣人ウサギ


主食は葉物野菜。

あくまでも人なので一応雑食。しかし、草以外はあまり食べる気にならないという。


リジーは足の速いウサギの獣人の中でも特に速いようだ。




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