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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
フィリー編
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7 不穏な視線

「邪魔をするよ」


 そう言って店に入ってきたのは今日も今日とて溢れ出る優雅さと高貴さを隠しもせず垂れ流しているギルベルトだ。


「あー、お前か」

「いつもながらにつれないようだ」


 あまり歓迎されていないふうもどこ吹く風で、ギルベルトはナナシ流の歓迎だと笑って席につく。


 今日はまだ朝早いためルーグは来ておらず、ナナシは茶を淹れるのも面倒だと常温の水だけを出す。

 ギルベルトに言わせればナナシの淹れ方は雑すぎるのでその方がいいだろう。全部が下手なわけでもないのだが。


「察しはついていると思うがロイ君のことをオーウェンからも聞いて、職人街(ここ)で何かが起きそうだと感じたものでね」


 そのため急ぎの仕事を片付けてここに来たという。


「おーそうかよ。そいつロイだけじゃねぇんだよ」

「ふむ、やはりフィリー君が狙いか」


 コネリー子爵がフィリーを狙っているというのは貴族界隈ではけっこう有名だったようだ。

 一時期かなり付きまとっていたらしく、フィリーの実家から接近禁止令を出されるほどだったとギルベルト。


「大人しく聞き入れるわけもないと思っていたが、フィリー君が家を出るのを待っていただけのようだね」

「つまりロイは話を受けずに正解ってわけだ」

「様子を探るためだったのか、はたまたフィリー君に近づく相手が許せなかったのかは分からないが

 そのようだ」


 つーことはと言ってナナシはコツコツと机を指で叩いた。


「ロイどころか、ルーグもヤベェな。しばらく来ねぇように言っとくか」

「いや、君のそばの方が安全ではないかい。少なくともこの街で1番安全な場所は思うがね」


 ギルベルトの見立てでは冒険者を含め職人街の誰よりもナナシは強い。囲まれてもそうそうに負けることはないだろうし、底知れぬ何かをギルベルトはナナシに感じている。


「1人で歩かれるよかマシか。行きは腕輪(あれ)があるかんな」

「どのみち不快な視線を感じる今、彼1人で歩くのは危険かもしれないね」


 中央部分なら人目も多いがナナシの鍛冶屋は人がほぼ歩かない場所にある。誘拐なんてことになった場合、ルーグは逃げる術がない。

 腕輪も掴まれる前なら使えるがそうでなければ、そいつらごと移動してしまう。


「大将にも伝えとくか。詳細も分かったことだしな」

「その方が良いだろうね」


 ナナシがざっくりとだけ状況を書いた手紙をウォルバーグに送ったところでルーグがやってきた。


「おはよう。ギルベルトさんもおはようございます」

「ああ、おはよう」


 ルーグは机上をみてすぐにお茶を淹れに向かう。面倒くさがってナナシはやらなかったのだろうくらいは予測はつく。


「どうぞ」

「ありがとう。ルーグ君のが淹れるのは美味しからね」

「ありがとうございます!」


 ギルベルトに褒められたルーグは紅茶を淹れるのが下手なナナシにフフンと自慢げな顔を見せた。レインのところから戻ってからルーグを美味しい淹れ方を勉強している。


 しかしナナシはそれどころではないようであまり反応は返ってこなかった。


「それよかルーグ、お前しばらく1人になるなよ」

「もしかしてあの貴族?」


 ああとナナシが頷き、ギルベルトがどうにもこの店を監視している人間いるようだとルーグに説明をする。


 そのため、あくまで可能性ではあるがフィリーの弱点になるであろうこの店にいる人間は人質にするには美味しい人材になるだろうと。

 特にルーグは子供なので、相手としても狙いやすい。


 わずかに不安がるルーグにナナシがフォローに入れる。何か起こるとすればフィリーがいるときだろう。


「今のとこは手を出してくる様子はねぇけど、念のためな」

「う、うん。他の人は大丈夫なの?」


 念のためと言われて落ち着いたルーグは、誰とは言わずギルベルトの方をじっと見た。身を守る術は持っているとは言うが、それほど強いわけでもないはずだ。


「なに、捕まりさえしなければどうとでもなる」

「ま、こいつとオーウェンにゃ手を出せねぇだろ。相手も一生逃げる暮らしはしたくはねぇはずだかんな」


 爵位を剥奪されたと言ってもギルベルトの持つ力は大きく、ギルベルトは国王に呼び出されることも多々あるほどだ。相手が貴族であるならば余計に手を出すのはできないだろう。

 それでもこの国だけで終わるのならまだいい方なのかもしれない。


 オーウェンはモンスター学者として、ギルドを通じて世界にその名を轟かせている有名人なのである。彼のもらたした情報に救われている人間は数え切れない。

 もし故意的にオーウェンを陥れでもし、それが彼らの耳に入ったら犯人探しが始まることだろう。


「そっか、オーウェンさんって……」

「そうは見えないのが恐ろしきかな」


 世界的に見てもオーウェンほど名を知られている人物はいないだろう。それは伝説級の生物の知名度とまではいかないがそれに近く、世の中への貢献度は高い。


「つーわけで、ここに来るなら必ずあれ使えよ」

「うん。なにごともないといいんだけど」

「願いたいものだが、なにぶんご執心だからね。油断も出来ない」


 ナナシもギルベルトもひとまずは放置の方針らしい。もちろん、店や客人、それと街に害するようなら動くつもりのようだが現状なら問題はないと言う。


 まぁそれでも気がついているくらいは教えてやっておけばいいのだ。相手への警告にもなるのだから。

ギルベルトの実力


冒険者の平均値くらいの実力はあるのではないかといった感じ。

民を守れずして何が領主だという親の元手ほどきは受けており、商人として自分でも追加で習っている。


しかし、どちらかと言えば頭脳担当なので基本は戦わない。司令塔の方が向いている。


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