みてみて~
みてみて~
娘はニコニコとした顔で
両手で何かを包みながら近寄ってくる
外で遊ぶのが好きな娘は
公園に行くと、きまって何か拾ってくる
落ち葉、どんぐり、小さな虫やきれいな石など
私たち大人からすればガラクタのような品々が
娘にとってはまるで宝物のように
(今日は何だろうな)
(虫…じゃないといいな…)
そんなことを考えていると
娘がそっと手を差し出す
今日は何を拾ったの?
私の問いに、娘はフフッと笑うと
見て!!
そういうと、娘は両手に小さな穴を作り
私にそこを覗くよう促す
正直何が包まれているのかわからないものを覗くのは
私としてもかなり抵抗があったが
以前、注意したので生物ではないだろう
私は意を決して手の中を覗き込むと
何か細長い
黒い束のようなものが見えた
手の中には光が差し込まず
それの全容を見ることができなかったので
もっとよく見せてくれる?
私がやさしく願うと
娘は快くそれを承諾した
そしてゆっくりと
両の手が開かれると
中から出てきたのはーー
黒い糸
それも、一本や二本ではなく、
何十何百という黒い糸の束が
赤い糸で結ばれている
私の手と同じぐらいの長さのその糸は
明らかに公園に落ちているものではない
私はぎょっとして、娘の肩をつかみ
これを、どこで拾ったのか
強く問いただす
娘はそのニコニコとした顔を崩すことなく
ゆっくりと先ほど来た道を指さす
あの人にもらったの
指の先
数十メートル先の木の陰から
赤いコートを着た女が
こちらを覗いている
白くて大きなマスク
鋭く睨みつけている大きな目
そして何より
前髪の一部が
根元から不自然に抜けている
いや、抜けているというより
強い力で引きちぎられたような
そこまで考えて私は
娘の手を引き、急いで公園を離れた
嫌な予感
虫の知らせ
私の中の言葉にできない感覚が
あの女から離れろと警告を発している
幸いにも女が追ってくることはなかったが
最後にマスクの下の口元がにやりと
大きく、笑っているように見えた
公園からの帰り道
娘の様子がおかしい
いつもなら公園で拾ったものは
最後に公園に置いていくのに
あの黒い糸だけは
拾いに戻ると泣き喚く
どうして
よりもよってあんなものを
私は強引に娘を家に連れて帰ると
いつもより念入りに戸締りをした
結局娘は疲れて寝てしまったが
私はその日、一睡もできなかった
結局それ以来
私たちはその公園に足を運んでいない
あの黒い糸を拾いたくない
あの怖い体験をしたくない
でも、あの女には会わなければ
会って、話を聞かなければ
なんでかって?
どうして会いたいのかって?
だってーー
娘が最近
自分の前髪を
強く、引っ張る癖がついてしまったからーー
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