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スカイバトル ―99敗中の1勝―  作者: ヤブイヌ将軍
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プレイ一日目

    YOU LOST

 画面は大きく文字を映し出し、徐々にくらくなっていく。

「はー、これで何敗目だ?」

「・・・数えてない。」

 最近流行りだしたというゲーム スカイバトル

 バトル以外にもいろいろと遊び方はあるらしいが悪友の工藤タケルに勧められるまま対戦バトルばかりをしていたのだが・・・

「しっかし勝也、お前ほんと弱いなー。」

「うっさい、さっきのは少し手が滑ったんだよ。」

 連戦連敗、常敗無勝、何十回とやってまだ一度も勝ててなかった。

 ・・・そもそも相手が強すぎるんだよ。

「それに、こちとらゲーム初日で相手はランキング保持者だぞ。」

 オンライン対戦でぶつかる相手はみな強敵ばかり。さっき始めたばかりの俺に勝てる確率ははっきり言ってゼロだ。

「ランキング保持者って言ってもまだまだ下の下じゃねぇか。お前だって続けとけばあんぐらいすぐ行けるぞ。」

 そういうとタケルは外に目を移し、

「ん、なんか雲でてきてんな。」

「ああ、なんかこれからすごい雨が降るらしいからな。」

 自転車で来てるタケルにとって雨は面倒な物なのだろう。

「そか、んじゃ俺帰るわ。これは置いてくぞ。」

「お、おい勝手においてくなよ。」

 タケルは言うなりゲームを置いてさっさと帰ってしまった。

 ・・・はぁ、これどうすっかな。

 気を抜くと知らず知らずのうちにため息がこぼれていく。

 ゲームはどちらかと好きだ。

 ・・・いや、すきだった、というべきだな。

 RPGやシューティングゲーム、格闘ゲームとか今までいろんなジャンルのゲームに手を出してきた。

 しかしどれも必ず、クリアする前に投げ出してきた。

 勝てなかったから。

 どのゲームのどんな相手も、最初の敵すら倒すことに苦戦し、すぐにどうやっても次に進むことができなかった。

 はじめはレベルが足りないせいかと思って頑張った。

 ―初めの敵にレベルなど関係ないのに。

 でも次の日学校に行って友達がおれよりもずっと低いレベルで楽々クリアした、というのを聞いて心が折れた。

 ・・・俺はゲームが弱いんだ。弱すぎるんだ。

 それからレベル上げをする必要のないゲームなどもやってみたがどれも途中で投げ出し、しばらくするとゲームをすることすらいやになっていた。

 だというのに、あの野郎は・・・

 はぁ―

 タケルがおいていったカセットを手にしたまま自然と大きなため息がこぼれる。 

 ・・・とりあえず飯の準備すっか。

 ゲームを机の上になげだして俺は、そいつの存在をなかったことしようとした。


・・・・・・

・・・ 

 コトコトと鍋を煮詰めていると玄関から扉の空く音がする。

「ただーいまー。兄ちゃんおなか減ったー。」

 少し幼さの残る高い声が聞こえる

「おー、お帰り―。すぐできっから、手洗ってこーい。」

 玄関と台所、距離のある会話だからか少し間延びした返事が返ってくる。

「今日の晩御飯なにー?」

「んー?今日はシチューだ。」

 おー、やったね!と洗面台の方から妹の理佳の声がする。

 そして、とてとて、洗面台から理佳がやってきて鍋を覗き込んでくる。

「んー、いい匂いだねー。ね、早く食べよ!」

 鍋を覗き込んだ後そのまま俺の方に目を向けるのだからちょうど上目使いのようになって正面から理佳の目をみてしまう。

 髪はショートカットで大きな目がより強調されている。 

 顔だけは非常にかわいい奴だから・・・

 といってもリアル妹なのでほとんどノーリアクションで

「その前にお前ちゃんとうがいもやってきたのか?」

 というと

「あ、忘れてたよー。」

 と言って理佳はまた洗面台の方にかけていき、ガラガラとうがいをしにいった。


 ・・・よし、これで完璧!

 目の前の食卓には白い湯気をあげる炊き立ての白米に、これまた真っ白のシチュー。そばには水滴のついたみずみずしいサラダが置いてある。

「おー今日もおいしそうだねー。」

 うがいを終えた理佳がイスの背もたれに手を付きながら感想を述べてくる。

「おう、腹も減ったし食うか。」

「うん、食べよ食べよー。」

 二人手を合わせて、いただきます。

 理佳はすぐにスプーンを手に取ってシチューをすくい口に運ぶ。

「んー、やっぱりおいしー。兄ちゃん、これならすぐにお嫁さんに行けるね!私が太鼓判を押してあげるよ。」

「そんなもんイランから、お前もこんがりは作れるようになれよ。」

 んー、そのうちねー。と、気のない返事をしながら今度はご飯を左手に取り、シチューに近づけていく。

 ・・・おい、まさか。

 案の定だった。あろうことか理佳はご飯をそのままシチューにぶち込むとかきまぜだしやがった。

「あー!てめ、人の作った飯でなんてことしやがんだ!」

「えー、だってこっちのほうがおいしんだもん。」

 確かにうまいことは認めよう。白米にシチューのうまみがプラスされて大変おいしくなる。

 ・・・それにしたってシチュー、まだ一回しか手つけてなかったじゃねぇか。

 気分としては、頑張って作ったプラモデルにかってに落書きされた気分だ。

 しかもその落書きされた方がかっこいいのだからなおたちが悪い。

 落ち込んだ俺のことは一切無視して理佳はシチューぶっかけごはんを書き込んでいる。

「はぁ、もういいよ、おれもやってやる!」

「うんうん、やっぱりこっちの方がおいしいよー。」

 ・・・あぁ、なんか少しなけてくる。

 

・・・・・・・

・・・

 「「ごちそうさまでした。」」

 なんだかんだやっているうちに今日の夕食も終わってしまった。

 「あ、兄ちゃん、食器流しにおいてていいよ。今日は私が洗ったげる。」

 シェフへのほうびだ!とか食後の茶を飲みながら言ってくる。

 ・・・たく、そんぐらいでもいいから毎日手伝えよ。

 とは思いつつも、おーサンキューな。と返す。

 理佳は満足げにうなずくと両足を前後プラプラさせる。

「あ、それと先にお風呂入ってきちゃいなよ。でも、私も洗い物終わったらすぐ入るから、光速で上がってきてよね。」

 あれ、ほんと今日は珍しいな。いつも先に入りたがるのに。

 と思いつつ、風呂の用意をしていると、

「それと兄ちゃん、」

 少し落ち着いた声でまた話しかけてくる。

「ゲーム、また始めたんだね。」

 ・・・あぁ、こいつの機嫌がよかったのはだからか。

 少し納得しながら言葉を返す。

「タケルが置いて言ったんだ。まだやるかどうかは決めてない。」

「なんにしてもわたしにはうれしいことだよ。うん、うれしいことだ。」

 大事なことなので二度言いました、とでも言わんばかりにいうと、

「さ、さっさと食器洗いますかー!兄ちゃんも早くお風呂入ってきてよ。」

 と勢いをつけて席を立ち、台所に向かう。

 ・・・俺もさっさ風呂入ってくるか。

 ゲームが嫌いになってしまった理由、それはさっきのもあるが、それ以上にもっと大きな他の理由がある。

 その理由を思いだしかけて少し落ち込んでいた俺は理佳の鼻歌を聞きながら脱衣所の方に向かう。

 

 ・・・もう何年も昔のことなのに、あいつは今でも気にしてるんだろうか。

 布団の上で少し考え事していると、

「あれ、兄ちゃんもうねちゃった?」

 扉の向こう側から理佳の声がしてきた。

 いや、まだおきてるよ。そう返事をすると理佳は明かりをつけてなかにはいってくる。

「あー、もしかして妄想中だった?おじゃましちゃったかな。」

「ちげーよ!」

 最近俺の妹は思春期だ!

「ま、いいや。ねえ、すこしお話しようよ。」

 さっきとは打って変わって神妙な声で話しかけてくる。

「・・・なんだ。」

 ぶっきらぼうに返事を返す。理佳がなんの話をしようとしているかは代替予想がついていた。

「ねぇ、昔のことって覚えてる・・・?」

 昔のこと。それはきっとあのことだろう。

「あぁ、覚えてるぞ。昔お前がおれに『お兄ちゃんのお嫁さんになる!』って言っていきなり結婚式ごっこ始めたことだろ?」

 理佳は一瞬きょとんとして、ボンッと顔を真っ赤にする。

「な、なにそれ!わ、わたしそんなのしらないよ!かってに変な記憶ねつ造しないでよ!」

 ワタワタと手を動かしながら、精一杯の否定をしてくる。

「いーや、俺は覚えてるぞ?確かその時『はい、これ婚姻届!』ってちゃんと紙ももらったぞ?」

 えーと、どこにしまったかな。と部屋を見渡してると、

「ちょ、まさかそんな紙まだのこしてたの!?いいかげんすててよ!」

 と、さらに顔を真っ赤にしながら今度は手をグーの形に握り始めた。

 や、やばい。こいつのグーは威力が冗談で済まないほどだ。あたるとこよっちゃ意識が飛ぶぞ!

「お、おいやめろ!お前のグーはシャレにならん!」

「わすれろー!そんな記憶忘却のかなたに消えてしまえ―!」

 き、きた!理佳必殺技低空からの顎アッパー。

 これは躱さないとマジで意識が飛ぶぞ!がんばれ勝也!

 ・・・なんてこと思ってるうちに何かできればよかったんだが、気が付くと理佳のグーはすでに俺の顎にヒットしていた。

 「ぐ、ぐはっ」

 吹っ飛びはしないが、きれいに頭部が放物線を描きながら床に引き込まれていく。

 俺の意識は頭が床に近づくほどに薄れていく。

 あぁ、遠くから理佳の声が聞こえる。まだ昔の話がどうのこうのとあたふたしているのがかすかに感じ取れる。

 妹よ、お兄様のことをもっと気にかけておくれ・・・


 ・・・覚えているといったことは嘘じゃないし、それはもちろんさっきの理佳とのバカ話の内容のことでもない。

 いつの間にか一人きりになっていた部屋の中でそのことを考える。

 それは俺がゲームをやめる大きな原因でもあるし、本人は隠しているが、きっと理佳の心にも大きな傷を残してる。

 だから俺はその話を絶対に二人の間に上らないようにしてきた。

 ・・・明日はどうやってごまかすかな。

 考えているうちに夜は更けていき、いつの間にか俺も眠ってしまっていた。

書き終わった後に投稿のボタンを押してブラウザを切る。

そして後に気が付く。

投稿までにまだ一つプロセスがあったことに!

はじめに書いた全部消えっちゃった。あぁ、もう一度書かなくちゃ。

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