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8 どこまで進んだ?

「やっと今日も終わったわね」


 火を起こしながらシーナがそうこぼした。


 幻影の森に入って7日目。

 今日も苦戦を強いられながらも生き延びて、やっと少し落ち着ける。


 落ち着けると言っても、モンスターや幻影はところ構わず襲ってくるので油断は出来ない。幸い、夜行性のモンスターは少ないようでそれが救いだ。


 直前に倒したモンスターと道中見つけた果実を食材として簡素な食事が夕食だ。


 味気ないが町などにいなければ現地で調達したものが冒険者の食事というのが基本で、携帯食糧もあるが節約できそうな時はそうする。

 長い旅には食材の節約も必須なのである。


「ルーグ、お茶淹れてくれ」

「あ、うん。分かった」


 鍛冶師から渡された目の細かい網に入った茶葉を受け取ったルーグは、鍋でお湯を沸かすとお茶を淹れ始めた。


 なぜそんなものをと思うのだが、鍛冶師はルーグがいるなら日課だとか言い張り毎日茶葉をマジックバックから取り出す。


 中にはいらないだろうと思うものもあるが、厳しい冒険しているだけに一瞬でも安らげるのはありがたい。特に水に関してはかなり助かっている。


「この森に入って1週間だけど、どれくらい進んだの?」


 湯気のたつカップを鍛冶師に渡したルーグは隣に座ってそう尋ねた。


 この森に地図はなく、鍛冶師が言うには時折道が変わってしまうようで道順など役に立たないと言う。そうじゃなくても森が見せる幻によって現在地すらあやしい。


 鍛冶師はこの森の全体像を知っているようで大体の位置ならわかると言う。目的地に着くだけであれば迷わずにたどり着けると鍛冶師。感覚でわかるという。


「そうだな、3割5分とか?」

「そんなに進んでないんだね」

「半分もいってないのか」


 日々すすむ速度が遅くなっているのは分かっていたが、まさかそんなに進んでいないとはとガラドは息を吐いた。


 森の奥へと向かうたびモンスターも強くなっていて、幻影の数も増えている。今でこれだと目的地までたどり着けるか不安になってくる。


「幻影だけでもどうにか出来ればいいんだけどね」

「それが売りだからな」

「あんたはいいわよね。幻影が効かないんだから」


 八つ当たり気味にシーナが鍛冶師に言った。

 幻影を解く魔法も、強いモンスターがいる状況で持続的にかけるわけにもいかない。そんなことをすればすぐに魔力が枯渇する。


 今回の旅で知ったことがある。

 鍛冶師はどうやら稀にいる魔法耐性のある人間のようだった。それも精神干渉系の。だからモンスターの幻影もすぐに分かったらしい。


「だから教えてやってんだろ」

「そうですが、幻影と分かったところで頭は実体と判断していますからね」

「怪我はしないけど痛い」


 脳が本物だと錯覚するために攻撃されれれば痛みはあるし、防御しても衝撃はくる。結局倒さなければならず、余計な体力を消耗してしまう。

 それでも鍛冶師が見抜いて教えくれるためマシは方なのだが、完全な幻影とは思えないのだ。


「そういえば、前にオーウェンさんと来たんだよね。その時はどうだったの?」


 フィリーたちがここまで苦戦していることも踏まえ、いくら鍛冶師がこの森に慣れているとしても簡単に歩けるものだろうかと疑問がわいた。


「なるべく戦いは避ける予定だったんだが……」

「危険より学者魂が勝ったと言うことですか」


 歯切れ悪く言う鍛冶師のことばの続きをアルゼルが引き継ぎ、鍛冶師は全くその通りだとうなずいた。


 危険だと耳にタコが出来るほど言い聞かせて出発したはずなのに足を踏み入れたらこれだ。防具はしっかり上等なものを作ったが危険なことには変わりない。


「あん時きゃ入ったタインミングも悪くてな。マジでやばかったんだよ」

「あんたがそう言うなんてそうとうね」

「まぁな、この森自体そもそも普通じゃねぇかんな。色々起こんだよ」


 鍛冶師が言うように幻影を見せる植物など普通であれば生えてくることはない。おかしなものというのは例えば魔力など磁場の影響がある。

 どうやらこの森モンスターや幻影以外にも厄介なものがあるようだ。


「あ、そうだ。半分くらいんとこに下位ドラゴンがいる」

「なんでもっと……」


 早く教えてくれなかったのかアルゼルは絶望に満ちた顔をしたが、鍛冶師は代わりに他のモンスターは出てこないから安心しろと言う。


「ま、さっさとテリトリー抜ければ戦闘回避はできっから、無理して戦う必要ないぞ」

「ならいいけど」


 フィリーたちが安堵する。

 下位ドラゴンとこの森のモンスターどちらがマシかと言われても判断がつかないので、戦わず済むのならありがたい。今回の目的は討伐ではないのだから。


「そんなことより飯だ、飯」

「そうだね。明日も気が抜けないだろうし」

「しっかり食って休んどけよ」


 明日もどうにか切り抜けるだけだと、冒険者たちは出来上がったばかりの食事をかきこんだ。

魔法耐性


稀に魔法耐性が高い人間が生まれることがある。


単純に魔法攻撃が効きにくい人も入れば鍛冶師のように精神干渉系が効きにくいなど、何か1つに耐性がある。



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