12 ルッツと領主
技術交流もそろそろ終わるころ、ルッツは領主の家に呼ばれていた。
この話し合いにはナナシも必要になると、付き添いも兼ねてナナシも呼ばれていた。
当然ついてくるだろうからとルーグとミックも呼ばれていて、今は隣の部屋でローワンと遊んでいる。
最近ローワンは領主の家の見習い使用人として両親の手伝いをしているので会う機会は減っていて、一緒に遊ぶのは久々だ。
何かしなければ置いてもらえないからではなく、自分が出来ることをやりたいとそういうことになったらしい。
それにアズライトにいた頃のローワンは雑用係としていて、元々やっていたことも多く向いていたこともあってローワンには向いている。
「職人たちから連合国の素材が欲しいと声があるのだが融通してもらえるだろうか」
「そうですね」
挨拶もそこそこに仕事モードのルッツと領主は素材に関しての話し合いをしていた。
あの貴族との1件以来、獣人たちとこの街の人間たちの距離はかなり縮まって他の職人たちも他国の素材など気になって技術交流に顔を出すようになっていた。
そこで初めて見る素材など興味もそそり、そこにナナシ経由でたまに連合国特有の素材を冒険者ギルドが取引していると判明したため、領主に要望としてかなりの声が上がった。
ナナシではなく領主に言うのは、ナナシがしれっと領主に押し付けたのもあるが量が必要なのであれば領主から頼んでもらった方がいいからだ。
領主側、王国は持ち出し禁止の素材などはほぼほぼなく、帝国だと違ってくるが連合国との取り引きに関しては何の問題もない。
しかし、連合国の方は元々連合国内で終わっていて、人間相手にとなるとまぁ色々とあるので難しいところもある。
「一般的な素材であれば大丈夫かと思います。詳しくは戻ってから話し合いになりますが」
「取引が可能と言うだけも朗報だろう」
順調に話が進む中で、黙った聞いていたナナシが急に割り込んでくる。
「支払い方決めといた方いいぞ。金以外で請求されることも多いかんな」
「大抵は物々交換ですからね」
「そうなのか」
知らなかった違いに驚く領主にルッツは連合国内の国同士の取引でも、よくもの同士の交換が行われると説明。
もちろん金銭でということもあるのだが、物々交換という思想が根付いているだけに金銭の発想にならないということもある。
「おそらくは素材交換になるかと思います」
「それならそれで構わない。幸いにも冒険者が多い」
自分たちに必要なもののためなら、冒険者たちもこぞって動くことだろう。
現に薬草採取の問題も割引などの付加価値をつけたこともあるが、冒険者も自分たちの暮らしがかかっていると知ると採取系の依頼を冒険者たちもちょこちょこと受けるようになり成果が出ている。
なので、連合国の取引のためでも自分たちのかかってくることであればやるはずだ。
「それにこの街は1番素材が流れ着く場所だかんな」
「薄々感じてはいましたがさすがは職人の街、と言ったところでしょうか」
「挑戦者が多いことも理由だろうがな」
素材を多く必要する街であり、この街の職人たちは新しいものを作り出そうとする気概がある。
そういうこともあってか、使い道が分からないものや持て余した素材などもこの街に流れてくることが多い。
「ではどんなもので用意が出来そうですね」
「ま、だろうな」
取引の対価に関してが終わると次は素材の運搬についてだ。
必要なことを黙々とこなす領主と、テキパキと動くルッツは相性がいいらしく思いの外話はすいすいと進んでいく。
まぁ、2人とも余計なことで脱線することもないからというのもあるかもしれないが、想定よりも早く話し合いは終わった。
時計を見た領主はかなり驚いた様子だった。
「随分と早く終わったものだな。時間があるようならお茶でも飲んでいくといい」
「そうですね。お言葉に甘えて」
ルッツがそう言うと、領主はすぐ近くにいた使用人に声をかけてお茶の準備をさせる。ついでにルーグたちを話が終わったのでこの部屋に来てもいいことを伝えてもらう。
「なんかすっごく早くない?いいことなんだとは思うけど」
『完全同意』『手違い』『ない』『?』
ナナシがいる部屋に来たルーグは真っ先は言った。
月一の会合でもこんなに早く終わることはない。まぁあれは酒盛りの時間も入っているので正確な時間は定かではないのだが。
「細かな話はしていないですから」
だから早く終わったのだと穏やかに笑うルッツに、ナナシはルッツと領主も仕事が出来るやつだかんなと言う。
『超!』『優秀』
「そうだね」
お茶が運ばれてきてそれぞれ席に座る。
ルーグとローワンがナナシの隣に座りたそうにしていたためルッツは領主の方へわざわざ移動し、ミックは小さくなって机の上だ。
「いい香りですね」
飲む前に香りを楽しむルッツは満足気だ。
仕事柄休む暇はなかなかないようで、仕事しながらも楽しめるためお茶好きらしい。
その辺で領主とルッツには共感めいたものがあったらしく、似たような仕事として意気投合していた。
ルッツの仕事
国境警備隊との連携やそこで暮らす人々への対処など、実質領主と同じと言っても差し支えないほど。
今回の交流に同行することになり職人街を楽しむ反面、休むと休んだだけ仕事が溜まっていく仕事に憂鬱になっている模様。




