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9 そろそろ限界

 下位ドラゴンとの戦闘は無事に回避し、一行はさらなる奥地へと向かっていく。


 ドラゴンについては眠っていたので比較的安全に通り抜けできた。1度、ドラゴンの目が開いてこっちを見てきたときは焦ったが寝ぼけていたようでなんとかなった。


 残り半分――。

 けれどその道のりは果てしなく遠い。今までを嘲笑うかのようにモンスターも幻影も数を増していく。

 休む暇がないという風でフィリーたちの疲労は溜まっていく。


「大丈夫?鍛冶師(あいつ)に手伝っ――」

「最後までやりたい」


 休憩中ルーグが心配になってフィリーたちに声をかければ、フィリーは首を横に振ってそう返した。他のメンバーも思いは同じようでルーグが視線を動かせば全員が頷いた。


 鍛冶師に甘えたくないと言う気持ちがあるという。それに冒険者を続けるならこういう自体は起きないとも限らない。


「そっか。頑張って」

「うん。ありがとう」


 気持ちを汲んでルーグは引き下がった。

 やり切りたいと言う気持ちは分かるし、きっとフィリーたちの決意を止めることは出来ないから。


「お前らはしっかり休んどけよ」


 しかし、鍛冶師は違ったようで大きく伸びをすると立ち上がり、少しルーグたちから距離を取りナイフを構えた。


 その瞬間誰かが声を上げた。

 鍛冶師の向かった先、一体のモンスターが敵意を持ってこちらに近づいていたのが分かったからだ。


「見張りは俺がやる」

「そんなの!」

「ここまで近づかれても気づかなったのにか?」


 万全なら、いや通常時なら気がつけるはずで、どれだけ疲弊しているかが目の前に突きつけられる。

 鍛冶師が視線を巡らせるがフィリーたちとは目が合わない。合わせられない。


 そのはずだ。

 気は抜かず気は張っていたつもりだったし、周囲への警戒は怠っていなかった。なのに気配に気がつかずかなりの接近を許してしまった。

 鍛冶師がいなければきっと襲われる直前まで気づかなかっただろう。


 鍛冶師は反論出来ず俯くフィリーたちの様子に息を吐くと尊大に言い放った。


「お前らのやる気は買うけどな。俺は実家に生きた奴しか連れてく気はねぇんだよ」

「そうだね。お願いしてもいいですか」

「ちょ、じっ……か?」


 ガラドが今の自分たちでは全てをできないと素直に認め、見張りを鍛冶師にお願いする。元々1人で旅をしていただけに鍛冶師は対策なんかもよく知っている。


 任せとけと鍛冶師が言い出そうとし、シーナにそれは遮られた。


 鍛冶師を強くしてくれた人のところへとは言ったが実家とは聞いていない。フィリーも初めて知ったのか驚いて目を丸くしている。


何があっても帰れる(育ての親がいる)場所って定義するならな」

「それは実家ですね。しかし、このような場所に暮らすとは偏屈な方ですね」

「世捨て人にしたってもっとマシなところがあるでしょ」


 ボロクソに言われているが鍛冶師はケタケタと笑ってそれを否定はしなかった。好きこのんでこんな場所で暮らそうとする奴なんてそういないと。


「つーわけでお前らは休める時に休んでしっかり道を開いてくれ。俺は両手が塞がってるからな」

「うん。頑張る」


 休憩を終え、再び歩き出す。

 鍛冶師が見張りを請け負ってくれたおかげで少しだが精神的な余裕ができたフィリーたちはわずかに動きにキレが戻る。

 とはいえ、完全復活とまでは行かないのでやはりギリギリではあるのだが。


「そこを左。あとはまっすぐで、青いヤツだけ実体」

「りょーかいっ!」


 幻影が多すぎる時はシーナが魔法でそれを解除して数を減らして戦っていく。これもこの森でなんとかやっていくために模索した結果だ。

 魔法の無駄打ちは出来ないが、メリットが多いときは使っていく。


「進むスピードは早くなってきた?」

「多少はな。微々たるもんだけど、動きに無駄は減ってきたし」


 鍛冶師の背にいるルーグはフィリーたちの戦う後ろ姿を見ながら鍛冶師に尋ねる。

 初日の頃は恥ずかしさや森の雰囲気やらで口数が少なかったルーグもすっかり慣れたのか受け入れたのかは分からないが平常運転だ。


 ときに背後から迫るモンスターの対処で揺れることはあるけれど、ルーグは一切の怪我を負っていない。


「それにしても、やっぱあいつらでも攻略は難しいんだな。一体でも手こずるし」

「ん、もしかしてなにかやってる?」


 鍛冶師のもの言いに引っ掛かりを覚えたルーグはついそうこぼした。この森のモンスターの生態系についてはよく知らないがほぼ群れはみていない。

 聞こえてたらまずいと一瞬フィリーたちの方を窺った。幸い戦闘中で聞こえていないようだ。


「いーや、なにも。けどな、若い個体(知らない顔)しかみてないことに違和感はある」

「どういうこと?」

「何も知らないヤツら挑みにきてるって感じだろ。久しぶりにあいつら(群れのボス)にも会いたかったんだけどな」


 変な言い方になるが鍛冶師はこの森のモンスターとも顔見知りらしい。長年暮らしていたのだからおかしくはないが不思議な感じである。


 気が向いたらくるだろうと鍛冶師は楽しげに言っていたがルーグは笑えなかった。



下位ドラゴン


ドラゴンに似ているがれっきとしたモンスター。

一般的には見ためが近いことからドラゴンと同一視されている。


大抵は色の名前がついていて、ドラゴンのように喋ることはなく意思疎通は出来ない。とにかく凶暴。


ちなみにドラゴンの前ではドラゴンもどきと言わないとけっこう怒られるとか。

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