どうしようもなく寒い
寒い
吹き付ける風が体温を奪い
体の震えを止めることができない
ガチガチと震える歯の音だけが
風音に混じって響いている
この季節でも、夜だとこんなに冷えるのか
そんなことを思いながら
意識が途切れるのをなんとか踏みこらえる
やがて立つことすらままならなくなり
僕は前のめりに倒れ込む
顔にかかった雪をぬぐう気力すらわかない
頭の中ではいろいろな望みが浮かんでは消えていく
暖かい服がほしい
暖かいところに行きたい
暖かいものを食べたい
誰か、助けてくれーー
ふと、右足に暖かな風が流れる
規則的に
素早く
次の瞬間
右足が熱を帯びたように暖かくなる
ストーブや焚き火に当たりすぎたような
肌が焼けるような熱が
でも今はありがたい
感覚がなくなりかけた足に血が巡る
誰だか知らないけど
ありがとうございます
不思議と、そんな言葉が出ていた
首は回らず、姿は見えないが
間違いなく僕の足を暖めてくれている
今はただ、その人に体を預けることしかできない
とてもありがたい
数分後
今度は左足が
ゆっくりと熱を帯びる
先ほどまでの眠気は吹き飛んだ
まだ右足は動かないが
確実に血が巡っている
やがて熱は右腕に
視界の端には大きな黒い毛皮が見える
とても、暖かそうだ
そして、熱は左腕に
四肢が熱を帯びている
だが、まだ立てない
やがてその人は僕の顔の前に立った
先程と同じく規則的に暖かな風を送り
先程と同じく顔に熱が走る
僕は声にならない声で叫び
気付けば涙を流していた
まだ、手足は動かない
必死に体を起こそうとするが
まだ、手足は動かない
その人を払いのけようとしたが
まだ、手足は動かない
黒い毛皮に身を包み
規則的に暖かな風を送り
僕の体に熱を送ったそいつに
僕は体を委ねることしかできなかった
もう、手足は動かない
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
現在、短編ホラーを中心に少しずつ作品を投稿しています。
「もっと怖い話を書いてほしい」と思っていただけましたら、評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。
皆さんからいただいた評価や感想を、今後の作品作りにも活かしていきたいと思っています。




