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全ては鍛冶屋で起きている!  作者: メグル
技術交流編
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13 見本を

 ルーグは歓喜の声を上げながら、いつもより高い視線から勢いよく流れていく景色を見ていた。


 現在、ルーグはレオンに抱えられてナナシの店の前の長い階段を上がっていた。


 大きな身体を持つレオンがルーグを抱えるとすっぽりと収まり、揺れも少なく意外と快適な空間が出来上がる。


 レオンはガルム経由で魔力の循環異常のことを聞いていて、自分もナナシの店に行くからと鍛錬にもなるとそうなった。


 その横では自分だってルーグを運べるとでも言いたげに巨大化したミックがレオンと同じ速度で階段を上っていた。

 ただし、ミックの場合はけっこう揺れそうではあるが。


「すごい速くてびっくりした」


 階段を上りきって下ろしてもらったルーグはお礼を言いながらはしゃぐようにレオンに言った。


「ガルムやリジーの方がもっと速いぞ」

『!!』

「そうなの?」


 レオンにそう言われ驚きの声を上げるルーグ、ミックは素早さなら自分が1番速いと言いたげにしている。


 そこに玄関先が騒がしいとナナシが顔を出し、ルーグがここに来るまで経由からナナシがくるまで間のことを話す。


「ま、確かにレオンよりは速いだろうな。つっても――」

「なに?」


 途中で言葉を区切ったナナシにルーグが首を傾げながら続きを促す。


「運ぶにゃ向いてねぇかんな。運んでもらうのはやめとけよ」


 ナナシは言いながら店の中へ入るように促し、ルーグたちは店の中に入る。

 ルーグはレオンがいるのでナナシの隣に座る。


「そっかガルムさんは人間嫌いだから」

「んにゃ、そっちじゃねぇ」


 違うとナナシが手を振ると、レオンが続きを引き継ぐように口にする。


「あやつは少々荒っぽい動きをする。配達員となるにはいささか丁寧には運べぬのだ」

「そーゆーこと」

『ふむふむ』


 じゃあリジーは問えば、ナナシもレオンも2人揃ってガルムよりも問題外だと答えが返ってきた。


 足は速い。

 それは確かな事実だし、なんならガルムよりかは丁寧にものを運べる。運べるのだが――。


「リジーは一つのことしか出来ねぇかんな」

「荷物を途中で落とすことがあってな」


 リジーの場合、目的地に速くたどり着くに精一杯になると荷物を届けるを忘れていることがあり、そのせいで荷物を忘れたりどこかに落とすことがある。


 さすがに人を落とすことはないだろうが少し不安が残る。

 なにしろあのリジーだ。そういうことがあってもおかしくない。


 それはさておきと、ナナシはレオンがこの店に来た理由を尋ねる。


「オルト殿といったか、ガルムが彼から獣人(我ら)でも作りやすい防具の作り方だとメモをもらったのだが、鍛冶師殿に見本を作ってもらいたいと思ってな」


 冒険者と模擬戦をしたあと、ガルムは前鍛治長オルトに呼ばれ装備の動きに合わせた調整とともに、連合国のモンスターなどを聞かれて、そのメモを渡されたという。

 まぁガルムは拒否したかったらしいが。


 それで文面だけじゃ不安ならナナシに作ってもらえと言われたと言う。


「ふーん。なるほどな」


 ガルムが渡されたというメモを開いたナナシは内容をみて何度か頷くと、ミックに必要な材料を伝えていく。


 するとミックは承知とカードを出したあと、工房の方へ言われた素材をだしに向かった。


「あ、じゃあお湯だけ持ってくる」


 ナナシが作業を始めるとお湯を沸かせなくなるとルーグは保温出来るポットを持って奥に向かうと、お湯といくつかの茶筒を運んでくるとお茶を淹れてレオンに出す。


 それからナナシが作業を終えて飲めるようにと水出しの準備だけをしておく。


「ちょっくらやってくるか。ルーグ、店番は頼んだ」

「うん。わかった」


 2時間くらいあれば終わるということでレオンは店で待つことになった。


 待ち時間の間、ルーグがモンスターのカードゲームを取り出しレオンを誘う。

 ガルムとも一緒にやったのだが中々に白熱した。


「このようなものが」

「最近、知り合いモンスター学者さんが作ったんだ」


 だいぶ完成はしているのだが、まだ種類が少ないと試作段階のままだ。


「遊びながら覚えられるとはいいものであるな」

「うん。冒険者の知識不足が心配なんだって」


 依頼地に生息するモンスターを知らなかったり、自分たちのランク以上のモンスターの知識はなかったりと、そういったことが原因で戻ってこない冒険者も多くいる。


 勝てる力がなくとも、知識があれば上手いこと逃げるくらいは出来ることだってあるとオーウェンは言う。

 勉強は苦痛でもそれが自分の生存率を上げるのだが、新米ほどそれが分かっていない。


 レオンはカードゲームが作られた意味が分かり、静かに笑う。どこも一緒なのだと。


「連合国にも欲しいものであるな」

「持って帰ってもいいぞ。大まかなモンスターは変わらねぇだろ」


 何度目かの対戦中、レオンがそうこぼすと工房から出てきたナナシが言う。

 ついでに言えばオーウェンが大量に持って来たので問題ない。


「コースターサイズだけど、こんな感じか」

「鎖帷子とふむ、板のように見えるが」


 あのじいさん(前鍛治長)はとんでもねぇと言いながら、ナナシは鎖帷子の方を指さした。


「とりあえず鎖状にしたけどな、たぶん編み込めるぞ」


 ガルムから聞いたモンスターの特徴からここまで的確に素材を組み込めるとは、さすがにナナシも驚きを隠せない。


「そのようなことが……」


 レオンは鎖帷子の方を手にとって持つ手に力を込める。硬く思うが柔軟性があって柔らかく曲がり、金属のような光沢はあるがまるで布のようである。


 それから板の方を手に取るとかなり硬いことが分かる。大斧を振っても壊せると思うほど丈夫である。


「こっちのが向いてはいるかもな、獣人(お前ら)には。ちょっと特殊な作り方にはなるけどな」

「どんな風に作るの?」

「ただただ叩いて固めんだよ」


 固めたものを適した形に削って作ることになるので、まぁ鍛治としては特殊すぎる。

 しかし、人間よりも力があり暑さに弱い獣人には適しているのは確かだろう。


 ナナシに見本を作ってもらったレオンは礼を言って帰っていき、ルーグが2杯目の冷たいお茶をナナシに渡す。


「ナナシでも知らない技術があるんだね」

「そりゃ、鍛冶師(その道)のプロにゃ勝てねぇよ。俺には天性の発想力もねぇかんな」


 それだけ言うとナナシは冷たいお茶を一気に飲み干した。

モンスターのカードゲーム


モンスターへの知識不足を解消するべくオーウェンが作り出したもの。


今は王国に生息するモンスターを中心に作られていて、完成後は冒険者ギルドに配布してみることに決まっている。


ちなみにギルベルトは相談に乗った。

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