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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
フィリー編
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8 狙われるのは知ってるけど

「つまり、責任は取るから好きにしてもいいってこと?」


 職人街の大通りを歩きながら、ルーグはナナシの言ったことを自分なりに解釈して尋ねた。


 フィリーの家からの返答は概ねそんな感じだった。

 貴族になったと言っても元は普通の村娘なのでそこまで政略結婚などにこだわる必要もなく、その上家族が溺愛しているのでフィリーが望まない限りは結婚もさせるつもりがないらしい。


 今回の件についてというか、今フィリーの近くにいる保護者足り得るのがナナシなわけで一任するということだ。

 養女にする前までの数年ナナシがフィリーを育てていたこともあるので任せるに値すると判断されましたされている。


「そーいうことだな。特に今回は貴族絡みだかんな、侯爵ってのは大きなアドバンテージってな」

「貴族も序列があるんだもんね」


 ルーグは職人たちの序列を思い浮かべて言った。

 細かいことを抜きにすれば貴族も職人たちも序列という仕組みは大差がないので概ねそれで間違いでもない。


「ま、なんかあったらギルに押しつけりゃいいとは思ってたけどな」

「確かにギルベルトさんならどうにかなりそうな感じがするけどさ」


 貴族の身分を剥奪されているとはいっても商人としてギルベルトは顔が広くまた顔が利く。その上、国王が頼りにすることもあるほどで適任ではあるだろう。


「他にもないわけじゃないねぇけどな。マジでどうにもならねぇ時以外は使うべきじゃねぇかんな」

「レインさんとか?」


 ルーグが問いかける。

 亜人ほどではないがやはりドラゴンは信仰の対象となっている。実際に会ったからこそ分かるが、彼らは人間よりはるか高次元の存在だ。神様に近い。


「遠からずってとこだな。ん、なんだ?」


 ルーグの問いかけに全くの外れじゃないと答えるナナシの視界の端に違和感を覚え立ち止まった。


「どうしたの?」

「ルーグ、衛兵呼んできてくれ。トミーの店の脇道な。任せた」


 タッと駆けだしたナナシに対し、ルーグはさして戸惑うこともなく指示を請け負うため衛兵の詰所まで向かう。走ることはせず、少しだけ早足で。


 ナナシは自分の直感を信じて脇道を進む。

 今日は監視の目が少ないことも相まってかどうにもきな臭い感じがするのだ。


「冒険者って柄でもなさそうだな」


 行き止まりの少し開けた場所に出ると4人の男が誰かを囲んでいるのが見えた。冒険者なら同業に刃を向ける違法行為なのだが、どうにも黒づくめの服装などそうではなさそうだ。


「衛兵は呼んだし問題な――うぉ」


 堂々した独り言にすぐさまナイフが飛んで来てナナシはそれをヒョイとかわす。随分と粗野な連中だ、いきなりナイフを投げるなど。


「お頭」

「問題ない。どちらも消せばいいだけだ」


 そうすれば目撃者などいないとかリストに入っているとかと物騒な会話が目の前で繰り広げられ、ナナシはせめて聞こえないところでやってくれねぇかと突っ込みまたもナイフを投げられていた。


「物騒つーか、物騒だな。こりゃさっさと片付けねぇとな」

「我らに勝てるつもりか」

「生きて帰るにゃそれしかねぇだろ」


 何を当たり前のことをと呆れるナナシは武器を取り出すため腰につけたマジックバッグ(ポーチ)に手を突っ込むが敵がそんな隙を許してくれるわけもなく斬りかかってくる。


 ナナシを切り裂けるはずだった一撃はまるで硬いものにぶつかったように弾かれ、ナナシにダメージを与えることはなかった。


「情報集めを怠るとはド三流もいいとこだな」


 客の少ない店ではあるがナナシは街でも上位を争う鍛冶師なのだ。服はナナシが自ら作ったものではないかなり特殊なものということを差し引いても、少しくらい警戒してもいいのだが。

 まぁ、普段着の形をした防具など想像することもないだろうけども。


「だークソ、加減間違えた」


 肘でで思い切り相手の腹をどついたナナシはそう呟く。

 モンスターやドラゴン相手と違って人間相手は力任せにやるべきでないのだが、身を置いていた環境的に手加減というものをする必要がなかったせいだ。加減が掴めずにいる。


「とりま死んでなきゃいいよな」

「我らに楯突いたこと後悔させてやる」


 男たちの一斉攻撃に対し、ナナシは驚くほど冷静だった。


 ナイフを手に突撃してくる2人をかわすと頭同士をぶつけ隙を作ると、彼らを踏み台にして出方を窺う男の顔に膝蹴りをくらわせる。


 それから腹をどついた相手が起き上がってきたのですかさず魔法を使って気絶させる。男の服は燃えカス同然になっている。

 思ったより威力が高かったのか男たちよりもナナシの方が青ざめた顔をしていた。本人は弱く撃ったつもりなのだが上手くいかなかったらしい。


「やべ〜。いや、こいつらに被せればいいだけだよな」


 そうと決まれば逃げられる前にとナナシはマジックバッグから紫色をした乾燥している葉を取り出すと少量の魔力を込めた。


 すると男たちに異変が起きる。

 まるで幻でも見ているかのように動き回っていて、ナナシは彼らを面倒そうに気絶させツタで縛り、襲われていた人間に声をかけた。


「大丈――ロイか」

「はい。ありがとうございます、鍛冶師さん」


 狙われていたのはロイだったようだ。

 ナナシはロイにこうなった原因について説明を始め、大まかな理由を話し終えた頃ルーグが衛兵を連れてやってきた。


「呼んできたよ!」

「お、サンキュー。さてと、事情を話に行きますかね」


 事件に関わったとして聴取されるだろうし、1人では4人も運べないだろうということだ。後で呼ばれて行くのも面倒なのだ。


 ルーグを1人にするわけにもいかないのでナナシたちにルーグもついて行くことになった。

衛兵


街の安全を守るのが仕事といいつつ、冒険者の多いこの街では彼らが戦うことは少なく牢屋まで運ぶことが多い。


主な仕事は職人街を出入りする人たちの管理と、職人たちが客と喧嘩した際の仲裁である。


地味な感じではあるが、街が円滑に回っているのは彼らの力も大きい。


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