黒羽のキラー
近くで殺人事件があった
僕の学校の女子生徒が、一人
現場には、遺体と一緒にカラスの羽がちりばめられていたらしい
クラスの皆はこれを「黒羽のキラー」と呼び始めた
いや、皆というのは少し言い過ぎか
言い始めたのは友人Aで、それが仲間内で広まっているくらい
教室の隅で、4~5人のグループで固まりながら
犯人はきっと何か大きな事件を起こすに違いない
世界を変える指導者かもしれない
Aを含めたその数人の妄想に
僕は少し恐怖を覚えた
すると、Aの声量が一段と大きくなり
きっと凶器はナイフだ
腹を掻っ捌いたんだ
Aの妄想は止まらず、まだニュースにもなっていないことをべらべらと話している
さすがのAの友人たちも、少しうろたえている
そんなAの態度は
どこか自慢げで
誇らしげだ
それから間もなく、事件に関する詳細なニュースが放送された
凶器がナイフであること
お腹に致命傷となる大きな傷があったこと
現場に落ちていたカラスの羽は
まるで、乱暴にむしられたかのように
バラバラに散らばっていた
…Aの妄想がことごとく当たっている
現場を見たわけでもないのに
どうしてーー
僕は次第に、Aと距離を置くようになった
以前から積極的に話していたわけではないが
彼と目が合うことが少なくなっていた
不思議とその日から
カラスを異様に見かけるようになった気がする
そんなある日
帰り道に偶然、Aと出会った
久しぶりに出会ったAは、目の下に大きなクマを作りながら
「黒羽のキラー」の偉大さについて語り出した
彼は完璧な殺人者だ!!
カラスに愛されてるんだ!!
お前も今の内に取り入っといた方がーー
「お前、ちょっとおかしいよ」
ぽろっと口からこぼれてしまった
殺人犯を擁護する彼を、僕は見ていられなかった
僕の言葉にAは肩を震わせると
お前に何が分かる!!
きっと彼にも目的があるんだ!!
あぁ、次に被害者はお前だなぁ!!!!
そう口早に叫び出すと
僕を突き飛ばして走っていってしまった
その時のAの表情は、人でも殺してしまうのかと思うぐらい
怒りに満ちていた
そしてその週末
Aが死んだ
皆が通る通学路で
頭から血を流しながら
近くには血の付いた石が転がっており
それが凶器かと思われた
しかし、不思議なことに
凶器からは指紋が検出されなかった
そのかわり……
Aの遺体には
百を超えるカラスが
彼を見下ろすように群がっていた
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