第三話
これは遅れたんやない。予約投稿の嵐が収まってから投稿することで、新着に残りやすくするという作戦なんや!
すみません。なんでもないです。
今回、本文はスマホで書き上げた後パソコンでチェックしていないので誤字脱字などのミスがあるかもしれません。その場合、報告していただけるとありがたいです。
では、どうぞ!
梅西さんの(半洗脳)教育動画を一つ見終わったところで、ちょうど庁舎の最寄り駅に着く。
「なんか内容は普通なのに、妙に頭に残ってるんだが。」
まぁそういう動画プログラムだし。
「そう?じゃあ天音には合ってたんだよ。きっと」
そうとはおくびに出さず「そうかなぁ?」と納得していない天音をはぐらかしづつ庁舎に向かう。
庁舎は最寄り駅からは歩いて3分ほどの、見た目は5階建ての雑居ビルだ。
他の政府の建物のように建物名が石に刻まれているわけでもないので、知らなければ普通にスルーしてしまうだろう。
「「おはようございま(~)す!」
情報庁庁舎
所在地は情報庁に関して公開されている数少ない事項の一つであり、様々な都市伝説に使われる建物。
庁舎に入り、ゲートを通った先で僕たちは挨拶をしていく。
天音は最初の頃はしなかったのだが、梅西さんたち教育組によるOHANASHIと僕のお願い(共感性MAX)により今ではきちんと挨拶はするようになった。
現在9時15分。
途中挨拶返しとともにちょっとした雑談をしつつ、長官室に向かう。
「お!ユキちゃん、アマちゃんおはよう!昨日はお疲れ様。報告かい?」
「はい。これから長官に」
「あら?天音ちゃんに悠希ちゃん久しぶり!いやー、なんか二人に会わないと日本に帰ってきたって感じがしないわ」
「玲奈さん!?いつ帰ってきたんだ!?」
「昨日よー。二人とも後で調査部にいらっしゃい。お土産があるから」
「マジ!?お菓子?それとも」
「ほら天音、そういうのは後の楽しみにね?玲奈さん、お久しぶりです。後で調査部に顔を出しますね。」
「待ってるわ~」
「はい、おはよう。二人とも昨日はお疲れ様。それとも久しぶりに暴れてスッキリしたかしら?」
「おう!と言いたいんだけどなぁ」
「貫通爆撃でケリが付いたので、少し不完全燃焼気味ですね」
「フフ、私も最近溜まってるからその内模擬戦しましょ?」
「渡辺の姉貴とヤるのは楽しいからな!お願いするぜ!」
「私は姉貴なんて柄ではないわよ。それじゃ、予定が合ったらヤりましょうね。」
こんな感じだ。
保護からそのまま事実上の所属となった時は庁内の意見を三分したけど、今ではなんだかんだ認めてもらえていると思っている。
と長官室に着いた。
時刻は9時20分
少し早いけど札は対応中になってないから大丈夫でしょ。
「天音、おk?」
「おk」
そもそも気負うことはないんだけど、一応天音に確認を取る。
僕たちなりのルールとして、こういう部屋に出入りするときだけはきちんとその場に則った礼儀を守ることにしている。
でないと僕たちのことを知らない新入りさんが色々勘違いを起こしてしまうのだ。
実際、過去にそれで天音が絡まれて面倒臭かったし。
コンコン・・
「どうぞ」
「紫乃宮、ならびに藤堂、入ります。」
「「失礼します」」
長官室に入ればそこにあるのは長官の執務机と端末、来客用のソファーにテーブル、後は中に本以外の色々なものが入っている本棚、ウォーターサーバー、日本国旗だけと大分質素だ。
その部屋の主は燃え尽きたように机に突っ伏していたが。
・・・え?
「なあ、長官。だいぶ疲れてるみたいだがどした?」
いつもは少し刺々しい天音も流石に心配になったらしく、どこか労り気に声をかける。
「いえ、リンドウに責任ある上に立つ人間の心構えというのを、つい先ほどまで説かれていただけですので気にしないでください。」
どうやら僕たちの朝の一件から派生したっぽいことを言う長官。
自業自得だとは思うけどお疲れ様です。
「私もリンドウと新見君だけは口で勝てませんからね。だから皆、リンドウを私にけしかけるのでしょうが・・・」
「とりあえず、状況は分かりましたから報告をしていいですか?」
ちょっと長官の心に触れてみると疲れたと愚痴りたいが流れ込んできたので話の方向性を変える。
このままだと20分くらいは愚痴りかねない。
「いくら私が嫌いだからって・・・あぁはい。報告ですね。どうぞ」
大丈夫かとは思うが同情はしない。嫌われたくなければもう現場は引退したのだから言動を矯正すればいいんだし。それができないわけでも無しに。
「とりあえず、長官の状況は無視で」と天音にアイコンタクトを送れば「了解」と返してくる。
「詳しくは国防軍より届くと思いますが、2071年3月24日16時20分紫乃宮、藤堂ともに現着。対象と接触、戦闘開始。同16時30分百里基地より2機の MP-5/Bが飛来。紫乃宮、藤堂両名の対爆防御後、貫通爆撃を実施。同16時34分 異獣の魔核の破壊を確認。 任務完了として第二太隊に引き継ぎました。規則違反などはなかったと思います。以上です。」
言葉にすれば昨日のことはたったこれだけしかない。無論、細かいことはいくつもあるがその辺りは国防軍の報告書を見ればいい。
「私からも補足事項は特にありません。」
僕たちの報告を聞き終えたあと、長官はいくらかは精気を取り戻した感じで椅子に腰掛け直した。
「結構です。報告を受領、任務の完遂を認めます。お疲れさまでした。」
報告を受けた後の決まり文句を言ったあと、長官が「さて」とセリフを続けてきた。
あれ?何かあるのかな?
「実は二人には次の任務の話があるのですが、少し前置きをさせてください。」
「「次の任務?」」
天音が聞いてるか?と問いかけてくるが、僕も知らないと首を横に振る。昨日の間に決まったのだろうか?
「実のところ、この任務の話自体は1ヶ月ほど前からありました。ですが、この任務を君たちに命じるか私と飯田君、新見君に梅西君、米田君と何回か会議をしましてね。」
長官に隊長、技術研究部長に僕たちの教育係の纏め役たる梅西さん。調査部長の会議があるって一体どんな任務なんですかね・・・。
少し冷や汗を掻きながら長官の話を聞く。
「君たち二人を保護し、早8年。仕方ない部分があるとは言え、こちらの都合で君たちをこちら側で通用するように育て、こんな仕事をするようにしてしまいました。それは私たちの罪でなのでしょう。」
なんか懺悔みたいなこと言い始めた!?
そしてなんかまともでシリアスなこと言ってる長官を見ると少し寒気がするんですけど!
チラッと天音を見れば天音もこめかみの辺りがピクピクして表情が強張っている。
ついでに触れた訳でもないのに「恐怖」の感情が天音から流れてくるし。
「しかし君たちはそのように育てた私たちに普通に接してくれている。が、君たちから普通を奪った片棒は確実に私たちです。そんな私たちがこのような任務を命じてよいのかと、まぁそんなわけで会議があったわけです。」
マジでどんな任務なのそれ!?
もうやだ!聞くの怖い!
「さて、では任務を言い渡します。」
キター!
「紫乃宮特位、藤堂特位、君たちには2072年4月1日を以て、国立魔導高等学校 仁徳学園に入学してもらいます。」
・・・は?入学?
「すみません、長官。上手く聞き取れなかったみたいなのでもう一度お願いしても宜しいでしょうか」
「おや、悠希君が聞き取れないとは珍しい。いいでしょう。てはもう一度。君たち二人には4月1日付けで仁徳学園に入学してもらいます。これは特A級の任務であり、こちらが認めざるを得ない理由がない限り拒否は認めません。」
は~!?何で魔導高校とは言え学校に入学が任務なの!?
しかも特A級て準強制動員クラス、つまり基本拒否できない国家の行く末を左右しかねない任務てこと!?入学が!?
「長官、悪いがちょっと聞きとれ「天音、それループだから。僕も混乱してるけどとりあえず受け入れよう?ほら、見てよ長官がすんごいニヤニヤしてる。」・・・ワリィ」
とりあえず天音のループ発言を止めることで少し冷静になったが、それでも混乱は続いている。
まず、魔導高校に入学。これは百歩譲って別にいい。問題はそれが特A級任務ということだ。
特A級任務とはさっき思った通り国家の行く末に関わると思われる事態に政府側、書類上は上位組織の防衛省から通達される任務だ。長官が遊び半分に設定できる任務種別ではない。
僕たちが学校に行くことが国家に関わる。そんなことはまずあり得ず、となると・・・
「長官、笑ってないで続きをお願いします。どうせ入学することだけが任務ではないんでしょ?それとも封印解いて一緒になります?』
「ふふ、いやなに、あまりにも面白かったものだからついからかってしまった。すまないね、ほらこのとーり」
そう言って長官は手にはめたマスコットにお辞儀させる。
・・・謝る気ゼロだね、そしてそのマスコットいつの間にはめた。
ただまぁ、こんな感じの長官のほうが安心感がある。さっきのシリアスモードは正直気持ち悪かった。
「つまりは、さっきの懺悔みたいなのも俺たちをからかうための演技だったってことか?いやー安心したぜ。なんかおぞましかったしな。あれ」
「いえ、確かに仕込みの一環ではありましたが演技ではありませんよ?」
ん?
「さっきのは確かにからかうための準備でしたが、嘘ではありません。まあ、私個人だけでなく情報庁総員の気持ちではありますがね。あと、悠希君はそんな簡単に封印を解かないでください。掛けなおすの面倒ですから。・・・話が脱線しましたね。」
「「誰のせいだと」」
「さあ?」
え、じゃあ僕たち皆からさっきの懺悔みたいなこと思われてるの?うわぁ恥ずかしい!多分今の僕真っ赤だろうな。天音もだし。
「さて、話を戻します。今回の任務は護衛任務です。対象は今春に仁徳学園に入学する『天城 快人』15歳男性です。』
これが資料です。の言葉とともに仮想端末に着信。
開けば確かに任務資料と題されていた。どれどれ・・・
「『天城 快人)あまぎ かいと)15歳。男性。社交的な性格で一般的な正義感を持ち、多少のカリスマ性がある。ただ、少し潔癖症なところがあり、困っている者や何か事件を身の回りで見つけると後先考えず行動してしまう点に注意が必要』ってめんどくさっ!こんなザ・勇者です!みたいなやつホントに居るのか」
うん。天音の言う通り近くにいれば損得抜きに助けてくれるいい奴だけど、少し離れた立ち位置だと面倒臭い。
特に護衛という立場からすれば、じっとしていて欲しいのに勝手に関わらなくていいことに関わってしまいそうで今から気が重くなるなぁ。
「えーと?『母親とは幼くして死別しており、現在は義理の母と同年齢の妹がいる。父は京都大学魔導学部の教授で、現在丙種霊機開発プロジェクトの一員。義母は同大学附属病院の麻酔科医。家族仲は悪くなく、むしろ再婚とお互い連れ子がいる点を考えればかなり良好な家庭環境と言える。』へぇ?親達は忙しくても週に2日は家族と過ごす日を作るようにしてるし、義妹とも同年齢で思春期真っ盛りの割には上手くやっていると。何て言うか、すげぇ羨ましくなる家庭環境だな。」
両親もそりゃあ完全に平等ではないにしろ、二人の子供に分け隔てなく接して愛情を注いでいる。夫婦仲も悪く無し。医者と国家プロジェクトの一員だから世帯収入も高いと。うん、なにこの絵にかいたような幸せな家庭。裏山。
「『昨年11月、父親の手伝いとして丙種霊機のデータテスターとなる。結果、過剰適合。丙種の目的である疑似固有術式ではなく本来の固有術式を発現。以降、霊機は最適化されデータ収集を行っている。疑似固有術式と固有術式の同時発現者となる可能性が最も高く、固有術式の効果も鑑み準重要人指定されている。』うわっ、運命力まで高いのかよ。こんなん絶対面倒事がやってくるじゃん」
「いや、自分から面倒事に飛び込んでいくんじゃない?性格的に」
「あーそうじゃん!うわ~今からやる気失せるんだけど」
もうこれ本当にどこの主人公ですかね。本当にありがとうございます。
イヤだー
「最後だな。『固有術式名は『奏縁の調べ』、効果としてはその身に受けた術式の模倣・合成。これは検証段階だが他の固有術式も模倣・合成できる可能性が高い』ぃ!?は?ふざけんなよコイツ!」
「何て言うか、もう・・・」
「ついでに付け足すと今年は何かしらある新入生が多いそうです。政府がそういう生徒を仁徳にできるだけ集めているのは、言外に『任務ではないが彼らも護れ』と言うことなんでしょうね。ちなみに女子の比率が高いそうですよ。」
もうやだ・・・この任務受けたくない。絶対面倒じゃん!
「さて、なぜこのような任務が下されたのかは理解できますね?」
「ただでさえ機密性の高い試製丙種霊機の使用者。さらに」
「固有術式で術式を合成できるから実質的にいくらでも疑似固有術式が作れる。さらに他の固有術式も模倣・合成できる可能性があるおまけ付き。そして出が民間である以上・・・いや、そうでなくともこんな情報遅かれ早かれ絶対に漏れてしまう。そうなれば動きそうな輩が直ぐに思い付くだけで4つはありますね。」
一応、同盟国ではあるが諜報工作には節操のないアメリカの工作機関各種
未だ大戦の結果を受け入れない中国共産党残党及び強硬過激派の国々
大戦に乗じて世界の闇商人達が連合してできたイリーガル・カンパニー
そして僕たちとも因縁深い神帰教
情報庁が僕たちをこうなるよう育てたというならば、神帰教は僕たちをこういうようにしか生きられなくした元凶だ。
それ以外にも動きそうな組織はいくらでもある。確かにこれは特危対応隊の仕事だ。仕事、なんだけど・・・
「追加人員なんかはありますか?」
天音と二人ではちょっと厳しい。
能力的にはできるという自負はあるけど、多分天音が、ついでに僕もストレスで爆発してしまう気がとてもする。
だからストレス分担のためにもう少し、例えばさっき会った渡辺さんとかが欲しい。
「こちらもできる限りのバックアップとフォローをしますが、護衛として学校内に入るのは君たち二人だけです。理由は・・・」
「こんな時に教職員増やしたらあからさまに怪しいもんな。抑止力にはなるだろうけど、逆にそいつがいない時なんかはしょっちゅう狙われる羽目になる。なら、一見護衛がいないように見せかけて、疑心暗鬼を誘うのと向こうで膠着状態を作ってくれたがいい。」
「その通りです。天音さん」
頭ではわかってはいるのだ。
少なくとも今年の新入生が卒業するまでの三年間、仁徳学園に新たに赴任する教職員は狙う側からすれば護衛にしか見えないだろう。
目に見える護衛ということで、躊躇はさせられるかもしれないが誘拐か殺害かと同時に護衛を襲撃されれば向こうの成功率を上げてしまうし、多組織で連合されでもしたらたまったものではない。
逆に一見護衛がいないように見えれば向こうは護衛がいるのかいないのか、いたとすれば実力はどれほど?と疑ってかかり散発的な威力偵察から始めるだろう。
いずれはバレるだろうが、その間に護衛対象に自衛能力を付ける時間稼ぎができる。
さらに疑心暗鬼に陥っている以上、他の組織と共に動くというのは難しくなり、先に動けば漁夫られるというような膠着状態ができれば完璧だ。
そうなるためには護衛と判りにくい護衛、すなわち同年代の生徒に紛れた護衛が必要だ。
僕たちは今回の場合、背丈で多少注目されるかも知れないが、まず間違いなく紛れ込めるし実力も折り紙つき。正に打ってつけだろう。
だけど・・・
「心配すんなってユキ!」
「天音・・・?」
気付くと天音に後ろから抱き締められていた。
え?こんな真剣な時に何してるの!?やめて!?僕たちのことをよく知ってるとは言え長官もいるんだよ!?
だが僕の内なる叫びを意に介せず、天音はさらに力強く、だけど僕が苦しくないよう抱き締め頬を撫でながら僕に語りかける。
「俺がこの任務やったらキレるんじゃないかって心配してくれたんだろ?ありがとな。確かに護衛対象はいけすかねぇ奴だしキツそうな任務だ。キレかけることがあるかも知れねぇ。けど、そん時はユキが逆にこうして止めてくれればいいし、最悪昔みたいに溶けてもいいかもしんねぇ。俺とユキならなれてるから事故も起きないだろうしな。」
「だから」と耳元で囁く天音。
なにこのイケメン・・・ぎゅーっもなでなでも好き・・・幸せ・・・
「やってやろうぜ。ユキとなら大丈夫だ。俺はユキを護るし、ユキは俺を護る。俺たちってそういうもんだろ?」
「うん・・・」
天音・・・しゅき・・・ずっと一緒「ゴホンッ」
!?ハッ!ヤバい!トリップしてた・・・これ長官に見られたのか・・・多分庁内に途中からでも中継されてるよなぁ・・・後で弄られるんだろうなぁ・・・orz
「お話は終わりましたか?」
「おう!」
「はい・・・」
何で天音はあんなセリフ吐いたのにはずかしがってないんだろうか。ほら見てみーよ、あの長官の顔。からかった時よりもニヤニヤしてるじゃん・・・
いいや、諦めよ・・・どうせ他にも恥ずかしいことたくさん知られてるし、1つくらい増えたところで誤差だよ誤差。うん、よし。
「取り乱してしまい申し訳ありません。長官。追加人員についてはわかりました。」
「気持ちは分かりますからいいですよ。まぁ、先ほども言いましたがバックアップとフォローはできる限りしますし、学外については私たちも全力でかかります。それが仕事ですし。ただ、おそらく討ち漏らしがどうしても出ます。基本、君たちにはそちらの相手をしてもらうことになるでしょう。」
「「はい」」
「では、残りの通達事項を伝えます。」
とまたデータが送られてきた。
任務に関する諸通達事項?
「量が多いので詳しくは後でそのデータを見てください。私からは重要な部分だけ。」
なるほど。お上からの任務だから通達が多いのか。
すごい、二ページにわたってぎっしり書いてある。これ、天音は読む気起きないだろうなぁ。
「まず、君たち二人は公式には聴講生のような立ち位置になります。在学中は名簿に名前がありますし成績も出ます。しかし、それらは公式には残らず、学園を離れた時点で全て抹消されます。まぁ、正式に受験して入学するわけではないですし当たり前ですね。」
これは長官の言うとおり、当たり前だね。そうじゃなくとも情報秘匿があるし。
「次に本任務における制限などですが、極めて長期な上に状況が流動的に変化することが考えられることから条件付きでオールフリーとします。」
「長官。条件とは?」
「事後報告でいいので、こちらに通達してください。こちらの処理もありますので。」
「ん?長官。ちょっといいか?」
珍しく天音が質問した。基本的にこういうのは僕任せにするんだけどさっきのことがあるからかな?天音・・・ふわふわ・・・ってそれは今は考えない!
「はい、何でしょう?」
「本当に事後報告さえすればオールフリー、つまり完全自由裁量でいいのか?」
「はい。それがなにか?」
「例えば民間協力者契約なんかも?」
民間協力者契約。
情報庁において民間人を重い守秘義務付きで準職員として扱う制度で、主に調査部によって行われるもの。僕たちも一応これになっている。
けと、それを出してくるか。確かにもしかしたらやることになるかもしれないけど・・・
「問題はありませんが、流石に事前に相談ぐらいは欲しいですね。あ、秘匿情報保持契約は事後報告で構いません。事前に相談できない状況もあるでしょうし。」
「わかった。ありがとな」
「いえいえ。天音さんが質問とは珍しいですが、わからない箇所があれば訪ねるのは重要なことです。」
長官の言うことは前から教育係の人たちに言われていることだ。
にしても民間協力者契約、あれは悪魔の契約とも呼ばれるほどきちんと確認しなければいけない罠が多い。
できればやりたくないが、どうしても必要になればその時また考えよう。
「最後に、状況によっては一時的に最大で少佐クラスの権限を国防軍全体に対して君たちは持つことになります。権限を得る場合はその状況が予想される場合に階級も含め通達しますので、通達内容はよく確認してください。」
これは主に異獣迎撃における学生協力の時とかかな。
めったにあることではないが、後方の防御を魔導高校や大学の学生が受け持つことがある。後方なので、それだけなら学生に紛れるだけで問題ないけどそれに乗じる組織勢力が無いとも言えない。
そういう時の措置だろう。
「あと、これは私からの助言です。」
へぇ、長官からの助言なんて久しぶりだ。
最近は「私が口を出さなくても大丈夫でしょう?」というスタイルだったんだけど。はじめての長期任務だからかな?
・・・いや、あの瞳はさっきのシリアスモードと同じ、なんかこっちが恥ずかしくなることを言うつもりだ!
「君たち二人は私たちから世間で言う英才教育を施されています。一般教養は高校2年生レベルには達してますし、魔導関連の知識、技術ならそこらの魔導部隊員や戦舞士などと比べ物にならないくらいのものを持っています。」
改めて言われるとすごい環境だよね。
知識は複数人からほぼワンツーマン。魔導戦闘をはじめとした技術は、実は今までやり合った裏の人間がよっぽど雑魚だったということでもない限りまず普通以上ではある自信がある。
「しかし私たちでも教えきれない部分があります。同年代との触れ合いです。青春と言い換えてもいいですね。確かに今回の入学は任務ですが、せっかくの機会です。そういうことも体験してくるのもいいでしょう。」
「もちろん任務が優先ですが」と付け足す長官の顔は一瞬だが、いつもの薄笑いでも演技した顔でもなく、少なくとも僕は初めて見る『子を送り出す親』のような顔だった。止めてよね、そういう不意打ち。なんかジンとくるものがあるから。
「コードの認証はまだ開始ではないのでまた後日に。今ある任務に関する資料は20分後に自動消去されますが、他の資料なども含めたデータチップを渡しますので総務に必ず寄ってください。私からは以上ですが、何か質問などはありますか?」
総務は後で行く予定の一つだったからちょうどいいね。
特に今のところ質問もないかな。
「僕は特にありません」
「俺も同じく」
「では、今日はここまでで。昨日はお疲れ様でした。」
長官の言葉を聞いて、僕たちは一礼し長官室を出る。
「それじゃ技研と調査部、それに総務。どこから行く?」
「梅西さんのところ行こうぜ。取りっぱぐれるのはゴメンだ」
動画の感想報酬!という感じの天音。
まったくこの娘は・・・
「はいはい。じゃあ技研に行こうか」
「おう!」
そうして、技研のある地下に足を向けた。
いかがだったでしょうか。
今回は実験的にセリフと地の文に行間を入れてみました。
そのあたりのことでも感想にコメントしてくださると嬉しいです。
技研での一幕
天音「報酬ってここの食券かよ!」
悠希「お金とは言ってなかったと思うよ?」
天音「うぐぐ・・・まあ、ないよりはマシか・・・」
梅西「ところでここに動画の内容を聞くテストがあるんだが、もし80点以上取れたら3000円あげるけどやるk「やる!」ほれ、じゃ、はじめ!」
悠希(ちょろいなあ、天音。そして梅西さん、しれっとテストまで用意してあるって最初からそのつもりだったのかな・・・)
作者の今週の一幕
三回逃げられた蚊に小指を嚙まれてめっちゃ痒かった。
感想などいただけると嬉しいです。では、また来週に〔多分}