最弱の小説家は本を書く
レッドサーペントを倒したナナシは早速アイテムボックスの中に入れた。持ち帰って解体してもらうんだと。私もなんか隠れたスキルとかないかなぁ!とチラッと鑑定スキルを使う。
【小説家】:物語を書くことができる。アナタのアイデア次第で売れるかも?
…あのー、鑑定スキルさん?それだけですか?それだけですじゃないんだよ!マジで私最弱じゃんかーー!!!…ヒモ上等の精神でやるか。
[にゃ?これ本にゃ。何も書かれてねぇにゃ使うかにゃ?]
「使うー!」
よーし早速何か書いてみよう!何書こう…同人誌ならちょっと売れたことあるんだけどなぁ。普通に恋愛もので…
「待った。何書く気だ。」
「恋愛もの。動物同士の恋愛もの。」
「誰得だそれ。お前の好きなものかそれ。」
「ぐぬぬ…」
「ペンもドロップしたから書け。採用したら売る。」
「はい…」
恋愛もので…そうだな。シンデレラストーリーみたいな感じにしよう。貧困層だったヒロインが男装して王子様に認められて騎士様に女だとバレてふたりの秘密として抱いてるうちに意識し合う…
「なんて言うのはどうでしょう!」
「まとめろ。」
「はい。」
「ヒロインが貧困層で男装ねぇ、能力が認められてだろ?」
「はい。」
「んで秘密にしていたら騎士にバレて2人だけの秘密としてねぇ…それだけか?」
「ナナシは編集者か何かですか?」
「せめて2人だけの秘密として騎士側にもなんか付けろ。出なきゃ2人だけの秘密にならねぇ。」
「おっしゃる通りで!」
んで設定を固めて文章を書いて提出しては訂正、訂正、訂正の繰り返しをしやっと思った通りの作品が出来上がった。出版社とかあるのこの世界?と思いながら街へ帰っていく。
[ついでに鳥も狩れたから満足にゃ。]
「売れるかなぁ。」
「出版社側の問題だ。」
「デスヨネー。」
「金を稼ぐ問題が解決すりゃあこっちのもんだ。」
本を出版するギルド、文学ギルドへとやってきた。本を出すならここ!と聞いてきたけど金持ちばっかだぁ…そりゃそうだ。お金持ちにしか手に入らない紙なんだから。
「いらっしゃいませ、何を…」
「これを出版してぇんだが。」
「あら斬新なアイデア。今どきこのようなアイデアを出す人は居ませんわ。ですが…庶民の方には。」
「おいおい差別か?庶民だからだとか貴族だからといって才能を潰す気かてめぇらは。」
「あ、いえあの…規則でして…」
「…ならいい。ノーネーム。行くぞ。」
「…うん。」
あっちこっちからクスクスと声が聞こえる。なんか気分悪い。ここに出版しても意味なさそう。ベーちゃんもここは嫌だにゃと言ってるし。私もやだ。
「印刷とかどうすんの。」
「手書きだ。」
「ですよねー!」
[本がドロップするまで狩るにゃ!]
「ベーちゃん頼もしい!」
「とりあえず100冊写せ。」
「つまり同じように書けと?!」
「そうだ。後はコピー防止にサインでも書いとけ。」
な、なんと頼もしい担当者なのだろう!戦闘狂なのは目をつぶればいい担当者だ!…100冊は地獄だけど。
「俺も手伝ってやるから。」
「神かよ!」
「魔王だがな。」
こうして本がドロップするまで狩り尽くして100冊の本を書きまくった私たちだった。目の下に隈が出来そう。
[疲れたにゃ…にゃーは慣れてないにゃ!]
「鳥の串焼きでも食っとけ。」
[分かったにゃ!]
「…最後の本、出来た。」
「よくやった。」
[100冊もどうするにゃ?]
「同人誌として売る。」
え、この世界同人誌っていう文化あったっけ?と思っていたらないと言った。ないのなら広めればいいっていうスタンス嫌いじゃないよ私。
「売るって具体的には何処で?」
「んなもん決まってるだろ。冒険者ギルドだ。」
「手に取ってくれるかなぁ。」
[にゃーもやるにゃ。]
「ベーちゃんマジ天使。」
ギルドマスターにお願いして販売してみることに。全然人が来ねぇんですけども。
「先ず本を読めるやつがいるかどうかも怪しい。」
「問題点その一!」
[そもそもタイトルで何のジャンルか分かるかにゃ?]
「問題点その二!」
ぐ、ぐぬぬ…ヒモ生活がなくなるかと思ってたのに!と思っていたら受付嬢さんがやってきた。なんだろ、気になるというか眼鏡かけてるというか。本好きな人かな?
「どうしました?」
「ひゃ!す、すみません!ここで本を売ってるという変わった方がいると聞いて…」
「はい!試しに読んでみます?」
「え、いいんですか?」
「はい!」
「おいおいタダで読ませんな。」
「では拝見します!」
受付嬢さんが読んでいると突然目を見開いてページをめくっていった。そしてしばらくすると金貨1枚置いた。
「なんて素晴らしい恋愛もの!この女の子のだんそう?というものが素晴らしくて…」
なんだろ、何か扉が開く音が聞こえるぞ?もしかして性癖の扉か?性癖の扉か?…誰もが通る道だ。通るがいい。
「美丈夫もええぞ。」
「び、じょうぶ…なんて素敵な響き!師匠と呼ばせてください!」
「今日からオタク仲間だよ。」
「お、おたく!なんて素敵な響き!」
こうしてオタク化二号(一号は女将さん)が誕生したのだった。ヨダレを垂らしながら本を何冊か買っていって布教するようだ。
「よっしゃー!オタク化成功!!」
「お前最初乗り気じゃなかったじゃねぇか。」
「細かいことは気にしない!」
[本を売るのはここまでにして次の日に売るにゃ。にゃーはお腹すいたにゃ。]
「OK!」
こうして私たちは金貨1枚を手に歩いていったのだった。次の日完売してしまうとは夢にも思わず。何故に?
「てめぇが沼に沈めたからだろうが。」
「それはそうか。」
「認めんな。」
「美丈夫の文化が広がったようで何より。」
「広めんな。」
[美丈夫って誰のことにゃ?]
「ナナシ。」
[イメージしやすいにゃ。]
「イメージすんな。」
「ちなみにですがこの売上は私のですよね?」
「没収。てめぇの事だ絶対浪費するだろ。」
「否定出来ない!」
[おみゃーはヒモだにゃ。]
「自覚してます!」




