第四話
うん。完全に遅刻しました。すみません。
では、どうぞ!
桜の花びら舞うベンチに少しはなれて座る一組の男女。
新たら制服に身を包み、これからの新生活に期待を膨らませつつ新たな恋の予感を感じるも思春期特有の異性への気恥ずかしさから少し距離を取っている・・・旗から見ればそんな風に見えるかもしれない。が
「ユキ!鳴き飛ばしばっかすんなよ!全然ツモれねぇじゃねぇか!」
「そりゃ三元牌全部さらされてたら全力で流すよ。親の役満とかツモ上がりでもイヤだし」
実際はお互いに手牌が見えないように距離を取っているだけなんだよね。
さっき顔を赤くしてこそこそ話してた女子二人組、もし勘違いしたならゴメンね?
「だー!結局流局かよ!」
「上がれれば1位に逆転できたのにね。まぁツモれなかった己の引きを恨みたまえ」
「そもそも全員安牌か鳴いて俺を飛ばすかしてたじゃねぇか!テンパイから3回しかツモれないってどんだけだよ!」
「まぁまぁ。ほら、オーラス始まるよ。まだ倍満直撃させればまだ逆転できるんだから諦めないで。諦めたらそこで試合終了だよ」
「そもそもラス親が一位だから、どう足掻こうとこの局で終わりだけどな・・・あ、ダブリー」
「ハイ!?」
結局、本当に一位が振り込み天音が逆転一位で終了した。
・・・鳴きで集めたとは言え、大三元張った次の局にダブリー清一色とかそっちがどんだけて感じなんですけど。
「いやー気持ちいい逆転だったわ!お、そろそろ設営終わったんじゃね?」
「・・・そだね。行ってみよっか」
二人してネット麻雀をすることになった理由。何か不手際があったらしく入学式の受付が30分延期されたからだけど、本来の受付開始から現在40分が立つし、歩いている(多分)新入生も増えてきた割には学校の方から戻って来る人はいないみたいだから多分開いてるんじゃないかな。
「そういや、仁徳てどんな学校なんだ?よく考えたら魔導高校てことしか俺知らねぇわ」
道を少し歩いたところで天音がふと思い出したように呟いた。
まぁ、魔導高校てことが分かってれば別に問題ないんだけど・・・
「じ「仁徳学園。日本に8つある国立魔導高等学校の一つ。関東地方出身の生徒が多いけど、占有空域が他の学校より広いことを活かして完全霊機での授業が他よりも多いからそれ目当ての他地方出身の生徒もそれなりにいる。他の魔導高校と同じく人工島で全寮制だけど本土とは橋がかかってるから休日とかに外出する生徒も多いらしいね。その代わり人工島はそんなに施設が充実してるわけではないみたいだけど。あと魔導高校対抗戦ではここ数年あと一歩て感じの成績で伸び悩んでいるってさ。こんな感じでいい?天音、付いてきてるお二人さん?」・・・全部言われた」
とりあえず暗記した学園の概要を答えつつ、恐らく同期だろうベンチを立った辺りから後ろを付いてきている天音の呟きに答えようとした一人と友達だろうもう一人にコンタクトをとる。
「おう!充分だぜ!そっちの元気が良さそうなのもありがとな!」
「気付いてたの!?」
「貴女、説明しようと声掛けてたじゃない。ごめんなさい。付ける気はなかったのだけど、この子が気になるって聞かなくて・・・。私は風師 紗綾。で、この子が・・・」
「氷室 香織ていいます!今日から仁徳に通う1年生だよ!二人も1年生だよね?もしかして先輩だったりする?」
見た目通り活発そうな人が氷室さん。その保護者というか苦労人ぽいのが風師さんか。多分厄介な新入生ではなかったと思うけど、後で確認しておこう。
けど、自己紹介されたら返すべきだよね。
「僕「俺は藤堂 天音!同じく今日入学の1年だな!これからよろしく頼むぜ!」・・・打ち合わせしてないとは言え被せないでよ。僕は紫乃宮 悠希。天音をはじめ親しい人からはユキってよばれてる。同じく1年だけど、自分で言うのもなんだけど天音共々世間知らずな所があるからもし同じクラスだったら色々迷惑かけるかも。よろしくね、風師さん。氷室さん。」
「よろしく!ね?ね?何でベンチで背中合わせになってたの?見た感じ仲が悪いわけでもないのに」
「ゲームしてたかんな。お互い自分の画面が見えないようにしてたんだ」
「へ~、じゃあじゃあ・・・」
とりあえず天音は氷室さんとウマが合うのかな?まぁ、お互い活発系だし相性が良いのかもね。
じゃあ、僕は風師さんと話してみようか。
「風師さん。なんかゴメンね」
「いえ、元々は私たちが付けるようなマネをしたのが始まりだし、謝らなくてもいいわ。それに香織もなんだかんだ友達ができるか不安がってたしちょうどよかったわ。でも、そうね。私からも気になったことを聞いていいかしら?」
「うん。流石に何でも答えることはないけど」
「いえ、ただ紫乃宮さんと藤堂さんの関係が気になっただけなのよ。幼なじみにしては距離が近い気がするし、だからといってお付き合いしてる感じではないし。まぁ、私もお年頃なのよ。答えにくかったから別に答えなくていいわ」
最後の方は少し赤くなって早口で聞いてくる風師さん。多感な乙女の好奇心の赴くままに質問して、途中で今初めて会ったばかりの相手ということを思い出したから羞恥心にかられた感じかな。
けど天音と僕の関係か・・・とりあえずごまかそう。いろいろ複雑だし。
「うーん。ある種の腐れ縁とでも言えばいいのかな。あ、僕はユキでいいよ。そっちの方が呼ばれ慣れてるから」
「おいおい、腐れ縁はねーだろ。お互いどっぷり依存してんだから。それと俺も天音でいいぜ」
天音も氷室さんとの話を切り上げて加わってくる。
にしても天音め。説明しにくいからぼかしたのに・・・
「それって共依存てやつ?」
「あまり口を出すべきではないのでしょうけど、健全とは言えないと感じるわね・・・」
ほらー天音のせいで面倒臭くなったじゃん。
「僕は確かにそっちよりだけど、全然違うからね?ただ天音がちょっと持病持ちで僕が専属の治療師みたいなものなだけだから」
二人の誤解というほどでもないけどあっていない解釈を正すために、僕と天音の関係性の一つを出す。これなら最初からこうすればよかった。
「あ、そうなんた」
「ごめんなさい。よく考えたら初対面なのにこんな突っ込んだ質問をして・・・どうやら自分で思っている以上に私も舞い上がっているのかもね」
どうやら聞いてはいけないことを聞いた?と罪悪感を二人に感じさせてしまったみたい。悪いのはどっちかと言えばこっちだから気に病ませることでもないけど、どうせだから今後の生活のための布石を打とう。
「いや、天音が誤解されるようなこと言ったのが悪いんだから。それよりこれから僕もだけどこんな感じのこと二人してよく言うだろうから、さっき言った通り同じクラスとかになったらフォローしてくれるとありがたいかな。ほら、天音も」
天音を促すように顔をみながら「同調して」アイコンタクトを送る。するとどうやら僕の意図を察したらしく、ほんの少し悪そうな顔で「了解」のアイコンタクトが返ってきた。
「あー俺の受け答えで誤解させちまったようだし・・・すまん。こっちは気にしてないからそっちも流してくれると助かる。ただ、ユキ共々こんなことをこれからよくやるだろうからそんときは頼ませてもらっていいか?」
自己紹介で言ったことをこれを証拠として証明し、改めて頼む。
氷室さんは簡単に了承してくれるだろうし、風師さんもこの頼みを償いと免罪符にして僕たちとの関係を深めて欲しい。僕の意図はこんな感じだったけど、天音はそれに完全に乗せてくれた。
実際、僕たちは非常識なことや突拍子もないことを言いかねないし、入学式前に持てた同年代との関係を手放したくない。同じクラスだったらお願いの通り僕たちのフォロー役。他クラスだったとしても情報網として繋がりは持っておきたいし。
「私は大丈夫だよ!ていうか私もさーちゃんによく迷惑かけるから人のこと言えないんだよね・・・」
「あら?香織に自覚があったのね?まあそれでいいのなら実際いつもやっているからお安い御用よ。それじゃあユキ、天音、さっきは本当にごめんなさいね。そしてこれからよろしくお願いするわ」
「私だってさーちゃんには感謝してるんだからね!?天音ちゃん、ユキちゃんこれからよろしく!あ、私のことは名前で呼んでくれていいからね!なんか昔から名字で呼ばれるの違和感があって」
まあ、氷室さんは性格と名字のイメージが正直合ってないもんね。うん、これからは香織さんと呼ぼう。
「僕たちこそ改めてよろしく。じゃあ、そろそろ入学式に行こうか。もうさすがに開いてるでしょ」
「お、そうだな」
「よく考えたら話しながら行けばよかったわね」
「よーし!じゃあしゅっぱーつ!」
4人で入学式会場に向かい歩を進める中、入り口が見え始めたところで香織さんが「あっ」と足を止めた。
「香織?どうしたかしたの?」
「いやーそういえば最初の疑問を聞いてなかったなって」
「「「最初の疑問?」」」
はて?最初の疑問とは一体?風師さんも?マークを浮かべているし。
「うん」
「元々それが気になったのが天音ちゃんとユキちゃんに興味持った原因なんだけど」と前置きしつつ、僕と天音に問う香織さん。
しかしその瞳は問いかけではなく、ほぼ確認事項のようにしっかりとしていて
「なんで仁徳に通うのに仁徳のこと知らなかったの?いや、それより天音ちゃんとユキちゃんはいつ仁徳を受験したの?」
・・・後でもう一回要注意・意識人物リストを確認しておこう。嘘でも本当でもないことでごまかしつつ、僕は最優先事項として意識にそう刻んでいた。
「新入生諸君、入学おめでとう。とりあえず1年間君たちの担任を務める荒木 巴という。担当教科は魔導実技だが、保体の免許も持っているからそっちを受け持つこともある」
香織さんを何とか誤魔化して臨んだ入学式は、あまり記憶に残るものではなかった。というより校長やら来賓やらのセリフが長すぎて退屈だったのでこっそりリストを確認していた。
リストには香織さんも風師さんもやはり載っていなかったから、少なくとも政府側では把握していないんだろう。となると世間に埋もれた原石か裏からの回し者か。
多分原石だとは思うけど、一応あとで照会しよう。
で、現在教室に移ってホームルーム。担任の荒木先生は調べると機動防衛総隊第一大隊OGで予備役軍人らしい。第一大隊とは僕と天音は関わったことはないから大丈夫そう。
ちなみにクラスは4人とも同じ1-Dだった。
最悪、厄介者で固められている可能性もあったけどどうやら分散したらしい。もっとも護衛対象含め一番厄介者が多いのはこのクラスだけど。
「ガイダンスなどは明日、明後日で行うので本日はもう解散でもいいのだが・・・時間もあるしこの後寮で逢ったりした時にお互いのことを何も知らないのは気まずいだろう。なので簡単な自己紹介をしてもらおう。出席番号1番、相川と17番、武本、18番、水流と34番、山葵でじゃんけんをして勝ったほうがもう一方の勝者とじゃんけん、勝った方から負けた方への順番で行こう。例えば武本と水流で決戦をして武本が勝った場合、武本から相川まで順にした後水流に番が回り最後が山葵になる。では、はじめ!」
また複雑な順番決めなこと。
多分、先生が出席番号順を嫌ってるんだろうけど。荒木だし。
結果、山葵さんからの逆出席番号順になった。とりあえずリストに載ってる人から覚えよう。
「山葵 礼華といいます。出身は静岡です。よろしくお願いします。」
山葵 礼華さん。
お姉さんが第一大隊の副隊長で、入学試験総合6位。どうやらお姉さんから個人的に魔術を教えてもらっていたらしい。
「俺は明嵐 高洋という。黙っていても気づく者はいると思うから先に言っておくが、俺は明嵐工業の家系の人間だが少なくとも今は皆と同じ仁徳学園の1年でしかないと思っている。これからよろしく頼む」
明嵐 高洋さん
日本で乙種霊機のシェア第二位を誇る明嵐工業の創業者一族本家の一人。未確定情報だけど固有術式を発現しているとの情報有り。
「私は水流 セリナです。父がイギリス人でハーフですが、生まれ育ちは日本です。好きな飲み物は抹茶です。これからよろしくお願いします」
水流 セリナさん
世界ランク3位のライアン・水流と女子世界ランク5位の水流 朱里の一人娘で競技魔導師のサラブレッド。魔力適正のみなら入学試験2位で彼女も両親から英才教育を受けている。
「五月女 悠一郎、よろしく」
五月女 悠一郎さん
実戦剣術『五月女流』を伝える家の子息。門下生には警察や国防軍関係者も多い。近接戦に限れば現1年生の中でもトップクラス。
「伊樹島 凛です。将来は国防軍を目指しています。伊樹島な名に恥じないよう頑張りますので、皆さんよろしくお願いします」
伊樹島 凛さん
日本最初の甲種霊機適合者にして英雄、伊樹島 晃一郎の孫娘。このをはじめ祖父、両親、叔父、従姉が優秀な魔導師又は魔導研究者のため、たった3代でありながら魔導の名家と伊樹島家は言われていて彼女にも大きな期待がかけられている。入学試験主席。
そして・・・
「天城 快人といいます。ちょっとした理由で京都から来ました。1-Aに義妹がいるので義妹共々よろしくお願いします」
護衛対象、天城 快人
直接見た感想は輝いてる奴。生来のカリスマ性と性格から若干人たらしの感じがある。僕的には嫌いにはならないけど好きになれない存在。
その後、次の相川 雄二さんの自己紹介を以て今日は解散となった。
「ユキ~帰ろうぜ!」
「帰るていうか寮に行くんだけどね」
解散するなりやってきた天音をあしらいつつ、風師さんと香織さんを誘って僕たちは寮に向かった。
今回は純粋に遅刻しました。すみません。
ていうか金曜日に遅刻しなかったの一回もない気がする・・・来週遅刻したら投稿時間変えよう
今回は入学初日のお話です。キャラの口調て難しいですね。
次回は寮の簡単な説明とガイダンスという名の学校説明回になる予定です。
では、また(多分)来週お会いしましょう。
作者の今週の一幕
自転車で通勤したら会社に着いた瞬間、狐の嫁入りになった。
お気軽に感想、誤字報告などよろしくお願いします。




